日本の働き方改革に先鞭をつけるサイボウズ。2017年は電通における長時間労働が話題となり、改めて日本の企業社会における働き方がクローズアップされたのも記憶に新しいことだろう。これを契機に長時間労働の抑制が蔓延する風潮に、同社は意見広告として新聞1面に異例とも言えるお詫び広告を9月に掲出するなど、働き方改革に対する姿勢にブレはない。そこで、同社が考える働き方改革について総務省や厚生労働省、経済産業省をはじめ働き方改革プロジェクトの外部アドバイザーも務める同社 代表取締役社長の青野慶久氏に話を聞いた。

  • サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久氏

青野慶久(あおの よしひさ)

サイボウズ株式会社 代表取締役社長

1971年生まれ。愛媛県今治市出身。

大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。

社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進め、2016年にクラウド事業の売上が全体の50%を超えるまで成長。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の副会長を務める。

著書に「ちょいデキ!」(文春新書)、「チームのことだけ、考えた。」(ダイヤモンド社)がある。

--2017年の働き方改革を振り返ってみていかがでしょうか。

青野氏:働き方改革は、昨年12月の電通の事件を契機に社員の過剰労働は望ましくないという認識が世の中に知れ渡るようになりました。長時間労働の何が悪い、と考えていた人たちが大きく考えを改めていきました。人手不足を背景に、その後もこの流れは失速せず、浸透しつつあると感じています。

しかし、働き方改革は、残業をする社員を会社から追い出したら終わり、ということではありません。重要なのは「多様化」を進めることです。

長時間労働を削減したからと言って、短時間で働きたい人や家で働きたい人、副業したい人などが救われるわけではなく、働き方のニーズに1つ1つ対処することが真の働き方改革です。現状ではまだそこにたどり着くまでには距離があるのではないかと考えています。

2017年は、残念ながら長時間労働を抑制することが先行してしまいました。今年は、経営者ではなく現場で働く人たちに声を上げてもらいたいと思います。

経営者は、現場で困っている人たちのことを理解していないものです。非効率な業務フロー、無駄な会議、古くて使いにくいシステムなど、真の働き方改革は現場にあります。

働き方の多様化を進めるためには「制度」「ツール」「風土」の3つの変革が必要です。人事制度を整えるだけではなく、仕事を効率化するツールを導入・整備し、そして多様な働き方を認め合う風土を作る必要があります。

それを無視するような経営者であれば、会社を去る姿勢を見せるのも1つの手段です。今は多くの会社が人手不足で困っています。1人だけでは効果は小さいかもしれませんが、複数人がまとまれば、経営者に対する大きなプレッシャーになります。