インフキュリオン社長CEO・丸山弘毅《地域マネー》の仕組みを提供!生産性向上の取り組みとは

「今後もデジタルで決済される世界が広がっていく」─。顧客企業の既存事業に決済技術を提供するインフキュリオン社長CEOの丸山弘毅氏は、こんな見通しを語る。キャッシュレス決済が普及し、人々の買い物も現金を介さないやり取りになっている。丸山氏は冒頭のような世界の到来を見据えつつ、デジタル決済で地方創生や医療機関の生産性向上に寄与する取り組みも進めている。同社が目指す世界とはどのような世界なのか。

 金融以外の事業者に決済機能を

 ─ 金融・決済基盤の開発・提供やコンサルティングを展開していますが、ジェーシービー(JCB)を辞めて起業した背景から聞かせてください。

 丸山 私がJCBに入社した1999年といえば、インターネットが普及し始めた頃に当たります。その頃から電子決済に関わりたいと思っていました。今で言うキャッシュレス決済ですね。

 ネットが95年に登場し、情報がインターネットで流通していくような世界ができつつあったのです。そうすると、情報の次は物販になります。

 まさにEC(電子商取引)が始まりかけていた時代でしたので、当然、対価もデジタルに変わる世の中になるだろうという予測がありましたし、グローバル化の進展も考えると、紙幣でやり取りする時代から変わっていくだろうと。

 そういった未来を迎えるに当たって、電子決済が社会の大きなインフラ変革になるのではないかということから決済業界に興味を持ちました。

 ─ まさにその事業が変貌を遂げようとしているわけですね。創業は2006年でしたね。JCBで学んだものとは。

 丸山 大きく2つあります。1つ目は決済ビジネスの難しさです。システムや法令など複雑なものがたくさんあります。その中で変えていかなければいけない領域を学ばせてもらいました。

 2つ目はJCBで新しい活動をさせてもらえたことです。自分がやるべきだと思ったことはどんどんチャレンジさせてもらえる風土がありました。

 そうした経験から決済業界の知見も蓄積できました。創業した当時はキャッシュレスという表現もあまり使われておらず、おそらく普及率も10%未満だったのではないでしょうか。比較的にお金を持っている社会人の方がクレジットカードで使っているくらいのイメージでしたからね。

 しかし、我々からすると、日常のインフラになっていくという確信がありました。

 ─ そこが起業した動機の1つになったのですね。

 丸山 ええ。デジタル決済を普及させるためには、もっとコストを抑えなくてはなりませんし、決済のプレイヤーも、銀行やカード会社というよりは、日常の消費者と接点がある事業者さんなどがもっと関わっていくべきではないかという広いアイデアを持っていましたね。

 ─ 現在の主力事業の中身はどのようなものなのですか。

 丸山 銀行が提供する決済や後払いなどのサービスを、あらゆる企業が自社サービスの中に組み込むことができるプラットフォームを開発・提供しています。例えば、小売りチェーンが当社のサービスを活用することで、自社のアプリに決済機能を付けることができます。

 そうすると、ユーザーがアプリで商品を購入すれば、支払いもポイント付与も全て自動で終えることができます。お店に商品を取りに行かなくてもいいわけです。

 

 AI同士が買い物する時代へ

 ─ そこでのインフキュリオンの強みとは何ですか。

 丸山 次の時代に向けた決済のインフラを当社が担っていくだけの技術や実績です。新しいプレイヤーや新しいキャッシュレスは当然ですが、今までレガシーな仕組みを使ってきた企業さんも我々のサービスに入れ替えていただけます。

 現在のキャッシュレス比率は6割弱と言われていますが、その中身は大手企業さんが中心で、しかも仕組みが少し古かったりします。

 最新のテクノロジーが、どんどん新しく生まれてきているのですが、それらへの適用に時間がかかっているのです。しかし当社は最新の技術で作っていますので、スピード感を持って新しいサービスを生み出していけます。

 実際に大手企業さんをはじめ、新興のプレイヤーも銀行さんも含めて、当社の仕組みを活用する事例が増えています。

スクリーン

タクシー業界の業務効率化を実現し、乗客の決済体験を向上させるため、タクシーアプリ「GO」を提供するGO株式会社が展開する後部座席タブレットにおいて、インフキュリオンのキャッシュレス決済ソリューション「Anywhere D135」が本格導入されている

 ─ 決済の業界でもクレジットカードや交通系電子マネーやQRコードなど様々な手段が乱立している状況です。決済業界は今後どのような方向に進んでいくと見ていますか。

 丸山 まず1つ目はBtoC(法人対個人)でもBtoB(法人対法人)でもそうなのですが、決済は手段であって目的ではありません。私が当社を創業したときから「決済を軸としたエコシステムをつくる」と言ってきたのは、まさにそのことです。

 そうすると、決済が行われる以前に、そもそも本来の目的である商取引や日常の消費はつながっていて、最後に支払いするという決済が出てくるわけです。

 これが分断されるのではなく、デジタルの力でつながってくると、さらにはその前の工程もつながってきます。そういう意味では、例えば通信会社さんのスマートフォンでお店を調べてクーポンを見て、店頭で買い物をして最後に決済するというのは、まさにお客様の行動の動線に沿っている体験になります。

 ─ 我々の行動の中の一部に決済の要素が含まれていると。

 丸山 はい。それこそ交通事業者さんが交通機関に乗ってもらったお客さんが、その足で買い物をするケースです。これもまさにお客様の行動の動線に沿っているわけです。ですから、行動があって決済がその一部にあるというイメージです。

