生成AIに調べ物や資料作成を頼むのは便利ですが、仕事は一度のやり取りで終わりません。たとえば、展示会の予定変更メールが届けば、関連する資料を探し、担当者への影響を確認し、必要な対応を考えることになります。→連載「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の過去回はこちらを参照。

結局、仕事の進み具合を把握して、その都度AIに指示を出すのは人間です。もしAIが仕事の経緯を覚え、新しい情報を自分から確認し、必要な作業まで進めてくれたら、もっと多くの仕事を任せられるのではないでしょうか。

OpenAIが2026年9月29日に発表した「dots」は、仕事を継続して引き受ける常駐型AIエージェントです。「GPT-6 Astra」を搭載し、専用のクラウドPCや接続アプリで作業を進めます。日本の個人向けは月額100ドルからのChatGPT Proが対象で、Business Premiumや、管理者が有効化したEnterprise環境にも提供されています。

筆者は自分のdotに「うなぎ」と名前を付け、調べ物を頼んだり、仕事の進め方を相談したりと、秘書のように使っています。頼んでいないことも気を利かせて教えてくれるので、とても便利です。今回は、公開情報の調査、展示会準備の変更確認、Windows PC内の経費照合という3つのタスクを通じて、dotsを日常業務に役立てる方法を紹介します。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    名前や外見を設定し、自分専用のdotを作成しました

dotは専用のクラウドPCを持ち、仕事を継続して進めてくれる

まずは、ChatGPTの「あなたのdot」を開き、案内に沿って初期設定を進めます。dotはPCのWebブラウザーやChatGPTのデスクトップアプリ、スマートフォンアプリで作成でき、端末を切り替えても使えます。今回はWindows 11のChromeとデスクトップアプリで試しました。名前に加えて、カラーやキャラクター、ペットなども選べます。

dotは仕事の背景情報を踏まえて作業を切り分け、判断が必要になればユーザーに連絡してきます。通常のChatGPTにも調査や定期実行の機能はありますが、dotsは複数の仕事を継続して担当してくれるのが特徴です。調査を進めてもらいながら別の仕事を頼んだり、途中で方針を変えたりできます。

プロフィールの「うなぎのコンピューター」を開くと、dot専用のデスクトップとブラウザーが現れます。ここではWebページの閲覧やフォームへの入力、資料の確認などができます。クラウド側の作業は、ユーザーのPCの電源を切っても継続できるのが特徴です。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    dot専用のクラウドPCを開いた画面です。「操作を引き継ぐ」を選べば、自分でブラウザを操作できます

クラウド側のブラウザは、普段使っているChromeやEdgeとは別の環境です。ローカルのタブやログイン状態は共有されず、会員サイトでは認証を求められます。

GmailやGoogle Driveとの連携には「プラグイン」を使います。ブラウザ画面を操作する方法とは別に、接続先の情報を取得・更新できる仕組みです。「プラグイン」から使いたいサービスを選び、利用アカウントを接続すると、許可した範囲でdotも利用できます。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    Google Driveのプラグイン画面です。左側にはインストール済みのGmailも表示されています

資料を渡さなくても、dotが公式情報を探して確認事項をまとめてくれる

まずは、補助金の申請に必要な下調べを任せてみました。公式サイトには申請条件や手続きの説明がありますが、公募要領やFAQなど複数の資料に情報が分かれています。自社に関係する条件を探し、必要な準備を整理するだけでも手間がかかります。

題材は、中小企業などのITツール導入費用を補助する「デジタル化・AI導入補助金2026」です。小規模企業が顧客管理システムを導入する想定で、公式資料の収集から確認事項の整理まで依頼しました。

  • プロンプト

    デジタル化・AI導入補助金2026の公式サイトを開き、公募要領とFAQを確認してください。小規模企業が顧客管理システムを導入する場合に、申請前に確認すべき条件と準備事項をチェックリストにまとめてください。ログインや申請は行わないでください。

プロンプトを入力すると、dotは公式サイトの資料ダウンロードページへ移動し、公募要領のPDFを開きました。調査の様子は専用コンピューターから確認できます。利用者が資料の場所を探し、PDFをダウンロードしてAIに渡したり、ページごとに操作を指示したりする必要はありません。目的を伝えれば、資料探しから読み込みまでdotが自分で進めてくれるのです。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    クラウドブラウザで補助金の資料ダウンロードページを開いています

