世界一の産業ロボットメーカーを支える特許の質をいかに確保するか

世界一の生産台数を誇る産業用ロボットをはじめ、サーボモータ、インバータ、コントローラといった分野でも世界最大手のメーカーである安川電機。今年、創立100週年を迎える同社は、近年ではバイオメディカルの分野にも注力している。

バイオメディカル分野における研究・開発の現場では、実験を行うための繰り返し作業に多くの研究者が長時間拘束されたり、手作業が介在することによる実験結果の信頼性確保の問題が存在している。また、医薬品の調製現場では、人に対して強い毒性を持つ薬剤への接触の危険や、人為的ミスが課題となっている。

こうした課題を解決するため、同社では、ロボットを活用して人間を超える再現性・精度を持つ分析前処理・調製支援装置を開発し、日本発のバイオ革命に貢献するとともに、ロボット新市場の創出に取り組んでいる。

最先端の技術を駆使する同社にとって、非常にデリケートな管理を求められるのが「特許」だ。

同社の製品は、工場をはじめ顧客企業のビジネスを支えるコアな部分で使われることが多いだけに、その品質はシビアに問われる。もしも納入された製品が不具合を起こし一日でも工場が止まってしまったら、顧客企業に大損害を与えかねないと言っていい。だからこそ、同社は、品質第一の考えで高品質な製品を安定的に提供することに心血を注ぐ。

同社は、特許ですら製品の品質と捉える。他社の特許を侵害せず、模倣による粗悪品が出回ることを防ぐことが、高品質な製品を安定的に顧客に提供する重要な要素と考えるからだ。つまり、同社は、特許出願だけでなく他社特許調査なども含む意味で“特許の質”を更に向上させることが高品質な製品を支える一つの要素と捉えているのである。

安川電機 技術開発本部 知的財産部 第1課 課長代理 弁理士 村岡次郎氏

しかしながら、安川電機では毎年数百件もの特許を出願しているのに加え、昨今では海外での出願率も急上昇中だ。そのため特許に関わる出願案件および調査案件の管理は複雑を極めるようになり、担当部署にとって大きな負荷となっていた。

同社 技術開発本部 知的財産部 第1課 課長代理で弁理士の村岡次郎氏はこう振り返る。「メールやExcel、それに既存の特許管理システムと、特許申請に関する情報が分散しており、作業効率にかなりの悪影響を及ぼしていました」

そこで同社では、

1 海外出願が増え管理負荷が高まるなか、特許一件当たりの質を高めること
2 特許の質を確保するために、上司による承認だけでなく、社内の専門家複数人による確認のプロセスをしっかりとまわすこと

という2点を目指して業務改善を図ることとなった。まずは、特許の期限管理や特許事務所とのやり取りに使われている既存特許管理システムの改良を検討したが、ベンダーから提示されたコストは数千万円と許容額を大きく上回るものだった。またシステムの都合上、出願案件と調査案件(他社の特許を侵害していないかの確認)が別管理となっていたことも、業務効率を改善する上で問題であった。

「本来、出願案件と調査案件というのは車の両輪のような存在で、一体となった管理が望ましいのです」(村岡氏)

FileMakerならではの柔軟性を生かし、パートナーと理想のシステム構築

効率的に特許を管理できる新たなシステムを模索する村岡氏だったが、特許事務所を対象にした製品は存在するものの、同社の要求に応えることができる製品は見つからなかった。そうしたなか、安川電機のシステム開発を手助けしているパートナーに話を持ちかけたところ、知財管理部門の日常業務を支援し、情報共有を促進するためのソリューション「PatentWorks(パテントワークス)」の存在を知る。

PatentWorksは、カスタム Appを作成・展開・運用できる「FileMaker(ファイルメーカー)プラットフォーム」をベースに構築されているため、新機能の開発も柔軟に行えるカスタマイズ性を備えている。さらに、開発コストも既存特許管理システムの改良と比較すると10分の1以下で済むなど、安川電機にとっては一石二鳥ともいえるソリューションであった。そのため同社では、知財部門20数名のスタッフと協議を重ねながら、新たに必要となる機能などを検討していった。

なかでも新機能として大きなものが、

1 出願同士間、調査同士間、出願と調査との間などの案件間の関係性を可視化する仕組み
2 柔軟性の高いワークフロー
3 一件ごとの特許情報の評価の仕組み

の3点であった。こうした業務面での要望と実装する機能との調整も、FileMakerの高い柔軟性と豊富な機能によってスムーズに進められていった。

既存システムとの連携イメージ

戦略的な特許の取得・活用を目指して

2015年4月、安川電機における特許管理業務の中核となるシステムとして、PatentWorksが本格稼働を開始した。PatentWorksは、社内のメールサーバや既存特許管理システムなどと連携しながら、特許出願に関するワークフローやコミュニケーションを含めて支援するシステムとなっている。例えばワークフローを進めるなかで、チャットベースで履歴を残しながら議論を進めることができ、タスクとして上司などに展開することも可能だ。そのため、従来のようにメールや紙ベースの議論で生じていた過去の発言をいちいち探すといった無駄が解消した。また、1つの出願単位でチャットやタスクを含めた関連情報を紐付けた状態でワークフローを進められる点も、目覚ましい効率化につながった。

チャットとタスクを関連付けて閲覧可能

「ダッシュボード上でチャットやタスクをすべて串刺しで見られるのですが、そこで案件ごとに開くと今度は案件の詳細情報とともに案件に紐付いたチャット履歴やタスクなどが見られるようになっています。チャット履歴はその案件の作業履歴に直結していますので、それぞれの案件に関する情報がどういう流れをたどってきたのかが、ワークフローも含めて一目瞭然となったのはとても大きいです」と村岡氏は言う。

また、特許単体だけでなく、タグのように「群」を指定することで、関係性の深い特許をまとめて見ることができるのも、同社にとって魅力的な要素となっている。

「群」の管理により従来と比べ特許の関連性が明確に

村岡氏は言う。「PatentWorksの特に優れている点が、いろいろな意図で括られた群として特許を管理できるベースを有することです。これにより、ミクロ的な視点とマクロ的な視点をシームレスにつないで個々の案件を取り扱うことで、将来的には戦略的な特許の取得や活用をより一層可能にできると期待しています」

既に現在も、より高度な特許群管理に向けた機能の追加を少しずつ進めているという。将来は、特許のポートフォリオを管理できるようにするのが目標だという。

「例えば、あるキーワードでどんな出願がなされているのかを見ながら、この特許群はこういう思想でつくられたんだと、他の出願との関連性をより詳細かつ容易に確認しながら、一件一件の評価を行うことで、現在の特許に足りないところや必要なところが視覚的に見えてくるようにしたいですね。それが、固定された観念に縛られない柔軟な戦略による特許の取得・活用を実現し、当社の競争力の強化につながると信じています」(村岡氏)

安川電機にとってPatentWorksは、特許管理の一元化とワークフローの改善を実現し、戦略的な成長をもたらすために無くてはならないものとなっている。その根幹をになうFileMakerプラットフォームは、世界一の産業ロボットメーカーを特許管理という観点から今後も支えていく。

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