ファーウェイは、中国・東莞市にあるスポーツ・ヘルスケア分野の研究開発拠点「HUAWEI Health Lab」(以下、ヘルスラボ)を日本の報道関係者に公開しました。

同ラボはスマートウォッチなどのウェアラブル製品に搭載する運動・健康関連機能を研究する施設。中国深センの隣、東莞市・松山湖のほとりに位置する同社最大のヘルスラボで、4,680平方メートルもの広大な敷地にさまざまな運動を研究する設備が整っています(近くに大型の社員寮もありますが、深センから通う研究者も多いとのこと)。

2023年にも日本の報道関係者に公開されていますが、スキーの滑走を再現するシミュレーターが新たに加わったそうです。

  • スポーツ・ヘルスケア分野の研究開発拠点「HUAWEI Health Lab」。招待制のメディア向け深センツアーが開催され、マイナビニュースも参加した

    スポーツ・ヘルスケア分野の研究開発拠点「HUAWEI Health Lab」。招待制のメディア向け深センツアーが開催され、マイナビニュースも参加した

[取材協力:ファーウェイ・ジャパン]

4,680平方メートルの大規模なスポーツ研究拠点

ファーウェイのヘルスラボは東莞のほか、中国・西安とフィンランド・ヘルシンキにもあります。その面積は東莞が4,680平方メートル、西安が1,100平方メートル、ヘルシンキが1,000平方メートルで、最も広い東莞のヘルスラボが製品開発時に技術研究・新機能の検証を行う役割を担います。西安は機能の幅広いテストと検証、そしてヘルシンキは先端技術の探索に加え、ウィンタースポーツや障害者スポーツの研究にも取り組んでいるとのこと。

  • ヘルスラボの内部(1F)。巨大な体育館を思わせる館内の各エリアに、ゴルフやスキー、プール、ランニングマシン/ランニングコースなどの計測エリアが配置されている

    ヘルスラボの内部(1F)。巨大な体育館を思わせる館内の各エリアに、ゴルフやスキー、プール、ランニングマシン/ランニングコースなどの計測エリアが配置されている

東莞のヘルスラボはスマートウォッチなどの健康管理ウェアラブル製品開発に関する技術研究が中心ですが、中国政府の体育総局体育科学研究所と合同で設立された成り立ちから、同総局との共同プロジェクトも行われています。

研究開発においては「5・3・1」と呼ぶ枠組みを採用。これは5年間の先端技術探索、3年間の調査・研究、1年間の製品実装という3段階で構成されるもので、探索は主にヘルシンキが担い、調査・研究が東莞、製品実装の段階では西安が受け入れ検査とテストを受け持つそう。

運動や健康に関する新機能の開発、実装に際しては、まずプロジェクトを立ち上げ、必要なデータを採取(病院などとも協力)。その後アルゴリズム開発などの研究が行われ、社内外でテストしたのち、最終確認・実装という流れを経るといいます。

なお機能開発や実証に必要なデータ量は、競技ごとに専門の設計担当者が基準を定めており、例えば利用者の多いランニングでは数万件規模に上るそうです。

スキーシミュレーターを新設、新機能の初期検証に

ヘルスラボの設備概要は過去記事をぜひ参照いただきたいのですが、今回新たにスキーシミュレーターが新設されました。

これは傾斜をつけた4m×4m範囲のベルトの上で滑走を再現するもので、ターン時のGフォース(ターン時にかかる荷重・負荷)などを計測でき、中国で人気が高まっているスキー滑走のデータ計測精度を高める目的で設置したといいます。速度は時速1km刻みで最大時速30kmまで、傾斜は1度刻みで最大18度まで調整でき、スキーとスノーボードの両方に対応。

ここも含めた館内設備は「あくまで初期段階の研究における検証用であり、データ収集自体を目的としたものではない」といい、本格的な機能検証のための大規模データは、例えばスキーであれば深センの屋内スキー場など実環境でプレーできる施設で収集されます。

