北海道札幌市に本社を置くHBAは、社員のAWS(Amazon Web Services)活用スキル向上を目的とした社内イベント「AWS Jam」を東京・品川コラボレーションオフィスで10月5日に開催した。AWSのサービスを活用して実践的な課題の解決に挑む、ゲーム形式の学習イベントだ。

  • HBAの品川コラボレーションオフィスで開催されたAWS Jam

    HBAの品川コラボレーションオフィスで開催されたAWS Jam

HBAは1964年創業のIT企業で、システムインテグレーション、ソフトウェア開発、アウトソーシング、クラウドサービスを主力事業とする。北海道を拠点に全国の企業や自治体向けにITソリューションを提供しており、近年は地域課題の解決に向け、自治体や大学との連携も進めている。

AWS Jamは、AWSが提供する実践型の学習プログラムだ。参加者は実際の業務を想定したシナリオに沿って、AWS環境で発生する複数の課題の解決に挑戦する。課題には難易度が設定されており、必要に応じてヒントを利用することも可能だ。チームで競い合うゲーム的な要素を通じて、AWSの知識だけでなく、問題解決能力やチームワークを養える点が特徴となっている。

今回参加したのは、同社で通信、金融、公共分野などのソフトウェア開発を手掛けるICTソリューション本部に所属する希望者23名。約半数は入社3年までの若手だが、エンジニア歴10年以上のベテランも4名参加した。

参加者のうち11人は何らかのAWS認定資格を取得している。AWSを学び始めたばかりの社員から豊富な知識を持つ社員まで、異なる経験やスキルを持つメンバーが集まった。

制限時間は3時間、役割を交代しながら7つの課題に挑戦

今回のAWS Jamでは、難易度の異なる7つの課題が用意された。制限時間は3時間で、全問を解決した場合の満点は890点。課題を解決すると得点を獲得できる一方、ヒントを利用すると減点される仕組みだ。インターネット検索は認められているものの、今回はAIの利用を禁止するルールが設けられた。

ファシリテーターを務めた酒井幹士氏は、「事前に課題の難易度を確認した際にはAIも利用した。今回はAIが利用できない設定としたことから、参加者には多少ハードルが高かったかもしれない」とコメントした。

  • AWS Jamのメインファシリテーターを務めた酒井幹士氏

    AWS Jamのメインファシリテーターを務めた酒井幹士氏

参加者は基本的に2人1組でチームを組み、課題に取り組んだ。一人が直接手を動かす「ドライバー」で、もう一人が設問の意図や行うべきことを判断して指示を行う「ナビゲーター」役を担う。

ドライバーは実際にPCを操作し、AWS環境での作業を担当する。一方のナビゲーターは、設問の意図を読み解き、必要な作業を判断してドライバーをサポートする役割だ。

今回は、課題ごとにドライバーとナビゲーターを入れ替えるルールも設けられた。双方が実際に手を動かし、考えながら課題に取り組める仕組みだ。

課題の解決に行き詰まった場合は、用意されたヒントを利用できる。ただし、ヒントを使うと得点が減るため、どのタイミングで利用するかも重要な判断となる。

正解できなければ得点を獲得できないため、ファシリテーターからは、限られた時間内に効率よく課題を解決すべく「制限時間が迫ってきた場合はヒントを使って“時短”するべき」というアドバイスもあった。

  • 基本は2人1組でチームを組み、作業を行うドライバーと、作業をサポートするナビゲーターで役割を分担し、課題ごとに交代。これで実践的なAWSスキルを獲得する

    基本は2人1組でチームを組み、作業を行うドライバーと、作業をサポートするナビゲーターで役割を分担し、課題ごとに交代。これで実践的なAWSスキルを獲得する

  • 課題解決のための直接的なヒントを得る事もできるが、ヒントを使うと減点される。とはいえ、正答しなければ0点なので「時間が限られた場合はにヒントを使って時短するべき」とアドバイスがあった

    課題解決のための直接的なヒントを得る事もできるが、ヒントを使うと減点される。とはいえ、正答しなければ0点なので「時間が限られた場合はにヒントを使って時短するべき」とアドバイスがあった

  • 2人で協力し、知識と経験で課題をこなすのがAWS Jamのポイントだろう

    2人で協力し、知識と経験で課題をこなすのがAWS Jamのポイントだろう

今回の参加対象となったのは、HBAのなかでAWSのオンライン学習サービス「AWS Skill Builder」を利用している社員たちだ。

AWS Skill BuilderはAWSに関するさまざまな技術やサービスを学べるオンライン学習プラットフォームで、多くのデジタルコースや学習プランが提供されている。無料で利用できるコンテンツに加え、個人/チーム向けの有料サブスクリプションも用意されている。

