ガートナージャパンは10月13日、国内企業で不正アクセスや個人情報漏えいが相次いでいることを受け、企業が早急に実施すべきセキュリティ対策について緊急提言を発表した。
同社が2026年7月に実施した調査では、日本の大手企業のうち、脆弱性管理を十分に実施できている企業は30%にとどまったという。AIを悪用したサイバー攻撃の高速化が懸念される中、経営者主導での対策強化を求めている。
AIでサイバー攻撃が高速化、数分で実行される可能性も
ガートナーによると、2026年9月以降、日本企業で重大な不正アクセスや個人情報漏えいの事案が相次いで発生しているという。
同社は、AIやAIエージェントの進化によって、サイバー攻撃の速度と規模が大幅に拡大する可能性を指摘。
AIを用いることで、攻撃対象や脆弱性の特定、攻撃コードの生成・修正、攻撃の実行といった一連の工程を自律化できるようになる。これにより、従来は人間が数日から数週間かけていた作業が、条件によっては数時間、さらには数分で実行される可能性があるという。
一方、国内で発生している不正アクセス事案のすべてにAIが使われているかどうかは明らかになっていない。
ガートナーのバイス プレジデント チーム マネージャーである礒田優一氏は今後、AIやエージェントの利用が一般化し、脆弱性や認証、設定の不備が短期間かつ広範囲で悪用されるようになるとの見方を示している。
脆弱性管理が十分な大手企業はわずか30%
攻撃側でAIの活用が進む一方、企業の防御体制には課題が残されている。
ガートナーが2026年7月に実施した調査によると、日本の大手企業のうち、脆弱性管理を十分に実施できている企業は30%だった。
同社のディレクター アナリストである鈴木弘之氏は、AIやエージェントの進化によってサイバー攻撃と企業の防御が新たな局面を迎えていると指摘。企業は、これまで以上に緊急度を高めて対策を強化する必要があるとしている。
ガートナーは、企業が早急に実施すべき対策として、インターネットに公開しているWebアプリケーションやAPI、VPN、クラウド環境などの緊急点検を挙げている。
点検ではソフトウェアの脆弱性だけでなく、認証・認可や設定の不備も確認する必要がある。
また、複数のシステムのログを横断的に調査し、不審なアクセスやアカウントの作成、権限変更、大量のデータ取得など、侵害の兆候がないか確認することも求めている。
さらに、侵入後の被害拡大を防ぐためのネットワークの分離や特権管理、委託先やクラウド事業者を含めたセキュリティ対策の確認も重要だとしている。
「再発防止の徹底」だけでは不十分、経営者の対応を要求
ガートナーは、こうした緊急点検に加え、中長期的なセキュリティ戦略の転換も必要だとも指摘。
具体的には、定期的な脆弱性診断だけに依存するのではなく、システムに存在する弱点を継続的に把握・評価し、対処する「CTEM(継続的な脅威エクスポージャ管理)」への移行を提案している。
攻撃側だけでなく防御側もAIを活用し、先手を打ったセキュリティ対策を進めることが重要になるという。
また、相次ぐ不正アクセスによって大量の個人情報が流出している状況を踏まえ、経営者の責任にも言及した。
礒田氏は、経営者がデジタル防衛を経営上の最重要課題の一つと位置付け、自ら先頭に立って取り組む必要があると強調している。