  • スキーシミュレーター。傾斜角度は調節できる

    スキーシミュレーター。傾斜角度は調節できる

  • 【GIF】実際にスキーを滑っているところ。データ検証では研究者自身が滑るのではなく、多くは協力者を募って行うという

    【GIF】実際にスキーを滑っているところ。データ検証では研究者自身が滑るのではなく、多くは協力者を募って行うという

また、ファーウェイが注力するスポーツの1つ、ゴルフの研究・テストゾーンではセンサー数を増やし、従来より詳細な運動データを取得できるようになりました。高速カメラやプロジェクター、スイングカメラなどを備え、スイングの速度やテンポ、動作の軌跡、ウェアラブル機器のセンサーデータなどを分析。スイング解析アルゴリズムの検証や精度向上に役立てます。

  • ゴルフ研究・テストゾーン。シミュレーターとなっており、両足にかかる荷重やスイング速度や軌跡、体の動きなどを解析する

    ゴルフ研究・テストゾーン。シミュレーターとなっており、両足にかかる荷重やスイング速度や軌跡、体の動きなどを解析する

このほか館内には海抜、気圧、温度、湿度といった環境シミュレーションができる「高原模擬室」、泳法の識別・水中での心拍数といった水泳データを検証する水泳研究エリア、ランニング・サイクリングなどの運動を研究する多機能運動研究プラットフォーム、ランニングマシンやトラックを使った走行計測・研究エリア、バスケットボールコート、クライミングウォール、卓球台、射撃競技のエリア……など、多彩な運動を研究できる設備が整っています。

これらは全て1階にあるものですが、施設の2階/3階は取得したデータを処理する研究エリアとなり、同社スマートウォッチの目玉機能である睡眠に関する研究もそこで行われているそうです。

  • 「高原模擬室」では-10度から40度まで、海抜6,000mまでの環境を再現した試験が可能

    「高原模擬室」では-10度から40度まで、海抜6,000mまでの環境を再現した試験が可能

  • 小型プールのような水泳研究エリア。水泳フォームなども確認できる

    小型プールのような水泳研究エリア。水泳フォームなども確認できる

  • ずらりと並んだランニングマシン。中国でもランニングは人気のスポーツで、ここでは運動中の呼吸・代謝・心拍、消費エネルギーなどを測定できるという

    ずらりと並んだランニングマシン。中国でもランニングは人気のスポーツで、ここでは運動中の呼吸・代謝・心拍、消費エネルギーなどを測定できるという

  • 運動エリア(館内中央エリア))の周囲には28台の動作捕捉カメラを設置

    運動エリア(館内中央エリア))の周囲には28台の動作捕捉カメラを設置

  • 身体の特定部位に付けたマーカーと赤外線を組み合わせ、身体の動きや姿勢を三次元データとして記録できるようになっている

    身体の特定部位に付けたマーカーと赤外線を組み合わせ、身体の動きや姿勢を三次元データとして記録できるようになっている

  • 卓球の動作分析・トレーニング研究エリア。自動球出しロボットがボールを発射したり、スマートウォッチで練習中の負荷を測ったりできる

    卓球の動作分析・トレーニング研究エリア。自動球出しロボットがボールを発射したり、スマートウォッチで練習中の負荷を測ったりできる

計測データをアルゴリズムに還元、アスリート支援で精度向上へ

こうした設備で専用の計測装置を使って得た実測値は、ウェアラブル製品を着けて得た計測値と照合し、アルゴリズムの検証と改良に使われます。ヘルスラボの担当者は、例えばランニングなどの基本的な有酸素運動では、同社ウェアラブル製品を着けて計測した心拍数の精度が約98%に達していると説明しました。

ラボでは、中国のスポーツ競技選手を支援する研究も手がけており、選手のパフォーマンス向上に加え、支援を通じて得たデータをスマートウォッチなどの機能の精度向上や新機能の追加につなげる取り組みも実施しているとしました。

  • オリンピックの射撃競技で使われたという中国選手のユニフォームも展示されていた。国家体育総局との共同研究により、硬質・高弾性の素材を用い人間工学に基づいて作られた射撃服を採用している

    オリンピックの射撃競技で使われたという中国選手のユニフォームも展示されていた。国家体育総局との共同研究により、硬質・高弾性の素材を用い人間工学に基づいて作られた射撃服を採用している