ファミリ-レストランの市場規模は居酒屋の約10倍

ワタミは居酒屋「和民」を展開する会社である。主力事業の1つであった介護事業を売却し、事業のテコ入れを図っている。業績回復を目指して、既存店舗の見直しと不採算店舗の業態転換を積極的に推進。和民と「坐・和民」の店舗をリニューアルした「ミライザカ」や、「わたみん家」店舗を転換した「三代目鳥メロ」は順調に集客を伸ばしている。中間決算資料によると、ミライザカ効果は転換全店累計売上で前年比133.3%(オープンから9月末までの累計実績比)。転換全店の1カ月あたり平均営業利益増加額は約124万円(7月~9月の平均値)だ。

しかしながら、ミライザカや三代目鳥メロは基本的に居酒屋ベースの業態であり、新しい客層を取り込める可能性は多くない。それに、居酒屋は言わずと知れた薄利多売の構造で、商品アイテム数と価格で競い合っている業態でもある。そこで目を付けたのが、ワタミにとってのブルーオーシャンであるファミリーレストランという業態だ。

日本フードサービス協会の「平成27年外食産業市場規模推計について」によると、2015年の外食産業市場規模は前年比2.2%増加の25兆1816億円。この調査では2015年の動向について、年初に異物混入問題の影響があったものの、その後は比較的堅調に推移し、1人当たり外食支出額、訪日外国人、法人交際費などが増加傾向にあったと分析している。

この推計によると、居酒屋業態・ビアホールなどの市場規模は1兆672億円。それに対し、食堂・レストランの市場規模は9兆6905億円となっている。居酒屋という「枠」の中で他社と競合しても、パイはそれほど大きくはない。ならば、市場規模の大きなレストラン業態に収益増の機会をうかがうことはワタミとしては自然の流れだろう。

狙うはファミリー層への訴求、宿題は「ハンバーグとステーキ」

ファミリー層をいかに取り込むか。その切り口として考え出された戦略が「ハンバーグとステーキ」だった。2016年4月に宿題を出された馬越氏は、同年10月に「にくスタ」として新しい業態の店舗をオープン。ワタミが持つ、ワタミファームなどの資源をどのように活用するか、試行錯誤を繰り返した。

お話を伺ったワタミの馬越氏

商品アイテムの多い居酒屋とは違う店舗オペレーションや調理システムに苦労しながらも、にくスタは徐々に地域に浸透し、売り上げを伸ばしている。ワタミ全体の売上は居酒屋系が大半であるが、にくスタはオペレーションが落ち着き、地域の客層をつかみ始めた。居酒屋業態に比べて宴会がほとんどないにも関わらず、ある程度の売上規模が見えてきているという。