先に紹介したような未来を実現するためには、デジタルデータの利活用が必須となり、データの収集・蓄積・分析に必要なデータ流通プラットフォームが求められる。NTT Comではこうしたプラットフォームの提供に向けた取り組みを進めており、庄司氏はその詳細について紹介した。

  • データ流通プラットフォームの概要

柔軟なアーキテクチャ

データ流通プラットフォームに求められるものは、必要な機能を適切に配置し迅速に利用できる柔軟なアーキテクチャだ。NTT Comはこれまでに、SDx+Mソリューションを通じて、IT環境をフルレイヤーでマネジメントするソリューションを提供してきた。今後はこれをさらに発展させ、仮想化されたさまざま機能を最適な場所へ自動で配置するというマルチオーケストレータ機能を提供していきたい考えだ。庄司氏は、NTTグループが提唱している複数レイヤーを跨がるICTリソースを提供・管理する技術「コグニティブ・ファンデーション」のもと、インフラや機能の配置先としてプライベートクラウドからハイブリッドクラウド、端末に至るまでフルスタックで対応していく構想を語った。

  • 柔軟なアーキテクチャを実現する仕組み

豊富な機能のラインナップ

NTT Comのプラットフォームの特徴として、豊富な機能のラインナップがあげられる。たとえば、ゲートウェイ端末にセンサデータを収集する機能を配置するだけで新たなデータ収集を開始できる機能を活用することで、工場のIoT化における他拠点への展開が容易となる。またより高度な分析のために、従来のデータに加え、音声や映像データなども収集するようなニーズに対しては、従来はネットワーク帯域や機器構成を見直さなければならなかったが、これも同プラットフォームを利用することでより容易に実現可能となる。庄司氏は「物理的な工事なしに多様なデータ収集が実現できる」と自信を見せる。

また昨今では、さまざまな業界において、売り切り型からサブスクリプション型のビジネスモデルへと以降しつつある。サブスクリプション型の特徴のひとつに、サービスが提供される限りエンドユーザとの関係が継続するということにある。しかし、サブスクリプション型のビジネスモデルを採用するにあたっては、受注管理や顧客管理、問い合わせ、課金決済などさまざまな対応が必要となる。NTT Comが開発を進めるプラットフォームでは、これらサービタイゼーションに求められる機能を適切にかつ容易に組み合わせて使うことができるという。

「必要な機能を必要な時・場所でセキュアに利用できる」(庄司氏)

  • サービタイゼーションの支援

セキュリティ

DXが進むということは、内部によるデータ持ち出しや、各センサへの外部からのアクセス、センサの悪用によるデータ傍受などのリスクも増大するため、これらの防御策についてもしっかりと考えていく必要がある。NTT Comが開発を進めるプラットフォームには、暗号化機能をチップに実装できるeSIMの機能や、IoTゲートウェイなどのエッジセキュリティ、秘密分散技術など、豊富なセキュリティ機能が搭載される予定だ。現在は、実証実験を進めているところだという。

また、セキュリティに関連して、自社が保有するデータの状態を確認したいというニーズも多い。一般的なパブリッククラウドでは、どの国のどのデータセンタにデータが保存されているか正確に把握することはできないが、NTTでは顧客が選んだ場所以外でデータが保管されることはないという。さらに、IoTデバイスやゲートウェイ端末などによる通信も、CMPで一元的に可視化され、リアルタイムで通信経路の状態を把握することができる。これにより、GDPR(EU一般データ保護規則)などへの制度対応も容易となる。

  • データを安心して預けられるセキュリティとマネジメント

このプラットフォームは、来年度の提供開始を目指して開発が進められているところだという。庄司氏は最後に「DXを掛け合わせて新しいDXを作り出し、新しいプラットフォームを実現していくことで、社会課題を解決し、より豊かな未来を実現していきたい」と語り、講演を締めくくった。