ダイドーと富士ソフトは10月中旬、名古屋市内で開催した「ダイドーロボット館十年祭」において、生成AIとロボットを組み合わせたフィジカルAIの社会実装を支援する「フィジカルAIスタートパッケージ」を公開した。AIとロボットを組み合わせた自動化への関心が高まる一方で、現場導入には依然として高いハードルが存在する。両社はロボットメーカーや業界団体とも連携し、実機検証や技術支援を通じて、フィジカルAIの社会実装を後押しする考えだ。

  • ダイドーロボット館(名古屋市中村区)の外観

    ダイドーロボット館(名古屋市中村区)の外観

フィジカルAIは、LLM(大規模言語モデル)や画像認識AIを活用し、ロボットが現実世界を認識して作業を実行する仕組みとして注目を集めている。一方で、ロボット制御やシステム構築には専門知識が求められ、製造業を中心に導入の難しさが課題となっている。

こうした課題に対し、ダイドーと富士ソフトは「フィジカルAIスタートパッケージ」を展開する。音声認識、LLM、VLM(Vision Language Model:視覚言語モデル)、産業用ロボットを組み合わせることで、自然言語による作業指示からロボット制御までを一体的に実現する仕組みだ。

フィジカルAI導入を支える「ロボット館」、実機検証環境を全国展開

ダイドーは、FA機器やロボット、設備プラントを手掛ける技術商社として、国内外約1万社との取引実績を持つ。年間約3000台のロボット販売に加え、国内約40拠点の営業・技術網を通じて製造現場を支援してきた。

同社が特に力を入れてきたのが、ロボット導入前に実機検証を行うための「ロボット館」の運営だ。

ダイドー 取締役 エンジニアリング本部 本部長の纐纈靖幸氏は「ロボットの導入は大手企業が中心だったが、中小企業や食品業界、医薬業界などでは十分に普及していなかった」と振り返る。

  • ダイドー 取締役 エンジニアリング本部 本部長の纐纈靖幸氏

    ダイドー 取締役 エンジニアリング本部 本部長の纐纈靖幸氏

そのため同社は2016年、「1台からでもロボットを活用できる環境づくり」を目的に名古屋ロボット館を開設した。ロボット館の役割は、導入前の実機検証、新製品・先端技術の展示、安全教育の3つだ。

現在は名古屋に加え、東京、福岡、三河へと拠点を拡大。計120台を超えるロボットや各種周辺機器を保有し、実証環境を提供している。

  • ロボット館の各拠点

    ロボット館の各拠点

ダイドー エンジニアリング本部 副本部長兼ロボットシステム部 部長の橋川茂氏は「ロボットだけではシステムは成立しない」と説明する。ロボットシステムにはハンドやパッドなどのエンドエフェクター、コンベア、画像認識装置などの周辺機器が必要となる。同社ではこれらを自社設備として保有し、構想設計から仕様検討、検証、立ち上げまでを専門技術者が支援する体制を整備している。

  • ダイドー エンジニアリング本部 副本部長兼ロボットシステム部 部長の橋川茂氏

    ダイドー エンジニアリング本部 副本部長兼ロボットシステム部 部長の橋川茂氏

こうした取り組みを通じて、中小企業でもロボット導入のハードルを下げ、現場で活用しやすい環境づくりを進めてきた。

富士ソフトと連携し「フィジカルAIスタートパッケージ」を展開

今回、披露したフィジカルAIスタートパッケージは、そうした実証環境とフィジカルAI技術を結び付ける取り組みと位置づけている。

ダイドーは富士ソフトに加え、ファナックなどとも連携する。ロボット活用の経験がない企業でも、フィジカルAIの仕組みを理解し、実際の現場で試せる環境を提供することが狙いだ。

  • 「フィジカルAIスタートパッケージ」の概要

    「フィジカルAIスタートパッケージ」の概要

纐纈氏は「フィジカルAIを活用したいと考えていても、何から始めればよいのか分からない企業は多い」と指摘する。そのため同パッケージを、導入に向けたヒントや出発点となるソリューションとして展開していく考えを示した。

会場では、パーソナルAIスーパーコンピュータ「NVIDIA DGX Spark」上で動作するAIが音声指示を解釈し、カメラ映像から対象物を認識した上でファナック製ロボットを制御するデモも披露された。AIが指示内容を理解し、把持や搬送といった動作を自律的に実行する様子を紹介していた。これにより、人とロボットの自然な協調作業を実現する。

  • 「フィジカルAIスタートパッケージ」を活用した実機の一例

    「フィジカルAIスタートパッケージ」を活用した実機の一例

  • 「フィジカルAIスタートパッケージ」を活用した実機の一例

    「フィジカルAIスタートパッケージ」を活用した実機の一例

以下は実際の動画だ。

ヒューマノイドやAMRを展示、次世代の工場自動化を提案

イベント会場にはフィジカルAIだけでなく、ヒューマノイドロボットやAMR(自律走行搬送ロボット)、協働ロボット、自動倉庫システムなども展示されていた。ダイドーは、最新技術をいち早く顧客に体験してもらうこともロボット館の役割だとしている。

  • 協働ロボット。衝突を検知すると自動的に停まることが可能

    協働ロボット。衝突を検知すると自動的に停まることが可能

また、三河地区に開設した「ダイドーオートマチックファクトリー」では、AMRによる工程間搬送などを再現した実証環境を構築している。製造現場に近い環境で搬送自動化や無人化ラインを検証できる施設として運用を進めている。

少子高齢化や人材不足を背景に、製造業では自動化ニーズが高まり続けている。一方で、AIやロボットをどう活用すればよいか分からない企業も少なくない。

ダイドーと富士ソフトは、ロボット館で培った実証・検証のノウハウとAI技術を組み合わせることで、フィジカルAIの導入を支援する。両社は、現場で実際に使われるフィジカルAIの実装を進めることで、日本の製造業における自動化の裾野拡大を目指していく。