
今は企業のガバナンスそのものが揺らいでいる
─ 近年、日本でもアクティビスト(モノ言う株主)の存在感が高まり、対応に追われる企業が増えています。こうした現状をどのように受け止めていますか。
久保利 企業は本来、公器ですから、公の器ということで、わたしは一部の株主が自分たちの利益や私利私欲のために企業を乗っ取るとか、解体するということはあってはいけないと思っています。
しかし、今はそういう人たちが縦横無尽に活躍できるような法体系になっていて、彼らは必ずしも、会社法なり金融商品取引法なりをきちんと守っているわけでもない。それなのに、そうした人たちが世論を味方につけたり、きちんとした批判を受けたりしないまま、何となく世の中の人たちも彼らに加担するような流れが、今の日本にはあるような気がします。
そういう意味で、今は企業のガバナンスそのものが揺らいでいる気がしますし、企業の経営者もなんで、そんなにビクビクしているのか。経営者なのですから、もっと堂々とアクティビストたちとも渡り合えるような気概が無くてどうするんだ、という感じがしています。
─ 株主重視という姿勢を保ちながらも、アクティビスト対策に頭を悩ませている経営者は本当に多いですね。
久保利 ええ。法律というのは、いつの時代も時代遅れになっているところがありますから、その隙を突いて儲けようとする人たちが、どの時代にも一定数いるわけです。そうした人たちと戦っていく経営者が、しっかりしなくてどうするんだと。もっと根性を見せてくれよ、ということを感じます。
バブル崩壊後、〝失われた30年〟と言われる中で、日本は本当にゆでガエル状態になって、基本軸が揺らいでいるというか、だらしない国になってしまった。そういう中で、今の日本はアクティビスト天国とも言われるような状態になっています。そうではなく、まともな企業が存立できるような経営環境をつくっていこうじゃないかと。
そういうことで、上村先生と一緒に株式公開会社とはどうあるべきか、わたしは弁護士として、上村先生は学者の立場から解決策を見出していこうと思っているところです。
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上村 現在の日本は異様なほどにアクティビストが闊歩していますが、数年前には、フランスの議会に「日本はアクティビストの遊び場だ」と書かれるような報告書が提出されるような状況です。モノ言う株主にモノ言う資格が本当にあるのかが、問われていると思います。
わたしが若い頃、日本では総会屋が闊歩していましたが、「総会屋とは何かと外国人に説明することぐらい恥ずかしいことは無い」と河本一郎先生、竹内昭夫先生が言われていましたが、今の状況はアクティビストという名の新型総会屋? が正義を担っているかのように扱われている。
久保利先生はかつて総会屋が跋扈していた頃に、防弾チョッキを着て彼らと対峙されていました。わたしも当時の村上ファンドやライブドアがマスコミに支持されている状況で、彼らの行動はその時点で違法な行為であると強く主張しました。世論は彼らを支持しました。わたしは有為な若者を批判する変な親父扱いされ、自宅に脅迫状のようなものも舞い込みました。
いま、産業界の人々は筋の悪いアクティビストの存在に心底困っています。どう見てもおかしいなと思っても、会社法のテキストには株主価値最大化とか書かれている。経営目的は株主のために経営することだとも言われている。
こうした状況に対して、立ち上がって、正々堂々と反論したいと思っても、これまで通説と言われてきた立場から処方箋が見えない。わたしにはこうした状況は歴史ある日本の法律学がバカにされているという思いが強く、今回、久保利先生と正論を貫こうということで考えが一致したわけです。
─ そもそも、株式会社の経営は本来どうあるべきか。会社経営と株主の関係はどうあるべきかという原点に立ち返っていくべきですね。
上村 日本は長く……。