生成AI、便利そうなので使いたいが、ユースケースがわからないといった相談が増えています。頭を使うことであれば、幅広いシチュエーションで生成AIを活用できると思うのですが、やはり最初は自分事として捉えられる事例を真似をするところから始めたい、と思うのも理解できます。→過去の「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の回はこちらを参照。
議事録やスライドを作ろうと言っても、刺さらない人もいるでしょう。そこで、今回は生成AI好きのビジネスパーソンが1日にどんな時にどんな風に生成AIを活用するのかを日記風に紹介します。
初心者向けの時短や効率化といった活用法を中心に、現実的にはあり得ないほどネタをてんこ盛りにしています。もちろん、筆者がこんな1日を過ごしているわけではありませんが、一つでも二つでも、興味のある活用例が見つけていただけると嬉しいです。
生成AIを使い倒すビジネスパーソンの1日
起床~出社
7:00 起床
睡眠時間を管理するために使っているスマホアプリ「Sleep Cycle」は睡眠中の動きや音をAIで解析し、設定時間の30分前から眠りの浅いタイミングで起こしてくれるので、すっきりとした目覚めになります。おはようから、おやすみまでAIに面倒を見てもらっている感じですね。7:30
簡単な朝食を食べながら、ニュースをチェック。何はともあれ、AI関連ニュースをチェックしたいところです。そこで、ChatGPTの「タスク」機能を利用して、毎朝7時半に最新のAIニュースが届くようにしています。準備ができたらメールが届くので、ChatGPTでさっと読めます。-
プロンプト
タスクを作って、毎日、午前7時半に、最新のAIニュースを検索し、トピックを日本語で5つまとめてください。
プロボノで手伝っているNPO法人では、ネット詐欺の啓もう情報をSNS発信するタスクを任されています。最新のネット詐欺情報をチェックし、Xの投稿文章を作るのも、ChatGPTのタスク機能に任せてしまいましょう。
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プロンプト
タスクを作ってください。毎朝7時半に、最新のネット詐欺に関する被害ニュースや統計、技術などに関する記事を検索し、読者の興味を集めそうな5つをリストアップしてください。
それぞれ、異なるツイートとしてXに投稿するための文章を書いてください。ハッシュタグやリンクも付けてください。文章は日本語でですます調です。初回のみ即時実行してください。
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8:30
出勤途中でメールチェック。個人用のメール宛にも大量のメールが届きます。そこで、Apple Intelligenceを使って、素早くチェックします。Apple Intelligenceは優先的にチェックすべきメールを抽出したり、メール要約のプレビューを表示してくれるので、読むべきメールだけ開くことができ、効率的です。
出社~業務開始
9:00
会社に着いたら、生成AIという名の秘書に今日の予定を教えてもらいます。Google Workspaceを利用しているので、Geminiに聞きました。あらかじめ、設定でGoogle Workspaceへの接続をオンにしておく必要があります。すぐに、Googleカレンダーを見て、予定をピックアップしてくれました。場所の情報も取得しています。そのまま、移動経路を調べることもできます。-
プロンプト
カレンダーを見て、今日の予定を教えて
Google WorkspaceのGmailやToDoリスト、Googleドキュメント、Googleドライブなど他のアプリにもアクセスできます。試しに、対応が必要そうなメールが届いているかどうか聞いてみましょう。見事、見積もりを送るように言われているメールを抽出してくれました。メール確認は後回しにするつもりでしたが、見積もり対応だけは今すぐ処理してしまうことにします。
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プロンプト
対応が必要なメールは来ている?
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10:00
明日の編集会議に備えて、オウンドメディア用の記事のネタを20個考えます。生成AIに「ネタ考えて」と入れても考えてくれますが、それだとクオリティ不足になりがち。そのため、生成AIを酷使して、たくさんネタ出ししてもらい、自分の目で厳選しました。
その際も、なるべく様々な切り口の記事にするため、まずはカテゴリを大量に生成してもらい、面白そうな20個に厳選。その後、その20カテゴリごとに5個のネタを考えてもらうことにしました。
必要な情報や条件をしっかり提示するほど、生成AIの出力のクオリティもアップします。100ネタを5分の1にする作業に苦労するほど、全部のネタが面白そうです。
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プロンプト
最新のビジネス環境に関して包括的に検索し、ビジネスパーソン向けオウンドメディアに掲載する記事の作成します。まずは、異なる記事のカテゴリを30個考え、カテゴリ名だけをリストアップしてください。
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プロンプト
以下の20の記事のカテゴリそれぞれに、読まれそうな記事のアイディア5個ずつください。
DX推進/AI・生成AIのビジネス活用/経営戦略・事業開発/マーケティング・グロース戦略/セールス・営業力強化/スタートアップ・新規事業創出/サステナビリティ・ESG経営/人的資本経営・組織開発/新しい働き方・ワークスタイル変革/リーダーシップ・マネジメント論/キャリアデザイン・スキルアップ/サイバーセキュリティ・リスク管理/業務効率化・生産性向上TIPS/データドリブン経営・BI活用/最新ビジネストレンド解説/リスキリング・学び直し/DE&I/カスタマーサクセス/BtoBマーケティング実践/企業ブランディング
