介護事業から撤退し、「外食事業」に注力する姿勢を鮮明にしたワタミ。業績回復の兆しも見えるなか、新業態として仕掛けるのがテキサス風メキシコ料理店「TEXMEX FACTORY」だ。社員のアイデアを形にした同店は、“食”への原点回帰を図るワタミの今後を占う試金石となるかもしれない。

渋谷にオープンしたTEXMEX FACTORYは、ピンク色の看板と「メキシカンスカル」が目印だ。席数は155席、平均客単価は2,500円を想定

社員のアイデアが新業態として具体化

「TEXMEX(テクスメクス)料理」とは、米国人が食べやすいようにアレンジを加えたメキシコ料理のこと。米国ではポピュラーで、日本でメキシカンフードと呼ばれているものは多くがテクスメクス料理にルーツを持つのだという。例えばタコスはメキシコ料理とテクスメクス料理の双方に共通する食べ物だが、ブリトーやファヒータなどは本場メキシコ料理というよりもテクスメクス料理に分類すべきメニューなのだそうだ。

米国で様々なレストランを食べ歩いた結果、日本でもテクスメクス料理店を開きたいと考えるようになったのが、ワタミでDINNING事業部長を務める久保田琢磨氏だ。同氏はワタミ社内の新業態募集に応募し、このほどTEXMEX FACTORYの開店にこぎ着けた。

ワタミグループのノウハウを新規出店に活用

TEXMEX FACTORYは、ワタミが日本展開のパートナーを務める米国発のカジュアルレストラン&バー「TGIフライデーズ」に隣接する好立地だ。久保田氏は「TGIフライデーズがアンテナに引っかかる方は、TEXMEX FACTORYも引っかかると思う」と立地による集客効果に期待を示していた。

TEXMEX FACTORYではTGIフライデーズのノウハウを有効に活用する。店舗のシステムやオペレーションについては、TGIフライデーズで培った手法を移植することでスムーズな店舗の立ち上げ・運営を図る。両方の店舗で共通する食材については仕入れ面で協力する。

テクスメクス料理は日本で流行る?

久保田氏

メキシカンブームは「徐々にきている」(久保田氏)らしいが、テクスメクス料理は日本で受けるのだろうか。メキシコ料理店としては昨年、豪州から「グズマン イー ゴメズ」が日本に初上陸し、この秋には3店舗目をオープンさせる予定。ほんの一例に過ぎないが、価格もメニューも多種多様な日本の外食業界において、メキシコ料理店が店舗網を拡大する余地は少なくとも存在したようだ。TGIフライデーズで季節商品として提供していたテクスメクス料理が好評だったことも、今回の新業態が具体化した理由としては大きいだろう。

TEXMEX FACTORYの今後は1号店の出来次第だが、久保田氏は年間1~2店の新規出店を続け、やがてはTGIフライデーズと同じくらいの規模(10数店舗)を目指したいと話していた。

今回の動きで注目したいのは、ワタミがボトムアップで新業態のアイデアを募り、“居酒屋のワタミ”のイメージとはかけ離れた店舗の開発にゴーサインを出した点だ。この取り組みには、外食市場での復権を目指すワタミの本気度が見てとれる。