 これはBtoBでも同じです。商品を製造して卸し、それを納品する過程では、検品されて出荷されれば請求書が発行されて支払うプロセスがあります。その決済がBtoBのプロセスの中に融合されていくと。

 ですから、金融や決済単独というよりも、その上流のプロセスで事業を行っている企業さん自体が決済ビジネスを担っていくという大きなトレンドがあります。  

 ─ 決済も自社のサービスの付加価値を高める1つの要素になるということですね。では、決済にまつわる世界はどのように変わっていくと考えますか。

 丸山 AI(人工知能)が企業間の取引や人の取引に入ってくるでしょう。そうなると、お互いのAIエージェント同士がやり取りをして購買や買い物をするといった「エージェンティックコマース」と言われる世界が当たり前の未来として到来してきます。

 おそらくBtoCでもBtoBでも、AIが関わって買い物をする方向へと進んでいけば、AI同士が正しく買い物ができるかどうか、AIが間違えて購入した場合に誰が責任を持つかという議論になっていきます。

 その際に重要になってくるのが、AI同士の決済におけるルールや制御といった考え方です。

 鹿児島や松山での取り組み

 ─ 自動車業界での自動運転の議論と同じですね。

 丸山 はい。今はクレジットカードを紛失して不正使用されたら補償されるようになっていますが、デジタル決済が進化していくと、ステーブルコイン(価格の安定性を実現するように設計された暗号通貨)や世界各国で議論されている中央銀行発行デジタル通貨(CBDC)といった通貨自体がデジタルで発行管理される世界になります。

 こういったテクノロジーがAI時代にはさらに広がってくるでしょうから、その意味では、決済は今後どんどん上流に紐づいていくと思います。

 AIを用いてデジタルで決済される世界が広がっていきますので、今後ますます大きな変革が起こると共に、日本社会全体の生産性を一気に変えていく時代に入っていくのではないでしょうか。

 ─ このデジタル化の流れを受けて地方創生に絡む取り組みは行っているのですか。

 丸山 自治体や地方の金融機関さん、地方におけるチェーン店さんとご一緒しているケースがあります。中でも自治体が絡むデジタルマネー「地域マネー」に関するニーズが高まっています。

 子育て給付金のような用途が限定されている自治体の給付金を地域の子育てに使ってもらえるような仕組みを当社が提供しています。自治体から給付されたお金が地域の経済に回るようなデジタルの仕組みです。

 他にも高齢化が進む地域では免許返納された方に向けたタクシーやバスが無料になるクーポンを発行するケースもあります。紙のクーポンで展開されている自治体さんが多いのですが、そうすると給付の手間などが大変で、自治体の負担も大きい。受け取った側も銀行に手続きしに行かなければならないケースもあります。

 しかし、それをデジタル化してデジタルマネーとして使うことができれば、自治体の負担も受け取り側の負担も大きく減らすことができます。

 ─ 生産性向上に寄与すると。事例を聞かせてください。

 丸山 例えば鹿児島県の鹿児島銀行さんが中心となって地域で使えるキャッシュレス決済サービス「Payどん」があります。当社はこのアプリにまつわるプラットフォームを提供しています。

 意欲的な鹿児島銀行さんが中心となり、鹿児島にある他の金融機関さんにも、そのインフラを相乗りで提供されています。鹿児島地域の全体の金融機関が鹿児島地域のお店で広く使えるようにしているんです。

 他にも愛媛県の松山市ではバスや路面電車などを運営する伊予鉄道さんで使える交通券の購入や公共施設・店舗などでQRコード決済が可能なスマホ決済プラットフォームを提供しています。

 地域の経済は交通と動きますので、バスや路面電車を乗るときに使うアプリでそのまま買い物もできるようにしています。

 人手がかかる医療機関の業務

 ─ 医療関係でもインフキュリオンのサービスが導入されている事例はあるのですか。

 丸山 あります。病院での支払いです。支払いに関しては、病院側も事務のコストがかかったり、病院によっては人手不足にも直面しています。

 そんな中でも、健康保険証がマイナンバーカードと紐づいていきますので、キャッシュレス決済との相性も良くなります。そこで医療機関向けにキャッシュレス決済のシステムを提供しています。

 また、医療業界では、薬や消耗品がたくさんあります。それに伴って仕入れや卸しといった作業が膨大に発生します。今でも紙での請求書で納品して支払うケースが残っており、アナログ業務のままなのです。

 そういった医療品関係の卸しや医薬品等の卸しから病院への請求・支払いをデジタルに置き換えるサービスを提供しています。納品から請求・決済までをデジタルによって一気通貫で提供できるサービスを目指しています。

 この仕組みが広がりつつあり、医療業界全体の効率化につながるような取り組みに力を入れています。

 ─ 病院全体の7割が赤字と言われていますからね。

 丸山 我々が医療の本業で貢献できることは難しいのですが、医療機関の方々が本業の医療に集中できるような環境整備には貢献することができます。医師や事務員の方々には様々な煩雑な業務があります。

 特に医療行為とは関係のない業務です。また、医療業界に関わる卸しや部品、サプライチェーンの方々にも同じようなアナログの業務がたくさん残っています。

 

 こういった無駄をなくすためにもデジタル決済は有効になります。その意味では、JCBから出発して小さく始めた新しい動きが、次の時代の決済の中心を担えるほどに成長しつつあると感じています。

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