ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト・矢嶋康次が衝く「消費税議論の核心」

消費減税「2年間限定」で終わるのか

 高市首相は、来年4月から消費税率を引き下げると決断した。

 日本の消費税は、1989年に3%で導入され、その後5%、8%、10%へと引き上げられてきた。今回、税率引き下げが実現すれば、消費税の歴史上、初めて本格的な税率引き下げとなる。

 注目すべきなのは、財源の確保と、2年間の時限措置を終えた後に本当に税率を元に戻せるのかという政治的な問題である。

 海外では、景気や物価の状況に応じて付加価値税率を一時的に引き下げる例がある。しかし、日本では消費税が社会保障の安定財源と位置付けられ、国だけでなく地方財政にも配分されている。このため、税率の変更は単なる景気対策ではなく、年金、医療、介護、少子化対策を含む社会保障制度全体に影響する。日本で消費税を動かしにくいのは、税が多くの役割を担っているためでもある。

 今回、食料品をゼロ%ではなく1%とするのは、課税取引の枠組みを残し、事業者の会計やレジシステム、税務上の混乱を抑える狙いがある。酒類や外食を除く食料品の税率が8%から1%に下がれば、食料品に月8万円を使う世帯なら、機械的には年間6万円程度の負担軽減となる。

 問題は財源である。2年間で約10兆円の税収減が見込まれている。政府・与党は赤字国債に頼らず、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などで確保するとしているが、具体策は見えない。仮に足元の税収の上振れや税外収入で2年間を賄えても、それは安定した財源ではない。長期金利の上昇は財政不安を示す一つの要素であり、その背景にはこうした財源に対する懸念がある。

 もう一つ市場が警戒するのは、2年後に予定どおり税率を8%へ戻せるかである。いったん1%に下げた税率を戻せば、家計には食品価格の急上昇と受け止められる。選挙が近ければ延長論が強まり、一時措置が恒久化する可能性がある。その場合、恒久財源のない減税だけが残る。

 今後の焦点は、秋の臨時国会で消費税率引き下げに関する法案が議論される中、2年間という期限を法律上どのように担保するかである。景気悪化時の延長条項を設けるのか、その場合に何を判断基準とするかも焦点となる。所得に連動した給付の本格導入が、2029年度にきちんと間に合うのかも重要な論点となる。また、デフレ脱却宣言との関係も重要だ。デフレ脱却を宣言しながら物価高対策として減税することは、一見矛盾する。

 今回問われているのは、消費税を下げる是非だけではない。日本の政治が期限と財源を明示し、その約束を守れるかである。国民は足元の物価高をなんとかしてほしい。政治家は選挙を見据える。金融市場は財源と、2年後に本当に戻せるかを見る。この3つの視点の違いが、今回の消費税議論の核心である。