出力された回答には、対象ITツールの確認や申請に必要なアカウントの準備などの情報が整理されていました。公式資料へのリンクも付いているので、詳しい条件は原文に戻って確認できます。

一般的な申請手続きの一覧から、自社の規模や導入予定のツールに関係する項目を拾い出すのは面倒ですが、今回は想定した条件をもとに確認事項をまとめてもらえました。

情報収集から整理までの面倒な作業をまとめて任せられるのが便利です。補助金に限らず、複数の製品マニュアルから導入時の注意点を洗い出したり、取引先の公開資料を調べて商談前の確認事項をまとめたりする仕事にも応用できそうです。調査対象と知りたい内容を伝えれば、必要な資料を探すところからdotに任せられます。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    会社と導入ツールの条件、申請前の準備がチェック項目として並びました

一度設定すれば、変更メールの確認から対応事項の洗い出しまで自動で進む

次は、展示会の準備状況を把握し、途中で届く変更連絡にも対応できるか試してみます。スタッフの勤務表や搬入案内、申請期限など、運営に必要な情報は複数の資料に分かれています。

準備が進むなかで主催者から搬入時間やブース番号の変更が通知されれば、関連する資料を照らし合わせ、スタッフの配置や申請手続きへの影響まで確認しなければなりません。

今回は架空の展示会を想定し、会場案内や運営管理表など5ファイルをGoogle Driveに置きました。最初に準備状況を把握してもらい、その後、変更のメールが届いた時にどう判断するのか見てみましょう。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    Google Driveの専用フォルダに、PDFやExcel、テキストなど5ファイルを用意しました

  • プロンプト

    Google Driveの「dots展示会テスト」フォルダにある5ファイルを確認してください。展示会の運営担当として、開催日、ブース番号、搬入時間、スタッフ配置、申請期限、未完了タスクを整理し、現在の準備状況と対応が必要な作業を一覧にしてください。資料間の矛盾や準備漏れも確認してください。元ファイルの変更やメール送信はしないでください。

dotはExcelの3シートも照合し、作業の進み具合と未完了項目を整理しました。さらに、撤収を担当するスタッフの勤務時間が、撤収作業の時間と合っていない点も指摘しています。資料ごとに分かれた予定を照合し、段取りの問題まで確認してくれました。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    初回調査では、開催日時やブース番号に加え、未完了のタスクも一覧になりました

続いて、毎朝の確認作業を依頼しました。確認対象と時刻、変更があった場合に報告してほしいといった内容を伝えるだけで、定期タスクを登録できます。保存された内容はChatGPTの「スケジュール済み」画面で確認でき、時刻や繰り返し間隔も変更可能です。

  • プロンプト

    展示会の運営状況を毎朝9時に確認する定期タスクを登録してください。Google Driveの「dots展示会テスト」とGmailに届く「展示会事務局」からの連絡を確認し、変更があれば影響する作業や担当者への確認事項を報告してください。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    毎朝9時のタスクとして登録されました

タスクの登録後、ブース番号や設営時間などの変更を知らせるメールを送りました。すると、dotがメールをチェックしたタイミングで、変更点の報告が届きました。もちろん、筆者はメール送信後に改めて調査を指示していません。

Gmailに届いたメールとDrive内の資料を突き合わせ、ブース番号、設営時間、搬入口、入館証の申請期限という4項目の変更を見つけています。

例えば、設営時間が前倒しされた結果、その時間帯に勤務するスタッフがいないことを指摘しました。さらに、入館証の申請期限も早まったため、参加スタッフの確定を急ぐ必要があると報告しています。次に誰へ何を確認すべきかが整理されているため、担当者は報告を読んですぐに動き出せそうです。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    ブース番号や搬入口の変更に加え、優先して対応すべき作業も報告されました

PC内のファイルもそのまま使い、照合からExcelの修正まで任せられる

最後は、自分のWindows PCに保存したファイルの処理をdotに任せてみました。dotsは専用のクラウドPCだけでなく、ユーザーのPCにも接続できます。アクセスを許可すれば、手元のファイルを使った照合や資料作成なども依頼できるのです。

あらかじめGoogle Driveなどにファイルを移す必要はありませんが、作業中はPCをオンラインに保ち、ChatGPTアプリを起動しておく必要があります。

Windows版のChatGPTアプリでdotのプロフィールを開き、「デバイス」に表示されたPCを選択します。「アクセスを許可」をクリックすれば接続完了です。これでPC内のファイルを使った作業を頼めるようになり、スマートフォンからも同じdotを通じて指示できます。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    Windows PCへのアクセスを許可する確認画面です。利用するPCを指定して接続します

