今回発表したMicrosoftとの提携について教えてほしい。「業界標準データモデルの共同開発」とは、何を、どのように共同開発していくのか。

パラスニス氏:「業界標準データモデルの共同開発」とは、業界のイニシアチブとなる「エクスペリエンス データモデル」を作成することだ。われわれの狙いは、Adobeが持つマーケティングの専門性と、パートナー企業が持つ(CRMなどの)顧客管理/販売の専門性を、双方向で活用することだ。両社の連携により、業界標準となる「カスタマーエクスペリエンス」をどのように構築できるか探求している。

ちなみに今回は、Microsoftの提携強化という形で(Dynamics365との連携を)発表したが、こうした提携は、Microsoftだけではない。

Microsoftとの提携で発表した「Adobe Campaign」と「Dynamics365」の統合について教えてほしい。リリースでは「シームレスに統合」とあるが、どのレベルで統合するのか。

パラスニス氏:AdobeとMicrosoftは、「プラットフォーム」「データとデータモデル」「エクスペリエンス」の3つのレベル(レイヤー)で統合をしている。

「プラットフォーム」レイヤーでの統合とは、「Adobe Experience Cloud」がMicrosoftのパブリッククラウドである「Azure」に対応している。これがインフラストラクチャとしていちばん下のレイヤーだ。「データとデータモデル」とは、双方のアプリ間でデータをシームレスにやり取りできることを指す。先述した「データモデルの共同開発」の開発が、これに当たる。

「エクスペリエンス」は、互いのツールのユーザーエクスペリエンスを統合するものだ。例えば、「Microsoft Power BI」のUI(User Interface)からAdobeのAnalyticsを呼び出し、Power BIの中でツールの違いを意識することなく利用できるようにする。いわば、「体験の統合」と言ってよいだろう。

業界標準データモデルの一覧。すでに42モデルが挙げられている

最後にマーケティングの将来像について考えを聞かせほしい。Senseiはマーケティングのあり方をどのように変革すると考えているか。

パラスニス氏:現在、マーケターは、多くの時間を技術の構築に費やしている。何か施策をするにも、IT部門やエンジニア部門に依頼しなければならない。しかし、Senseiを活用すれば、IT部門やエンジニア部門を介さず、素早くかつ簡単にマーケティング施策を実施できる。いわば、マーケターは技術的な作業に束縛されることなく、「セルフサービス」のようなかたちでキャンペーンを打つことができるようになるのだ。