HBAでは、このAWS Skill Builderによる学習で身につけた知識を、実際の課題解決に生かす機会として今回のAWS Jamを企画した。

イベントの結果、最高得点を獲得したチームは666点を記録。このチームは特別に3人編成となっており、うち1人はAWS認定資格を全種類取得したエキスパート社員。課題解決を進めるだけでなく、チーム全体をまとめる役割を担っていた。

HBAでは、こうした高いスキルを持つ社員に、今後の社内イベントで課題作成やファシリテーターとして活躍してもらうことを想定している。

  • 課題解決時に気になった疑問はファシリテーターに尋ねてもよい

    課題解決時に気になった疑問はファシリテーターに尋ねてもよい

  • 最高得点を獲得したトップチーム。実は一番左の人物はAWS資格をすべて持っているベテランの方。ノートパソコンのステッカーが歴戦ぶりを示している

    最高得点を獲得したトップチーム。実は一番左の人物はAWS資格をすべて持っているベテランの方。ノートパソコンのステッカーが歴戦ぶりを示している

  • AWS Jam終了後、参加者有志で記念撮影

    AWS Jam終了後、参加者有志で記念撮影

知識を「知っている」から「使える」へ AWS Jamを導入した狙い

HBAが、社内研修にAWS Jamを取り入れるのは今回が初めてだという。

開催の狙いについて、イベントの企画・運営を担当したHBA 経営企画本部 人事・購買部 人事グループ ジュニアエキスパートの及川倫子氏に話を聞いた。

  • HBA 経営企画本部 人事・購買部 人事グループ ジュニアエキスパートの及川倫子氏。今回の企画を裏で支えた

    HBA 経営企画本部 人事・購買部 人事グループ ジュニアエキスパートの及川倫子氏。今回の企画を裏で支えた

及川氏は、今回のAWS Jamを企画した目的について、「学んだ知識を実際に使える力としてほしいという思いがあります」と説明する。

「HBAではエンジニアに対してさまざまな研修を実施していますが、日々の業務への対応を優先せざるを得ず、継続的な学習時間の確保が難しい状況になる場合もあります。自分の都合に合わせて学べるAWS Skill Builderのようなオンデマンド学習も行っていますが、今回はオンデマンド学習で得た知識を実際に使える場としてJamという形式にしました」(及川氏)

実際の業務では、オンデマンド学習のように一人ですべてを進めるのではなく、チームで役割を分担し、協力しながら仕事を進める場面が多いという。

「今回のJamではドライバーとナビゲーターという役割分担を行い、上位3チームを表彰するゲーム的な要素も盛り込みました。コミュニケーションを取りながら、互いの知識や考え方を学んで課題を解決する経験を積めることも、選んだ理由の一つです」という。

また、学習テーマとしてAWSを選んだことには、同社の業務との関連性もある。

「AWSを選んだ理由は、実際の業務とのつながりと、これまで進めてきた学習を実践につなげられることです」と及川氏。HBAでは、今回の対象となったICTソリューション本部(東京・品川コラボレーションオフィス)に加え、本社を置く札幌の部門でも、AWSを活用する案件が多く、社員がAWSの知識やスキルを高めることは、実際の業務にも直結するという。

将来は全社展開も視野に、社員が学び続けられる環境づくりへ

HBAでは、社員の技術力向上や成長を支援するため、オンライン学習や社内研修に加え、外部の技術イベントへの参加機会も設けている。

その一つが、各本部から選抜された社員を対象とする海外研修だ。2025年にはAWSの年次カンファレンス「AWS re:Invent」に数名の社員が参加。2026年も11月30日~12月4日にラスベガスで開催される「AWS re:Invent 2026」への参加を予定しているほか、2027年1月には同じくラスベガスで開催されるテクノロジー見本市「CES 2027」への社員派遣も予定しているという。

HBAでは将来的に、AWS Jamを全社で実施することを視野に入れている。その実現に向けて重視しているのが、社内にイベントを運営できる人材を育成することだ。

及川氏によれば、今回の企画・運営には、AWS認定資格を全種類取得したエキスパート社員や、日頃から自主学習に励む若手社員も協力したという。こうした社員が課題作成やファシリテーションのノウハウを身につけることで、将来的には自社で今回のイベントのような学習機会を作れる体制を整えたい考えだ。

「初の取り組みとなる今回のAWS Jamを通じ、参加者の声や振り返りを通じて、社員が継続的に学び続けられる環境づくりにつなげることが今後の目標です」(及川氏)