ドローンのポテンシャル - メーカーやキャリア、ユーザー企業はこう見る

「ドローンを活用しよう」という話題が聞かれる昨今、波に乗り遅れまいと、さまざまな企業が活用を目指して実証実験を行っています。しかし、「波に乗る」ことが目的になっていないでしょうか?

法規制や現在のドローンのスペック、将来的な可能性、自社事業へのインパクトなど、本当にその事業にドローンが必要なのか、精査できているのでしょうか?

実際にドローンをサービス内で活用しているセコムとコマツ、LTEを活用したセルラードローンの実現を目指す携帯キャリア3社、実際にドローンを提供するDJIとACSL、業界団体のJUIDA、担当官庁の一つである国土交通省に、石川 温氏と中山 智氏が話を伺いました。

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スマートドローンのプラットフォーム化に積極的なのがKDDIだ。パートナーを取り込んできたことで、本格展開に向けての「パーツ」がついに揃ったという。KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部 商品戦略1グループ リーダーの博野 雅文氏と、同グループ 課長補佐の松木 友明氏に、KDDIのドローン戦略について話を聞いた。

KDDI 商品・CS統括本部 商品企画部 商品戦略1グループ リーダー 博野 雅文氏(右)と、同グループ 課長補佐 松木 友明氏(左)

KDDIがドローンに参入したきっかけは、LTEに対応したドローンの実用化試験局の制度が2016年7月にできたことが大きい。博野氏は「KDDIは全国隅々までLTEネットワークがある。この強みを生かした展開ができるのが、ドローンに取り組む一つのきっかけだ」と語る。

松木氏も「ドローンはIoTの一つ。人と遠く離れたところで活躍できるマシン、ということは通信と相性が良いのは間違いない。将来的にはLTEが入って自律で飛んでいく。そういったドローンが主流になると信じている」という(関連記事 : ハウステンボス 富田CTOが「ドローンで配達サービスはあり得ない」と考える理由)。

KDDIがドローンビジネスを手がける上でまず始めたのが、同社で持っていないアセットを集めることだった。「ドローンを事業として展開していく上で何が必要かを洗い出した。機体、運行管理、地図、クラウドが必要なわけだが、それらをひとつひとつ揃えていった」(博野氏)。

プロドローン、ゼンリンと組むことで、完成度の高いドローンソリューションでまずは下地を作る

機体に関しては、世界的に設計技術が評価されているプロドローンに出資した。ドローンでソリューションを提供しようと思えば機体のカスタマイズが必要となる。その要求に答えられるのがプロドローンだったのだ。さらに、ドローンを飛ばす上で地図も欠かせない。そこで、すでにドローン向けの地図を手がけていたゼンリンをパートナーに迎えた。

また、今後はドローンの運行管理システムが重要となってくる。そのために、テラドローンと提携を行い、4G LTEによる運行管理システムが完成した。博野氏は「初年度は、パートナーを組むことで、プラットフォームを揃えた段階。これで一区切りがついた。これからは実証実験を重ね、商用化をしていく段階に入った」という。

LTEを載せる意味、意義

ドローンにLTEが載ることでどういったメリットがあるというのか。

博野氏は「まずはドローンの自律飛行ができるようになる。また、撮影した映像やデータを直接クラウドへ送ればリアルタイム視聴が可能になり、すぐにデータ分析を始められるようになる」と話す。

LTEに対応することは目視外飛行が可能となることに繋がる。現状は「バッテリーの寿命」や「法整備」など、長距離飛行に課題が多いものの、それでも「LTEで目視外飛行」という目標を各キャリアは視野に入れている。

「電力線や道路、鉄道などのインフラでは広範囲での点検が必要となっている。Wi-Fiで飛ばすドローンよりも広範囲で飛ばせるLTEドローンが求められている。今は国交省から目視での飛行が求められ、ドローンを飛ばすには人が現場にいる必要がある。しかし、将来的には遠隔操作を実現したい。それには目視外の安全性が担保される必要があるが、ネットワーク圏外に入ったら自動的に圏内へ戻る仕組みや、運行管理システムによって我々は安全性を証明していきたい」(博野氏)と意気込む。

KDDIは、携帯電話事業であるauが主力の会社だ。ドローン事業はBtoBがメインとなるが、一方で、BtoC向けの事業も視野に入れている。

長崎県にあるテーマパーク「ハウステンボス」と提携したのがその一例。ドローンの飛行に制約がなく、来場者向けのドローンビジネスを模索できる格好の場所として、白羽の矢が立ったのだ(関連記事 : 社会の課題解決をドローンで、KDDIとハウステンボスがアイデアソン)。