One more thingは定額音楽サービス

最後に「One more thing」と発表されたのが、定額制の音楽サービス「Apple Music」だ。Apple Musicは、アルゴリズムによる機械式の選択だけでなく、Appleのエキスパートが選択したプレイリストを紹介するレコメンド機能「For You」や、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンから24時間放送されるオンラインラジオ局「beats 1」の統合、アーティストが情報を発信し、ファンと交流するための「Connect」などが新機能となる。

Apple Musicは今月中に100カ国以上でサービスを開始する。価格は月額9.99ドルだが、最初の3カ月は無料となる。iPhone、iPad、iPod touchはiOS 8.4以上、MacとWindowsはiTunesの新バージョンで対応するほか、Androidにも対応する。なお、ファミリー向けに6人まで月額14.99ドルのプランも用意される。日本での対応はまだ発表されていないが、最近はLINE MUSIC(提供開始日は未定)やAWAなど、聴き放題系のストリーミングサービスも増えている。こうした情勢を考えると、Apple Musicも予定通り展開できる可能性が高いのではないだろうか。

Appleとしては初めてAndroid向けアプリが提供される(今秋を予定)。今秋にはApple TVでの利用も可能になるという

アーティストとユーザーの交流というと、かつてAppleがiTunes内に統合していた独自SNS「Ping」が思い出されるが、これといった盛り上がりもなく2012年に静かに終了していた。TwitterやFacebookのように完成された場がすでにあることもあり、果たしてConnectがどれだけ機能するのか疑問と不安も残る。

予想通りではあったが内容は充実

基調講演全体としては、開催前の予想記事とおおむね合致してはいたが、かなり意欲的な内容だと感じられた。ハードウェアの発表がなかったため、新製品を期待していた層には期待はずれに映ったかもしれないが、WWDCはもともと開発者向けのカンファレンスであり、新製品発表は夏休み明け頃を楽しみに待っているといいのかもしれない。

新サービスのApple Musicに関しては、音楽業界そのものの再構築を目指す野心的なプロジェクトであるものの、筆者にはその魅力がいまいち伝わらなかった。Appleとしては初めてAndroid用アプリを作るほど入れ込んでいるのはわかるだけに、その動向をじっくり見守ってみたい。