SpringSource Tool Suite(以下STS)はEclipseベースの無償のIDE(統合開発環境)だ。EclipseもIDEだが、STSはSpringSourceがターゲットとしてきた、エンタープライズJava開発に特化した統合開発環境である。そしてSTSは「ダウンロードするだけで、エンタープライズJava開発に必要な全ての機能を、最適な生産性で提供する」というコンセプトの元、開発されてきた。

Spring Tool Suiteの画面

さらに最近では、STSをクラウドを使ったWebアプリケーションの開発の入り口とするべく、機能拡張が進んできる。と言うのも、SpringSourceの母体であるVMWareは、4月にSalesforce.comとの提携を発表し、さらに5月に入り、Googleとの提携を発表した。どちらもクラウドを担ぎ上げている有力なクラウドベンダである。

これはVMWareの「Open PaaS」戦略に基づいたものだ。「Open PaaS」戦略をSpringの立場から解釈すると、「SpringFrameworkを使ってWebアプリケーションを開発すれば、様々なクラウド環境で動作できるようにアプリケーションのポータビリティを高められる。そしてそれはもちろんオンプレミスにも移行できる。」というものである。STSは、クラウド環境をまたぐ移行環境として考えられているのだ。

さてSTSが提供する機能は、「ダウンロードするだけで、エンタープライズJava開発に必要な全ての機能を、最適な生産性で提供する」ので非常に多彩である。それでは見てみよう。

STSの中核をなすSpring IDE

STSには Springframeworkを使ったアプリケーションの開発環境として、以前から開発されたSpring IDEが導入されている。Spring IDEにはBeanの入力補完やリファクタリング、バリデーションができる設定ファイル用エディタだけでなく、バリデーションで発生したエラーのクイックフィックスも用意されている。

Javaのエディタと同様に編集できるSpring Config Editor

またSpring Explorerというビューが用意されており、設定ファイルやアノテーションで設定されているBeanが一覧で参照できる。その他にも、Springframework内の各サブプロジェクト、Spring AOPやSpring Batch、Spring Web Flowに対応しており、それらのライブラリのためのウィザードやエディタが用意されている。

Spring ExplorerはSpringで設定しているBeanをツリー状に表示する