音に関しては、「果たしてユーザーはテレビの音、音質に満足しているのか」と今村氏。テレビの薄型化、狭額縁化がトレンドの中、本体前面にスピーカーを配置できなくなり、「例えばアナウンサーの声ですらなかなか聞き取れない」(今村氏)といった事態になっているという。この点について、今村氏は「美しいデザインで臨場感のある音を楽しみたい」という潜在需要があると語り、これに応えるために新たに開発したのが「磁性流体スピーカー」とのことだ。従来スピーカーに配置されていたダンパーを廃することで、高音質化、薄型化を実現。これをディスプレイ前面に一体感のあるデザインで配置した。

磁性流体を採用したことで高音質化、薄型化を実現。テレビ前面に埋め込めるようになった。磁性流体スピーカーを採用したのは「X9200A」シリーズのみだ

額縁(ベゼル)に埋め込み、パネルとの一体感を出したデザイン

スマートテレビへの取り組みとしては、スマートフォンやタブレットと同じ操作感が実現できていないとして、「それぞれのデバイスが持つ機能に着目すべき」と今村氏は指摘。iOS、Android向けアプリの「TV SideView」を使うことで、スマートフォンなどで検索し、その結果をテレビに表示するといった操作を実現する。

連携機能では、スマートフォン・タブレットのアプリで検索、それをテレビで表示する「TV SideView」を提供。iOS、Androidに対応する。テレビは今回の新製品が全て対応する

テレビとスマートフォン・タブレットの連携としては、さらに「ワンタッチミラーリング」機能を搭載。付属のワンタッチリモコンにNFCを搭載したことで、NFCを内蔵したXperia Z/Tablet ZやXperia AXなど、一部のXperia製品でタッチすると、Wi-Fi Directやミラーリングの設定を自動的に行い、Xperiaの画面をテレビにワイヤレスでミラーリング表示できるようにした。なお、ミラーリングによる画面表示は0.5秒程度の遅延が発生するため、リアルタイム性の高いゲームなどでの利用は難しいようだ。

ワンタッチミラーリングに利用するワンタッチリモコン。背面にNFCを搭載している

Xperia Zの画面をミラーリング表示したところ

電子書籍などの各種コンテンツ表示も可能。なお、ハードウェア的なカスタマイズが必要なため、現時点では最近のNFC・ミラーリング・Wi-Fi Direct対応のXperiaしか利用できないそうだ

Sony Entertainment Networkに対応し、ネットの動画や音楽、写真などのインターネット上のコンテンツの利用も可能。2.4GHz帯の無線LANを内蔵しているため、ケーブルレスでインターネット接続が可能だ。5GHz帯には対応しないが、一般的な家庭であれば混線もそれほど問題にはならない、という認識だ。

こうしたテレビとしての基本性能を向上させ、ハイエンド機として作り上げたのがX9200Aシリーズだ。今村氏は、まずハイエンド機をしっかりと作り上げることで、新興国向けのローエンドテレビにもそれを生かしていく方針を示す。この辺りは、ソニーモバイルの鈴木国正社長も、「まずはハイエンド」という考え方を示しており、ソニーの共通した方向性と言えるだろう。

4Kのテレビだけでなく、4Kコンテンツの拡大にも取り組む。すでに業務用とでは4Kカメラによる撮影が行われており、グループ内のソニーピクチャーズが映画で4Kカメラを活用。TBSの「世界遺産」も、撮影自体は4Kということで、今後の4K視聴環境が拡大すれば、より美しい映像を楽しめる。

4Kを楽しめる環境として映画、放送、音楽、写真があり、映画や放送のコンテンツ拡大にも力を入れる

国内外で、4Kテレビ放送の声も聞こえ始めているが、「そう遠くない時期に4Kがお茶の間に配信される日が来る」と今村氏は語り、それに向けて4K環境の構築に力を入れていく考えだ。

ほかにも、4Kで撮影された映像をBDに収めるためにフルHDにダウンコンバートし、それをさらに4Kにアップコンバートする際に、より原画に近い変換が出来るように、ソニーピクチャーズとも検証。そうして検証されたコンテンツは「Mastered in 4K」としてリリースしていくという。

4Kテレビは、カメラ業界からも注目を集めており、photokinaやCP+といった写真関連イベントでも4Kテレビが出展されるようになっている。フルHDテレビは、解像度が207万画素、4K対応テレビは829万画素になり、特に最近の1,000万画素オーバーのデジタルカメラは、4K対応テレビの方がより細部まで表示できる。4Kテレビは「静止画を新しい感動を持って楽しめる」(同)としてアピールしていく考えだ。

平井和正ソニーCEOによる「One Sony」の号令の下、同社では事業部門間の連携が強化されている。今回のテレビの新製品でも、音、映像の部分で他事業部と連携しているそうで、例えばトリルミナスディスプレイでのカメラとの画像のマッチングなどで、共同で開発を行ったそうだ。今村氏は「One Sonyでやっていきたい」と語り、事業部連携も強化しつつ、4K環境の構築を図っていく。

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