三菱総合研究所は10月13日、企業のAIエージェント同士が組織を超えて自律的に取引する「A2A(Agent-to-Agent)経済」に関する提言レポートを公表した。生成AIやAIエージェントの普及を背景に、新たな経済システムの出現を展望するとともに、日本がその形成に主体的に参画するための方策として「管理されたリスクテイクを支える業界別ミドルプラットフォーム」の構築を提言している。
A2A経済の到来を見据えた提言
レポートによると、AIエージェントは単体での業務支援から、複数のエージェントが連携してタスクを遂行する段階へと進化しつつある。エージェント間連携を支える技術基盤の整備も進んでおり、将来的には組織を超えたAIエージェント同士の連携によって、経済活動の根幹である取引が自律的に行われる「A2A経済」が形成される可能性があるという。
レポートではA2A経済を「複数のAIエージェントが組織を超えて自律的に連携することで形成される経済システム」と定義している。現在は主に組織内部で活用されているAIエージェントが、将来的には企業間で連携するようになり、取引の自動化が進展するとしている。なお、同レポートでは主に企業間取引(B2B)分野を対象に検討している。
有望分野の一つは製造業のサプライチェーン
三菱総合研究所は、A2A取引の特性として「高速性」「柔軟性」「自律性」を挙げる。こうした特性により、生産性向上に加え、新市場の創出や産業構造の再編につながる可能性があるとしている。
ユースケースとしては、初期段階では既に取引関係やデジタルシステムが構築されている製造業のサプライチェーンなどが有望だという。さらに普及が進んだ段階では、不動産や金融、人材分野の仲介業の高度化に加え、電力システムや交通、防災といった社会システム運用の高度化も想定されるとしている。
一方で、A2A導入にはリスクも伴う。AIエージェントの誤判断や逸脱だけでなく、エージェント間の共謀や衝突といったマルチエージェント環境特有のリスクが存在する。A2Aが社会や経済に浸透した場合には、こうしたリスクが集積・波及し、市場環境の急変や社会インフラの停止につながる可能性もあると指摘している。
業界別ミドルプラットフォームの構築を提言
レポートでは、A2A経済を成立させる条件として、「信頼できる」「制御できる」仕組みの整備に加え、エージェント同士が安全につながる環境の構築や、経済合理性のあるエコシステムの形成を挙げる。
その上で三菱総合研究所は、日本がA2A経済の形成に主体的に参画するためには、リスクを過度に恐れて実装を先送りするのではなく、「管理されたリスクテイク」のもとで経験やノウハウを蓄積することが重要だと提言する。
特に、A2A導入時の信頼確保コストを抑えるために整備すべきだとしているのが、汎用的なAI基盤やプロトコルの上に、業界固有の取引を支える共通機能を備えた「業界別ミドルプラットフォーム」だ。資格管理や能力評価、商慣習への対応、法制度対応など、業界ごとに異なる機能を共通基盤として提供することで、効率的な信頼確保に加え、グローバルプラットフォームとの差別化を図りながら競争力を構築・維持できる余地が大きいと説明している。
また、業界やリーダー企業にはA2A取引を支えるミドルプラットフォームの構築を主導する役割を期待しているほか、企業にはA2A対応に必要な能力やガバナンスの整備、政府には法的予見性の向上や重点領域における初期需要創出の支援を求めている。

