アイム・ユニバース社長・藍川眞樹が取り組む「社会課題解決を目指した住宅づくり」の姿とは?

韓国・ヒョンデと次世代住宅モデルづくり

 

 ─ 藍川さんは米経済紙・ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が次世代リーダーを称える「WSJ×Next Era Leaders」に選出されたそうですね。 

 藍川 ええ。この賞は、独自のビジョンを持ち、持続可能な社会の実現や、業界の変革に挑戦する各国のリーダーを選出するものです。当社は住宅の分野で、リゾート地さながらの住環境をつくるだけでなく、防災・災害対策など安心・安全を軸に住宅性能を高め続ける姿勢が、次世代の住環境モデルとして評価されたとお聞きしています。 

 そうして26年5月、ニューヨークで開催されたWSJ主催の国際カンファレンス「THE FUTURE OF EVERYTHING  FESTIVAL」に出席して、スピーチをさせていただきました。 

 ─ 次世代の住環境モデルという意味では、韓国の世界的モビリティ企業・現代自動車の日本法人・Hyundai Mobility Japan(以下、ヒョンデ)と連携して、電気自動車(EV)と住宅を組み合わせたライフスタイルを提案していますね。 

 藍川 25年9月30日に、ヒョンデとMOU(基本合意書)を締結しました。元々、我々はZEH(Net Zero Energy House=ネットゼロエネルギー住宅)をつくってきていましたが、そこにヒョンデとの取り組みがプラスされた形です。 

 ─ 改めて、ヒョンデに着目した理由を聞かせて下さい。 

 藍川 私が自動車やEVの現状を知るためにアメリカのロサンゼルス、サンフランシスコを視察したことがきっかけです。 

 そこで目にしたのはグーグル(アルファベット)の自動運転部門が分社化したウェイモが手掛ける約800台の完全自動運転車が走る姿でした。時代の変化を強く感じましたが、その車両を最も多く提供していたのがジャガーでした。 

 そうして、次に完全自動運転で有望な会社は?と現地の方にお聞きしたところ、ヒョンデの名前が挙がりました。 

 ─ ヒョンデは優れた技術を持って先端研究をしていたと。 

 藍川 そうです。アメリカでそういう世界観に触れた中で、我々も住宅をつくっていく上で、車は切り離せないと考えました。車と家が一緒になることで、さらなる進化を遂げて、次なるステージに向かう可能性があるということを体験したんです。 

 完全自動運転が実現すると、第2のリビングのように、そこで家族のコミュニケーションが生まれる時代が訪れることも予測できましたし、家でもロボットが活動して人間の暮らしを助ける時代にもなってきます。そのためにどこと組むべきかを考えて、ヒョンデとの連携をスタートしました。 

 ─ ヒョンデの車の優れている部分はどこでしたか。 

 藍川 まずエネルギーの部分です。車にコンセントを差したら、すぐに電子レンジや冷蔵庫を使うことができます。ですから、キャンプ地などに車を1台持っていけば、車が「発電所」になるわけです。 

 そのためのシステムが「V2H」(Vehicle to Home)で、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)のバッテリーに貯めた電力を家庭で利用するものです。このシステムで家で貯めた電気をEVに送って充電するだけでなく、EVの電気を家に戻すこともできます。 

 ヒョンデの車は、単に車としてだけでなく、家の命をつなぐ電力という位置づけになります。有事の際も電力を切らしにくいため、生活を継続させて、家族の命をつなげることができます。 

 ─ 日本は災害が多いですが、電力供給が遮断されると生活が大変なことになりますね。 

 藍川 私自身、東日本大震災の時に、その大変さを実感しました。災害時にはマンションの高層階を行き来するのは難しいですから、選択肢としては戸建てが有力になります。 

 日本は地震大国ですから、必ずまた地震が起きるでしょう。その時に東日本大震災を絶対に忘れてはいけません。コロナ禍もそうでしたが、何か課題があるために、その課題を解決する住宅づくりをしてきました。 

