東京・新宿3丁目に居をかまえるバル&ダイニングレストラン「GOHAN」に、多くの記者が集まった。各家庭に調理済みの料理を届ける「ワタミの宅食」に新ブランドが追加されるのに際し、マスコミ向け試食会が開催されたからだ。

ワタミがこうした機会を設けるのは初めてではない。昨年も居酒屋用の新メニューを試食する会をマスコミ向けに開催していたが、その際、担当者は「こうした試みは弊社では初めてです」と語っていた。そのときの感覚からか、一般的な記者会見よりも試食会のほうが効果的と判断したのかもしれない。それとも、試食会だけに“味をしめた”のか……。

高齢者をターゲティングにした意図

さて、ダジャレはさておき、今回試食会で披露されたブランドに着目してみよう。ワタミの宅食では「まごころ御前」や「まごころ万菜」など、4ブランドが展開されていたが、新たに「いきいき珠彩(しゅさい)」が追加された。既存の4ブランドはすべて商品名に“まごころ”という語句が冠されていた。だが、新ブランドではワタミの宅食では初の“いきいき”という語句が使われている。そのあたりに新ブランド投入の意図があるのかもしれない。

結果からいうと、まさにそのとおりだった。

ワタミ 執行役員 宅食営業本部長 大根田淳氏

ワタミ 執行役員 宅食営業本部長 大根田淳氏は、「これまでのラインナップは、おいしさと栄養のバランスを重視していました。ターゲットも75~89歳というご高齢な方です」と話す。料理の準備や食器洗いといった後片付けなど、面倒な作業を避けたいと感じている方が多くいるであろう高齢者層なら、宅食サービスを受け容れやすいというねらいがあったといえよう。

こうした高齢者層に向けたメニューとなると、栄養バランスに細心の注意が必要になり、カロリーも抑え気味に考えなくてはならない。「まごころ御前」などはごはんがお皿に盛りつけてあるにも関わらず、1食500kcalが基準になっている。こうした戦略が功を奏し、ワタミの宅食の顧客は、ほとんどが高齢者層で占められている。ある意味、ねらいどおりといえよう。