今回の検証では架空の出張を想定した領収書PDF8点、経費台帳Excel、日程メモを用意しました。金額の転記ミスや同じ領収書の重複登録、台帳に載っていない領収書、証憑が不足している経費を混ぜています。PDFの内容と台帳の各行を突き合わせる課題です。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    PDFの領収書とExcel台帳など、検証用の10ファイルをWindows PCに保存しました

  • プロンプト

    Windows PCの「ドキュメント」にある「dots経費精算テスト」フォルダの領収書PDFとExcel台帳を照合し、金額の不一致、重複、記載漏れを確認してください。結果を新しいExcelにまとめ、「dots精算結果」フォルダに保存してください。

dotは「領収書と経費台帳を照合」というタスクを作成し、作業を進めました。プロフィールの「最近のアクティビティ」から開くと、ファイルの読み取りや処理状況が確認できます。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    会話を切り替えずに、右側のパネルで作業状況を確認できます

金額の不一致や台帳の二重計上、記載漏れ、領収書不足、PDFの重複という5種類の問題を検出し、結果を新しいExcelに保存しました。領収書を開いて台帳の該当行を探す手間が省けるため、ユーザーは指摘された項目の確認に集中できます。

ただし、最初に作成されたExcelは情報量が多く、横長で読みにくい表になっていました。照合はできていても、そのまま使える資料にはなっていなかったのです。そこで、次のように修正を依頼しました。

  • プロンプト

    作成したExcelは情報が多く、表も見にくいので、発見した問題を「問題点」「具体的な内容」「確認すべきこと」の3列に整理し、1画面で全体を把握できる見やすい表に作り直してください。

修正版は3列に整理され、確認すべき内容を一度に見渡せる表になりました。出来上がった資料を確認し、列幅や色分けなどを追加で指示できるのも、会話形式で仕事を頼む利点です。請求書と発注一覧の照合や、見積書の確認にも応用できそうです。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    修正版では、問題点、具体的な内容、確認すべきことが3列に整理されました

PCへのアクセス許可は、作業が終わっても自動では解除されません。必要なときだけdotにアクセスさせたい場合は、作業後に権限を取り消しておくと安心です。dotのプロフィールでPC名の横にあるメニューを開き、「アクセス権を取り消す」を選べば解除できます。PCをオフラインにするだけでは、許可の設定は残るので注意しましょう。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    PCへのアクセス権を取り消す際には、確認画面が表示されます

自動で任せる操作と人間が承認する操作を分け、確認の手間を減らす

dotに仕事を継続して任せるなら、操作のたびに承認する手間も減らしたいところです。例えば、自分宛ての報告メールなら自動送信を許可し、重要なファイルの変更は事前に確認するといった使い分けができます。

「設定」→「パーソナライズ」→「権限」→「カスタムルール」では、操作内容に応じて4種類の対応を指定できます。確認なしで実行する、プロンプトで明示的に依頼した場合だけ実行する、実行前に承認を求める、人間に引き継ぐ、という選択肢があります。

今回は、自分宛ての定型報告だけは承認を省くルールを設定してみました。「追加」を開き、「自分のGmailアドレス宛てに、作業結果や定期チェックの報告メールを送信する」と入力し、「承認を求めずに実行」を選択します。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第38回

    対象となる操作を文章で指定し、4種類の実行・承認ルールから選択します

カスタムルールで毎回の承認を省いても、操作内容を点検する「Auto-review」などの安全対策は引き続き働きます。ただし、外部のWebページやメールに悪意ある指示が紛れ込む可能性もあるため、外部宛てのメール送信や重要なファイルの変更などは、必要に応じて事前に承認を求める設定にしておくと安心です。

また、接続を解除しても取得済みの情報が自動で消えるわけではありません。業務で利用するアカウントや資料は、会社のルールに従って扱いましょう。営業案件の返事待ちや展示会の準備など、仕事では次の連絡を待ちながら別の業務を進める場面も多いでしょう。

メールを何度も開き、資料に変更がないかを確かめる時間は、積み重なると無視できません。dotsに確認を任せておけば、変更があったときに報告を受け取り、必要な判断や対応に移れます。

まずは、普段から何度も確認しているメールや管理表を一つ選び、チェックしてほしい内容や報告の条件をdotに伝えてみましょう。仕事の合間に発生する細かな確認を預けるだけでも、目の前の業務に集中できる時間が増えるはずです。