消費電力(グラフ122~131)
Sandraの所で、Core i7-8700KやCore i5-8400が非常に高い性能を、特にMulti-Threadの環境で発揮するとともに、Single Thread性能もやや持ち上がっていることを紹介してきたが、「どうしてこれが実現できたか」には触れないままだった。この答えは、ここからご紹介する消費電力測定を見ていただくと分かりやすい。
まずは外部GPUを使っての結果をグラフ122~127に紹介する。グラフ122はDhrystone/Whetstoneの結果である。実はSandraのバージョンを上げたら、Core i7-7700Kの消費電力の変化がRyzen ThreadRipperのテストとだいぶ変わってしまったのだが、何度かやり直しても変化がないので、このままにしている。
それはともかくとして、Core i7-7700KとCore i7-8700Kの消費電力を比較すると分かるが、ほぼ100W上乗せされているのだ。Core i5-8400の消費電力がCore i7-7700Kと同等以上、と書いたほうが分かりやすいだろうか? Ryzen 7 1800Xの消費電力も結構なものだが、Core i7-8700Kはこれをはるかにぶっちぎっている。
では常に高いのか? というと、3DMark FireStrikeのDemoだとグラフ123のようになるので、要するにCPU負荷が低いとそれほど変わらない。
TMPGEnc Video Mastering Works(グラフ124)を見ると、こちらではCore i7-7700K比で120Wアップである。DxO OpticsPro 11(グラフ125)も似たようなものだ。
グラフ126が、グラフ122~125の平均値を取ったもの、グラフ127がグラフ125のそれぞれの値から、待機時消費電力(Idle)を引いた差である。ちなみにグラフ125でTMPGEncとDxOははスタート後30秒以降の値の平均としている。
確かにCore i7-8700Kは待機時の消費電力もやや多目だが、それ以上に稼動時の消費電力が異様に大きいことが見て取れる。
表2~表6は、グラフ126のそれぞれの平均値と、ベンチマークの結果から、電力効率を算出したものである。例えばDhrystone。Core i7-7700Kは2.8 GIPS/W、Ryzen 7 1800Xですら2.5 GIPS/Wなのに、Core i7-8700Kは1.9 GIPS/Wまで低下している。
表2 Dhrystone | 性能(GIPS) | 消費電力(W) | 効率(GIPS/W) |
---|---|---|---|
i5-8400 | 201.87 | 75.9 | 2.7 |
i7-7700K | 141.60 | 50.4 | 2.8 |
i7-8700K | 270.50 | 144.9 | 1.9 |
Ryzen 7 1800X | 255.90 | 103.2 | 2.5 |
表3 Whetstone | 性能(GFLOPS) | 実効消費電力差(W) | 効率(GFLOPS/W) |
---|---|---|---|
i5-8400 | 106.38 | 48.4 | 2.2 |
i7-7700K | 104.60 | 44.2 | 2.4 |
i7-8700K | 190.27 | 100.1 | 1.9 |
Ryzen 7 1800X | 196.35 | 103.1 | 1.9 |
表4 3DMark (FireStrike) |
スコア | 実効消費電力差(W) | 効率(スコア/W) |
---|---|---|---|
i5-8400 | 17391.3 | 194.7 | 89.3 |
i7-7700K | 16986.7 | 202.7 | 83.8 |
i7-8700K | 19541.7 | 195.4 | 100.0 |
Ryzen 7 1800X | 15831.3 | 216.3 | 73.2 |
表5 TMPGEnc | 処理速度(fps) | 実効消費電力差(W) | 効率(mfps/W) |
---|---|---|---|
i5-8400 | 3.9 | 82.0 | 47.6 |
i7-7700K | 3.4 | 55.9 | 60.8 |
i7-8700K | 5.5 | 166.2 | 33.1 |
Ryzen 7 1800X | 4.3 | 118.5 | 36.3 |
表6 DxO OpticsPro 11 | 所要時間(秒/枚) | 実効消費電力差(W) | 効率(W・sec/枚) |
---|---|---|---|
i5-8400 | 10.4 | 71.5 | 744.3 |
i7-7700K | 12.6 | 52.1 | 655.9 |
i7-8700K | 6.1 | 147.7 | 906.9 |
Ryzen 7 1800X | 7.8 | 109.2 | 851.8 |
表5のTMPGEnc(fps/Wだと少数以下2位になってしまうので、1000倍してmfps/Wにしている)とか、表6のDxO Optics Pro(1枚あたりの処理に必要な電力積算量。W・sec)も同じで、Core i7-8700Kはほぼ最悪の数値になっている。
もしこれがアーキテクチャの改良でIPCを引き上げたという話ならば当然こうした数値は改善するはずである。ところが実際には悪化している。つまりアーキテクチャは変えずに動作周波数を無理やり引き上げて性能を確保しているというのが冒頭に対する答えとなる。
同様に、今度は内蔵GPUでのDhrystone/Whetstoneの結果(グラフ128)と、3DMark FireStrike Demo(グラフ129)の結果を示す。絶対的な消費電力は若干減ってはいる(特にFireStrikeでは大きく減っている)ものの、基本的な傾向に差は無いことがわかる。
グラフ130がそれぞれの平均値、グラフ131が平均値と待機時の差である。とりあえずGPUに関しては、フル稼働させてもそれほど消費電力は増えていないのは幸いであるが、Dhrystone/Whetstoneでの消費電力の差は明白である。
表7は、内蔵GPUを使ったFireStrikeでの効率を算出したものだ。この程度だとむしろ性能を引き上げた分の効率はよくなっているが、一番性能が低いCore i5-8400の効率が一番良いという、結構皮肉な結果に終わっている。
表4 3DMark (FireStrike) |
スコア | 実効消費電力差(W) | 効率(スコア/W) |
---|---|---|---|
i5-8400 | 1151.0 | 22.3 | 51.6 |
i7-7700K | 1212.7 | 32.9 | 36.9 |
i7-8700K | 1383.0 | 35.9 | 38.5 |