戦闘機が敵機を探知・追尾する際、複数の機体でセンサー情報を共有できれば、目標の位置をより正確に把握できる可能性がある。

第666回、第667回、そして前回に、ロッキード・マーティン製のIRST(Infrared Search and Tracker)ポッド、レギオンの話を取り上げた。そのうち前回には、レギオン・ポッドのセンサー情報に基づいて要撃針路を割り出し、接敵するプロセスをAIで自律的に実施した話を取り上げた。

このほど、ロッキード・マーティンは、2機のF-16戦闘機に搭載したレギオン・ポッドを直接連携させる試験を実施した。今回は、その仕組みと、AIを活用した自律的な空対空戦闘への応用の可能性を考える。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

  • 胴体下面、センターラインにレギオン・ポッドを搭載したX-62A VISTA (Photo : USAF)

    胴体下面、センターラインにレギオン・ポッドを搭載したX-62A VISTA (Photo : USAF)

空対地攻撃と空対空戦闘、AIによる自律化の違い

無人戦闘用機が空対地攻撃を担当する場面というと、まず考えられるのは敵防空網制圧(SEAD : Suppression Enemy Air Defense)だが、これはレーダーの破壊と対空兵器の破壊に大別できる。指揮所の破壊も考えられなくはないが、場所を突き止めるのはもっとも難しい。

ともあれ、場所が分かっている固定式のレーダーサイトであれば、その座標を入力した空対地誘導武器を使えば済む。当節ならスタンドオフ攻撃が可能になっているのが一般的であり、現場の直上まで出向かなくても済む。移動式のレーダーが相手なら、敵レーダーが発する電波を逆探知して位置を標定した上で、対レーダー・ミサイルを撃ち込むのが基本となろうか。

対空兵器は移動式が一般的だから、個別に場所を突き止めて空対地誘導武器を使用するのが、現実的な対処になると考えられる。

いずれにしても、現場の頭上まで赴く必然性に乏しいところは似ている。ターゲットの位置さえ分かれば良く、それを人間に成り代わってAIにやらせる際の敷居は、相対的に低いといえるかも知れない。

では、空対空戦闘はどうか。

明確に敵性だと分かっている相手なら、できるだけ早期に探知・捕捉・追尾して長射程の対空ミサイルを放つのが、もっとも安全。その際、自機が長射程の空対空ミサイルを搭載しなければアウトレンジできないのが課題ではあるが。

  • AIM-120 AMRAAM (Advanced Medium Range Air-to-Air Missile)空対空ミサイルを翼下に搭載したCCAプロトタイプ、YFQ-44。(Photo : USAF)

    AIM-120 AMRAAM (Advanced Medium Range Air-to-Air Missile)空対空ミサイルを翼下に搭載したCCAプロトタイプ、YFQ-44。(Photo : USAF)

長射程のスタンドオフ交戦であれば、敵機がいる場所に赴く必然性はない。というか、近接戦闘はできるだけ避けたい。敵機の位置と針路と速力が分かったら、とっととミサイルを放って三十六計を決め込むのが理想だ。

ただ、敵機の横まで行く必然性はないといっても、敵に攻撃を覚られない、あるいは、敵が攻撃されたことに気付いても回避が困難… そういう位置取りは必要になる。すると、敵機との相対的な位置関係に違いがあるものの、要撃針路を割り出すという本質的な部分には違いはないともいえる。正体不明機の真横につけるか、敵機を確実に撃ち落とせる位置につけるかという違いである。

2機のF-16がレギオン・ポッドで情報を直接共有

といっていたら、9月16日に別件のリリースが出た。これは米空軍の予備役・州兵向け試験施設、AATC(Air National Guard and Air Force Reserve Test Center)と組んで、アリゾナ州ツーソンで実施した試験。

何をやったのかというと、2機のF-16にレギオン・ポッドを搭載してターゲットの捕捉追尾を実施した。その際に、L3ハリス・テクノロジーズ製のデータリンク機材HiveLinkを組み合わせて、ポッド同士が直接 “対話” する仕組みを作った。

普通、戦闘機が搭載するセンサーの情報を異なる機体同士で共有する場面では、センサー情報をミッション・コンピュータに取り込んでから、機上のデータリンク機材を使って通信する。これを実現するには、搭載するセンサーとミッション・コンピュータのインテグレーション作業が必要になる。

この試験についてロッキード・マーティンでは、「データリンクによってトラック・データの相互共有を実現した」と説明している。その際にポッド同士が直接 “お話し合い” をしてくれれば、機体側への影響の度合が違ってくる。

つまり、センサー情報をいちいち機上のミッション・コンピュータに取り込む必要はなくなり、ポッド同士が “お話し合い” をして、トラック・データだけを渡せばよい。それなら、Link 16データリンクで探知目標の位置情報を受け取るのと大差ない処理で済むかもしれない。

これにより捕捉追尾の機能を外出しできるから、機体の改修を不要あるいは最小限に留めることになると期待できる。これは、レギオン・ポッドを使ったパッシブ捕捉追尾の機能をポン付けできる可能性につながる。

離れた場所にいる2機が同じ目標を捕捉追尾すれば、異なる位置から方位線を引くことになるので、それなりに高い精度で位置を割り出せるのではないか。パッシブ・ソナーでよくある交差方位法と同じである。

これを、前述したX-62Aによる要撃針路算定・実行と組み合わせれば、自律的な要撃の実現に向けて一歩前進ということになろう。

ロングショットと組み合わせたら?

ロッキード・マーティンがこれらのリリースで触れているわけではないが、個人的に連想した開発プログラムがひとつある。米国防高等研究計画局(DARPA : Defense Advanced Research Projects Agency)のロングショット計画である。

これは、空対空ミサイルを搭載した無人機を空中に放つという研究開発計画だ。筆者はこれを「親亀子亀方式」と呼んでいる。なんだか、屋上に屋を架すような話にも見えるが、メリットはいくつか考えられる。

まず、ミサイルを搭載した無人機を敵の方に向けて進出させてから撃つから、ミサイルの長射程化を追求する必然性が低下する。ミサイルの射程以上の遠距離交戦が可能になる、という見方もできる。

それに加えて、ミサイル発射のタイミングに柔軟性が増す。「とりあえずミサイル搭載の無人機を放っておいて、最適なタイミングでミサイル発射を指示する」という運用が可能になるからだ。

  • ロングショット計画の下で開発している、空対空ミサイル搭載無人機の想像図。(Image : DARPA)

    ロングショット計画の下で開発している、空対空ミサイル搭載無人機の想像図。(Image : DARPA)

ロングショットは単なる研究開発プログラムだから、そのまま正式な調達プログラム(PoR : Program of Record)になると決まったわけではない。もしかすると、ロングショットの開発成果をCCA(Collaborative Combat Aircraft)に取り込む選択肢もあり得よう。

そこに、「パッシブ・センサーであるIRSTで敵に覚られずに捕捉追尾した上で、要撃針路を自動的に算定」という仕組みを加味すれば、CCAによる自律的なアウトレンジ空対空戦闘に道を開くことにならないか?