Windows Latestは8月16日(現地時間)、「Ubuntu is growing faster on Windows 11 than on native Linux PCs, says Canonical」において、Windows Subsystem for Linux(WSL)上でLinuxディストリビューション「Ubuntu」を利用するユーザー数が、UbuntuをデスクトップPCに直接導入するユーザー数を超える可能性を伝えた。

これは、The Pragmatic EngineerがCanonicalの技術バイスプレジデント、Jon Seager氏に行ったインタビューで語られたもの。 Seager氏は、WSLのユーザー増加率がデスクトップ版の増加率を大幅に上回っており、数か月以内にユーザー数の入れ替わりが起きるとの予想を述べたという。

  • Canonicalの技術バイスプレジデントを務めるJon Seager氏がWSLのユーザー増加率がデスクトップ版の増加率を大幅に上回っており、数か月以内にユーザー数の入れ替わりが起きるとの予想を示した

    Canonicalの技術バイスプレジデントを務めるJon Seager氏がWSLのユーザー増加率がデスクトップ版の増加率を大幅に上回っており、数か月以内にユーザー数の入れ替わりが起きるとの予想を示した

AI開発現場で広がるWSL版Ubuntu

前述の発言はWSL全体の利用者数が、Linux PCを上回るという意味ではない。UbuntuをWSL上で動かす利用者と、UbuntuをデスクトップPCへ直接導入した利用者の比較だ。AI開発には機械学習が欠かせないが、その開発環境ではLinuxが広く利用されている。

企業はコスト増を望まず、従業員は作業負担の増加を望まないため、双方にとってWSLは魅力的な選択肢になるという構図だ。シンプルなコマンド入力だけでWindows内にLinux環境を構築できるため、開発者はWindowsをデスクトップ環境として維持しながら、UbuntuやLinux向けツールを利用できる。(参考情報:「ファイル システム間での作業 | Microsoft Learn」)。

WindowsとLinux間で容易に情報をやりとりできる点も選ばれる理由とみられる。

WSL強化がユーザー増加を後押し

Microsoftは2026年を通じてWSL強化を推進している。WindowsとLinux間のファイル転送の高速化、ネットワークの強化、セットアッププロセスの改善を約束し、最近ではWSL Containersを公開プレビューとして提供した。これはLinuxコンテナをWindows上で扱う機能で、Docker風のCLI「wslc」を備える。

CanonicalもAI PCを意識した開発を進めている。Seager氏は具体的な取り組みとして、GPU、NPU、DPUへの対応、NVIDIA、AMD、Intelとのハードウェア連携、CPUアーキテクチャーの最適化について説明したという。

さらにUbuntu 26.04 LTSではNVIDIA CUDAとAMD ROCmの双方をすでにネイティブサポートしており、将来的にはモデルと量子化方式を自動選択する「inference snaps(推論スナップ)」や、OSレベルでのエージェント型ワークフローの検討も進めていることが明らかにされた。

WSLが変えるWindowsとLinuxの関係

Windowsユーザーにとって、WSLは魅力的な選択肢の1つと言える。しかしながら、WSLがネイティブLinuxを置き換える存在になったわけではない。GPUを含めたハードウェアの完全制御、Linux中心の環境などを求める場合においては、依然としてネイティブLinuxが優れた選択肢だ。

それでもWindows Latestは、WindowsとLinuxの関係が単純な競合相手から変わりつつあると指摘する。CanonicalにとってWSLはUbuntu利用者を増やす経路であり、MicrosoftにはWindowsを利用する開発者の獲得および維持というメリットをもたらしている。

両者の関係がこのまま進展するかは、WSL強化の取り組み次第だろう。ネイティブLinuxに迫るパフォーマンス、残された課題の解決などが進めば、AI開発基盤としてさらに存在感を高める可能性がある。