 

全棟に「制震装置」を導入

 

 ─ 地震への対策ではどういう取り組みをしていますか。 

 藍川 東日本大震災を契機に11年以降「制震装置」を導入し始め、16年以降は全棟標準搭載を実現しました。メーカーで実証実験をした際には、震度7を約70%軽減するという結果が出ています。 

 建物自体の耐震等級は3を取っていますが、この等級で制震装置を導入しているのは、実は画期的なことなんです。マンションの場合、構造や評価基準の理由から、制震装置を導入しても耐震等級は1に留まるのが一般的です。それが木造の戸建て住宅ならば、躯体の筋交いを制震装置に入れ替えることで、高い耐震等級が実現できるのです。 

 ─ 実際に住んだ方からはどんな声が出ていますか。 

 藍川 「アイム・ユニバースの住宅に住んで、地震が怖くなくなった」といったお声をいただいています。 

 我々の住宅で他にも大事なのが外壁材です。当社ではパワーボードという水に浮くくらい軽いコンクリート材を入れていますが、地震に強く、火災の際に燃えにくいという特徴があります。例えば、自分たちが住んでいる家が燃えても、被害が広がらないということを考えながらつくっています。 

 この外壁材は旭化成建材さんの製品で、旭化成ホームズさんも採用されていますが、15年に鬼怒川が氾濫した際に、ヘーベルハウスの住宅だけが流されなかったという事例を見て、私も「これだ」と思ったのです。 

 もう1つは、万が一川の氾濫が起きた時、戸建て住宅の屋根に登ろうとすることもあると思いますが、我々の住宅は屋上テラスがありますので、最悪は屋上に逃げればヘリに来てもらったり、水位が上がった時にはボートがあれば逃げられます。 

 ─ 戸建て住宅に屋上テラスを設けた理由は何でしたか。 

 藍川 我々は1都3県、16号線の内側をメインに住宅をつくっていますが、土地と建物が30坪で、庭がないケースが多いんです。ある時、完成した住宅を見に行った時に、お子さんたちが家の前の道路でビニールプールに入っていて、車が来た時に「危ないよ」と声をかけたことがあったんです。 

 その時に住宅メーカーとして、子供たちの遊び場がつくれないかと考えて屋上テラスをつくろうと考えたのです。懸念材料である雨漏りについては防水はもちろんのこと、メンテナンスについて10年間、当社が保証することにしました。 

 ─ 住宅を長持ちさせるためにメンテナンスが大事になりますね。 

 藍川 私は「長寿命住宅普及協会」という団体の副会長を務めているのですが、この協会は「ベストバリューホーム」という仕組みを提唱しています。 

 日本の住宅は5年おきに価値が下がり、20年後には価値がゼロになるのが一般的です。それに対して我々は、戸建て住宅は一生に一度の買い物であり、家族のコミュニケーションが生まれ、それを後世につなぐというのが本来あるべき姿と考えています。 

 そのために保険会社と連携して、建物価値を「見える化」し、家を売却する際に価値が低く出た場合に、その差額を補償する、定期的な点検とメンテナンスで価値を保証するというのが、この協会の取り組みです。 

 この協会に加盟している企業は、どの会社も住宅に対する本気度が高いんです。住宅は大手だからいいのではなく、実際に家を建てる職人さんと一緒に、どれだけその住宅に本気で向き合えるかということが重要だと思っています。

沖縄県を拠点にアジアを睨む

 

 ─ 住宅を切り口に社会課題を解決していくと。 

 藍川 そうです。例えば昨今、強盗被害が増えています。それを防ぐことができないかということも考えました。 

 その入口になったのが11年前の沖縄県への進出です。沖縄は台風の被害が多く、飛んできたものが窓ガラスを破損するケースがあります。 

 そこで硝子に着目して「安全合わせガラス」に出会いました。ガラスとガラスの間に樹脂を挟むことで、割れても樹脂で止まるものです。これを沖縄はもちろん、当社の新築物件の開口部が広い箇所には全棟採用しています。バールやハンマーでも割れませんから、強盗対策にもなります。 

