米Appleは6月8日(現地時間)、米サンフランシスコで開催している同社の開発者カンファレンスWWDC 2015で、iOSの次期メジャーアップデート「iOS 9」を発表した。バッテリー動作の効率性、セキュリティといったiOSの基盤をさらに強固にし、プロアクティブなデジタルアシスタント、iPadでの2アプリ分割表示、新アプリ「News」など様々な新機能を加えた。

iOSデバイスを裏返しにして机の上に置いた場合、iOS 9は環境光センサーからの情報でユーザーが使用していないと判断して通知の際にもスクリーンオフを継続する。こうした電力消費の最適化によって通常の使用でおよそ1時間のバッテリー動作が延長する。さらに新たに用意されたLow Powerモードを使用すると、最大3時間の延長が可能になる。iOS 8ではOTAでのソフトウエアアップデートでトラブルが起こったが、iOS 9ではソフトウエアアップデートで必要なストレージ容量が少なくなる。また、より計画的にアップデートを実行できる。セキュリティ面ではパスコードの強化(6桁)や、2段階認証の改善が行われている。

「去年の8月にユタで撮った写真を見せて」とSiriに頼むだけで、該当する写真が写真アプリで表示される

iOSのデジタルアシスタント機能Siriが、場所や時間、ユーザーの行動などを踏まえ、先を見越したアシスタントを提供する。たとえば、アプリの利用パターンからスポーツジムに入った時にワークアウト用のアプリをすぐに使用できるようにしたり、道路の混雑も考慮して次の予定に間に合うように出発すべき時間に通知を表示する。また、荷物の受け取りを知らせるメールを開きながら「車に乗ったら、これをリマインドして」と頼むと、Siriは「これ」を「メールメッセージ」だと理解し、帰りにメッセージに関する通知を表示する。自然な話し言葉で頼むだけで、Siriはコンテキストを理解してアシストしてくれる。またSiriが収集する情報が拡大し、スポーツの結果や天気予報など従来の検索ではより充実した結果が表示される。

2アプリ表示によって、iPadでよりPCに近いマルチタスクを行えるようになる。2アプリ表示には3種類ある。1つはOS Xの通知センターのように、使用しているアプリの上に細長いウインドウで2つめのアプリがスライドして出てくる「Slide Over」(対応機種:iPad Air、Air 2、iPad mini 2、mini 3)。テキストメッセージに返事をしたり、メモ・アプリにメモを書き残すような簡単な情報確認や作業に適している。もう1つは2つのアプリが画面を分け合う分割表示「Split View」(対応機種:iPad Air 2)だ。Safariで調べ物をしながら、Pagesで文書を作成するなど、2つのアプリをどちらもじっくりと使う場合に適している。もう1つは「Picture in Picture」(対応機種:iPad Air、Air 2、iPad mini 2、mini 3)。ビデオ再生画面だけをフロートさせながら、別のアプリを使用できる。

使用しているアプリの上に2つめのアプリがスライドして現れる「Slide Over」

1つの画面を2つのアプリで分割利用する「Split View」

ビデオ再生やFacetimeのビデオ通話などを表示しておける「Picture in Picture」

iPad向けには「QuickType」という新しいキーボードも用意された。入力候補を表示するバーに、カットや貼り付けなどショートカットが表示される。また、2本指でキーボードに触れて指を動かすことで、トラックパッドを使うようにカーソルをコントロールできる。

「QuickType」、ショートカットバーで、ショートカット機能のすばやい処理が可能に

「News」はニュースサイトやブログからユーザーの関心に応じた記事を収集し、読みやすいフォーマット(Apple News Format)にして表示する。オーディオ、ビデオ、インタラクティブアニメーション、写真ギャラリーなど、豊かなマルチメディア機能をサポートする。

ユーザーが関心を持っている分野、トピックスの記事をまとめる「News」アプリ

既存の標準アプリにも様々な強化が加えられる。メモ・アプリでは、フォントの変更、チェックリストの作成、手書きメモ、写真・動画の追加が可能になる。マップアプリは、バスや地下鉄、フェリーなど交通機関の情報をサポートし、徒歩を含めたルート検索に対応する(リリース時に300都市以上で使用可能、日本の対応は不明)。

メモ・アプリの手書きメモ機能

バスや電車、地下鉄、フェリーなど交通機関と徒歩を組み合わせたルートを表示するTransit View

昨年米国で始まったモバイルペイメントサービス「Apple Pay」の英国での提供が始まる。支払い機能であるApple Payに対して、各種カードを管理するPassbookは「Wallet」という名称に変更される。

スモールビジネスユーザーを多数抱えるSquareがApple Payによる支払いに対応

iOS 9は8日にiOS Developer Program参加者向けにベータ版とSDKの提供が始まった。7月には一般ユーザーも参加できるパブリックベータプログラムが行われ、今年秋に正式版が登場する予定。対応機種は、iPhone 4s、iPhone 5、iPhone 5c、iPhone 5s、iPhone 6、iPhone 6 Plus、iPad 2、iPad (第3世代)、iPad (第4世代)、iPad Air、iPad Air 2、iPad mini、iPad mini 2、iPad mini 3、iPod touch (第5世代)。Appleは、Androidからの乗り換えをサポートする「Move to iOS」アプリを用意する。