11:00
社内のコンプライアンス研修を実施するために資料を作ります。Wordファイルでの資料はあるのですが、6万文字以上あるので「読んでね」と言っても誰も読んでくれません。そこで、プレゼンスライドに重要なポイントをまとめてプレゼンすることにしました。生成AIにWord資料をアップロードし、10項目を抽出してスライドにしてもらいました。今回は、さまざまなAIエージェントツールを提供するGensparkで生成しました。-
プロンプト
コンプライアンス研修用のスライドを12枚作成してください。添付の文書を参照し、ポイントとなりそうな10項目を抽出して解説スライドを生成してください。1ページ目は表紙、最後はまとめでお願いします。
ランチ
12:00
ランチは検索特化型生成AI「Perplexity」で調べます。望む条件をずらずらと並べても、きっちり探し出してきてくれるので、グルメサイトよりも重宝します。-
プロンプト
町田駅近くでランチします。徒歩5分以内で、評判の良い店を3つ教えてください。気分的に、こだわりの海鮮が食べたいです。席が狭いよりはゆったりしている方がいいです。待ちたくないので予約できるところがいいですね。また、絶対に禁煙にしてください。
12:50
ランチ時間が終わるまで少し時間ができました。この隙間時間にサクッと勉強してしまいましょう。Claudeにkintone認定 アソシエイトに関する勉強をするので、質問を出してくれ、と頼みます。質問に回答すると添削し、解説してくれます。今回は頼まずとも、次の問題を出してくれたので、時間いっぱいまで勉強できます。個人的な家庭教師のような感じですね。もちろん、いつストップしてもいいので気軽に勉強できます。-
プロンプト
以下の資格の勉強をします。質問を出してください。解答したら、添削し、簡単な解説をしてください。
###資格
kintone認定 アソシエイト
午後の業務~退勤
14:00
Microsoft TeamsでのWeb会議に参加しました。TeamsのCopilotは非常に優秀で、会議の途中でも利用できます。話の流れがよくわからなくなったり、遅刻して参加した時は「ここまでどんな議論があった?」と入力すれば、会議を妨げることなく話題にキャッチアップできます。誰かの発言が理解できなかった時も、そっとCopilotに聞けば解説してくれます。会議後は「アクションプランをリストアップして」と入れれば、TODOリストができますし「議事録を作って」で議事録作成も完了してしまいます。-
プロンプト
ここまでの議論をまとめて
15:00
新規事業を立ち上げろ、と会社から指示があったので、ChatGPTと会話しながら、AIエージェントに挑戦するのがよさそうです。まずは、どんな事例があるのか、これから参入するならどんな領域で、どんなプロダクトにすればいいのか調査しましょう。普通に聞いてもいいのですが、ChatGPTやGemini、Claudeをはじめ、生成AIの多くが「Deep Research」機能を搭載しています。以前であれば自分で数日かけるか、外注していたレポートが追加コストゼロで得られるので便利ですね。時間がかかるとはいえ、10~20分なのですから、他の作業をしていればあっという間です。-
プロンプト
これから独自のAIエージェントを開発し、ビジネス化していこうと思います。現状のグローバルでのAIエージェント活用事例を精査し、どの領域でどんなプロダクトにすればいいかレポートを作成してください
退勤後~帰宅
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21:00
会食から帰る途中にLINEチェックします。いろんな人からメッセージが来ていたので、片っ端から返信しなければ。とは言え、電車の中なので高速タイピングも難しいです。そんな時は「LINE AIトークサジェスト」機能が大活躍。「AI」アイコンをタップすると、会話の流れを分析して、返信案が複数提示されるので、選ぶだけでOK。短時間ですべてのメッセージに返信できました。
22:00
夜は、副業のウイスキー輸入・販売のタスクを片付けます。イギリスの業者とメールをやり取りするのですが、これもChatGPTにお任せ。以前は、日本語で文章を書いてから翻訳していたのに、今では内容を箇条書きで伝えるだけで、しっかりとした英文メールにしてくれます。先方のメールも、機械翻訳にかけるよりは、ChatGPTの方が内容をかみくだいて教えてくれるので助かります。コミュニケーションが圧倒的に速くなり、いい感じです。先日、オランダの人材紹介会社から、リモートワークでの仕事の依頼がありました。報酬が月に7000ドルと言うのでうれしかったのですが、ChatGPTに聞いたら「非常に典型的な詐欺」とのことでした。日本語メールであれば引っかかりませんが、これは危なかったです。-
プロンプト
※英文をコピー&ペースト
これ、どう思いますか?
晩酌
22:30
日記&壁打ち代わりに生成AIと雑談。お酒を飲みながら、音声入力でだらだらと会話を続けます。会話の履歴は残るので、日記代わりにもなるし、愚痴を吐き出してすっきりもできるし、前向きなアドバイスももらえます。逆に、アドバイスするな、相槌だけ打ってくださいと頼むこともできます。-
プロンプト
あー今日も疲れたーちょっと聞いてくれよ、毎回毎回会議に数分遅れて入ってくる部下がいるんだけど、言っても聞かないんだよね。どうすればいいかね?
以上が、生成AIを使い倒すビジネスパーソンの24時間となります。今回は、生成AIを一日中使い倒す、少し極端なビジネスパーソンの一日をご紹介しました。
もちろん、これらすべてを毎日実践する必要はありません。まずは、「これなら自分でもできそう」「仕事のあの場面で使えそうだ」と感じたものを1つでも試してみてください。その小さな一歩が、あなたの働き方を大きく変えるきっかけになるかもしれません。