SAPはSAPPHIRE Nowで、機械学習に関してアパレル顧客とともに共同開発したデモを披露した。その内容は、ショップに入った顧客の服装から色を検出し、それに合う色のスカーフを提案したり、顔の表情から感情を分析して満足しているかどうかなどを見たりするものだ。

また、セレブやファッショニスタなどのトレンドセッターがソーシャルメディアで発するデータからロンドンで流行中の色などを分析し、トレンドの色とアイテムについて、需要と供給のバランスを見て再発注を提案するという様子も紹介した。

カメラに映った人の洋服の色と顔の表情を分析する。その服に合う色のスカーフを提案したり、顧客の満足度を見たりする

システムの在庫も音声でチェック。供給が低い商品は再注文するかどうかを提案するといったことも可能

SAPのAI戦略の特徴は何か?

最近、ビジネス向けのソフトウェアベンダーであるOracleも「Adaptive Intelligent Applications」としてAI分野の強化を図っている。両者の違いは何だろうか? Wieczorek氏に聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。

「機械学習における顧客の問題は、サービスへのアクセスではなく統合にある。つまり、自社のアプリケーションにインテリジェンスを加えることができるかどうかが課題だ。ここで、SAP Leonardo Machine Learning Foundationは大きな回答となる。2つ目の違いは、機械学習を利用したイノベーションだ。現在の機械学習は簡単な方法でコンシュームするにとどまっているが、われわれは今後、顧客が自社の機械学習アルゴリズムを持ち込んで拡張できるようにしていく」

SAPは機械学習により機能が有効になるアプリケーションを「インテリジェントアプリケーション」という言葉を用いて表現しているものの、機械学習の取り組みはまだ始まったばかりだ。

「機械学習には、統計的手法を利用して問題を解決する予測メンテナンス、大規模なデータソースで優れた性能で検出ができる深層学習などがあるが、現時点ではどの技術、どのアプローチが最善かを探っている状態」と、Wieczorek氏は同社が機械学習の分野において手探り状態にいることを認める。

データソースやコンテキスト、求められる性能などにより、最適な技術が異なる上、法律上データアクセスが制限される状況もある。そこで、SAP Leonardo Machine Learning Foundationはまず、顧客が機械学習の深い専門知識なしにコンシュームできる汎用的なサービスをそろえたという。

機械学習のハードルの1つが、データだ。知識がある人がルールをプログラムする予測分析とは異なり、機械学習ではデータセットを使ってトレーニングする必要がある、しかし、ファンクションサービスはSAPが事前にトレーニングしているため、顧客によるトレーニングは不要で、汎用的に利用できる。

より専門性を求める場合はトレーニングが必要だが、顧客に代わってSAPがトレーニングするサービスも用意する。データを任せるという信頼関係が必要になるが、「顧客に教育が必要かもしれない。だが、機械学習の導入により、新たなビジネスプロセスを構築してイノベーションができるとわかれば、受け入れてもらえるだろう」とWieczorek氏。

今後の機械学習分野の計画として、SAP Leonardo Machine Learningのアプリケーションをさまざまな分野で提供するほか、ISVやシステムインテグレーターによる業界固有の機械学習サービスの開発も推奨する。「さまざまなユースケースを提供していきたい。ISVやSI向けのワークショップを開いており、強い需要を感じている」と、Wieczorek氏はインタビューを締めくくった。