 ─ 御社が元々、沖縄県に進出した動機は何でしたか。 

 藍川 沖縄県は木造住宅のシェアが低い県でした。古民家は木造なのですが、戦後アメリカの占領下にあった時期にコンクリート文化が入ってきたのです。 

 一般的には台風被害を考えてコンクリート造が多いと思われているかもしれませんが、我々が進出して以降も、台風による木造住宅の倒壊などは聞いたことがありません。木造住宅の見直しは着実に進み、他社も進出してきたことで沖縄県の住宅に占める木造のシェアも42~49%程度にまで伸びているんです。 

 その中で、我々が沖縄に進出したのはアジアを視野に入れていたからです。沖縄県から香港、台湾に行くのは東京に行くよりも近いんです。沖縄県をハブにしてアジアに出た方がいいと。我々は沖縄県を拠点に、東南アジアを含めたアジア戦略を考えているのです。 

 ─ グローバルに事業を広げていこうとしていると。 

 藍川 ええ。先程お話したWSJのカンファレンスのスピーチでも、日本の価値を世界に発信し、アメリカのダイナミズムと掛け合わせた新たな価値創造に挑戦していくというお話をさせていただきました。 

 同時に忘れてはならないのは、家は人の命を守り、人の財産を守るものでなければならないということです。だからこそ、時代のニーズに即しながら、課題を解決する住宅を生み出すべく、取り組んでいるのです。 

 日本の住宅は長年、耐震、省エネに関して世界の中でも優れた性能を持つことで評価されてきました。ただ、そこには単に技術だけでなく、人の命、暮らしを守るという思想があります。 

 ─ 社会課題の解決に向けては、常に技術を進化させ続けることも大事になりますね。 

 藍川 例えば、先程お話した家とEVをつなぐ「V2H」ですが、今後注目されるのは「V2G(Vehicle to Grid)といって、EVのバッテリーに蓄えた電気を、住宅だけでなく地域の電力網(グリッド)に双方向に供給する技術です。 

 今、我々はヒョンデさんと、V2Gについても対話をしています。V2Gを取り入れた住宅づくりをすれば、住んだ方に売電収入や、補助金も入ってきます。加えて言えば、今後は住宅メーカーへの補助も検討していただき、住宅づくりを促進させていくことも大事ではないかと考えています。 

 

家族が安心して生活できる家づくりを

 

 ─ 改めて、藍川さんが不動産の世界に入った原点を聞かせて下さい。 

 藍川 子供の頃の思い出が強いのではないかと感じています。7歳の時に両親が離婚し、横浜市磯子から母方の祖母が住む東京都練馬区に転居しました。 

 横浜の家は大きかったのですが、練馬の祖父母宅は普通の戸建てでした。その家では祖父母がお風呂に外付けのバブルバスを付けて、私たち兄弟が楽しめるように泡を出してくれたりしたという思い出があります。 

 ─ 今も思い出に残る家での経験だったわけですね。 

 藍川 そうです。子供のお風呂は体を洗って短時間で出ることが多いですが、そうした楽しめる工夫をしてくれたことで、今でも思い出として残っているわけです。私はそこで、家は大きい、綺麗であればいいというものではなく、家族みんなが安心、安全に生活でき、仲良くコミュニケーションを築いていける場所でなければいけない、そのためには建物が壊れてはいけないという思いを強く持ったことが原点になっています。 

 不動産業界に入ってからも、マンションの販売代理をした経験から、自分が理想とする家をお客様に提供するためにメーカーにならなければいけないという思いを持って独立し、現在に至ります。 

 今後も社会課題を解決しながら、世のため人のためになるものを、世の中に創造していきたいと思います。