
「当社は独立系という立場で、システム開発という観点でお客様の課題をサポートする事業に注力しています」─ニーズウェル社長の松岡元氏はこう話す。金融系システムに強みを持ち、今はAIやセキュリティなど、多くの企業が課題としている分野に注力。企業として進むべき方向性を「ソリューションプロバイダー」としている。松岡氏が考える、今後のニーズウェルの姿とは─。
他社と「競合」ではなく「協業」していく
─ ニーズウェルは独立系のシステム開発会社として歩んできていますが、松岡さんは2025年7月に社長に就任して1年が経ちますが、どういう思いを持っていますか。
松岡 私は元々、エンジニアの出身ですが、役員として経営に携わり、昨年社長に就任したところで視野が変わったと感じています。
そして私は06年にニーズウェルに入社して20年が経ちますが、改めて自分がこの会社をどのように変えていけるかという期待感も持っています。この1年は自分がやりたいことを整理する期間だったと思います。
─ では改めて、ニーズウェルという会社をどういう会社にしたいと考えていますか。
松岡 元々、当社はシステム開発会社、SIer(システムインテグレーター)として幅広い分野での一括受託案件をメインに仕事をしてきました。
そして今は「ソリューションプロバイダー」というキーワードを掲げ、システム開発の事業基盤の上に、高付加価値を提供する企業を目指し、業務遂行しています。当社は独立系という立場で、システム開発という観点でお客様の課題解決、伴走型支援に注力しています。
今後はAI(人工知能)やセキュリティ、DXといった総合的な課題に対して、自社ソリューションだけでなく、他社が持っている強み、ソリューションも組み合わせて顧客課題解決に取り組み、より高付加価値を創出し、お客様の経営革新に直結するサービスを提供することを目指し、「ソリューションプロバイダー」という言葉で表現しています。
事業の基盤であり、技術のベースには金融系システム開発の強みがありますから、そこにトレンド技術などを組み合わせて、安定したサービスを提供できる企業を目指しています。
─ ライバルは多いわけですね。
松岡 企業規模でいうと、当社は売上高で100億円に到達したところですが、100億円から500億円規模のSIerは上場、非上場問わず多数いらっしゃいます。
これらの同業の企業様と「競合」ではなく「協業」して、お客様の課題を解決するために連携していくという考え方で事業の幅を広げているところです。
─ 協業、連携していく時には自らに強さがなければいけませんが、ニーズウェルには金融系という強みがあると。
松岡 そうです。金融系システム開発の強みをベースに数多くのシステム開発実績、さらに、トレンドであるAI事業は8年前から取り組みを進めてきました。
特にデータ分析、データのクレンジングなど、お客様のデータを活用した専用AIモデルを構築するソリューションは当社の特徴となっており、今、ご評価いただいています。
どういった人材が成長しているのか?
─ IT業界は人手不足で人材獲得競争が激しいと言われますが、どう感じていますか。
松岡 エンジニア不足は顕著な課題となっています。AIの普及でエンジニアの仕事がなくなるのでは?と言われることもありますが、私はAIが浸透すればするほど、エンジニアの存在意義が強くなるのではないかと思っています。
AIを扱うのは人であるべきですし、その手綱を握れるのはエンジニアであると思っていますから、エンジニアの確保、AIを含めた総合的なIT技術を持ったエンジニアの育成は、引き続き強化していきます。
エンジニアが育つ環境も企業価値、魅力になっていくと思いますから、目指していきます。
─ 松岡さんから見て、伸びている人材はどんなタイプですか。
松岡 まずエンジニアとして伸びていく上で、ITに興味があることが大前提です。その上で、パソコンをはじめ様々なIT、AIに好奇心を持って積極的に触れ、理解を深めていく人が伸びていくと思います。
また、コミュニケーション力も重要なポイントと考えます。エンジニアというとパソコンの前で黙々とプログラムを組んでいるイメージがありますが、実際はそうではありません。
システム開発の全量を100とすると、プログラミングをする期間は20もありません。どんなシステムをつくるかを設計し、考える期間、さらに検証する期間が、割合としては多いんです。
─ 対話が大事になってくると。
松岡 そうです。システム開発の難しいところは、仕様や設計をどれだけ詰めても、実際に画面が表示され、システムを動かしてみるまでは、お客様もエンジニア本人も、完成形のイメージを完全に共有できないことです。
そのイメージを事前にどれだけお客様含めて正確に共有できるか、それを説明できる人は成長も早いのではないかと思います。
─ 金融系のシステムの強さは信用につながりますね。
松岡 ええ。生命保険会社様、損害保険会社様向けのシステム開発実績、業務ノウハウは当社の強みとなります。中でも大手生命保険様との直接お取引が大きな柱となっています。
また、メガバンク様の案件などは、一部直接お取引で対応させていただいているもの以外に、他の大手SIer様と協業して参画する商流もあります。
─ システム開発の力に加えて、「ソリューションプロバイダー」という概念を掲げたことが非常に大きかったということが言えそうですね。
松岡 当社には私の前任の船津(浩三氏)の教えもあって、やはりシステム開発だけではなく、ソリューションをつくっていく必要があるという考えがあります。
エンジニアの人数に依存しない事業拡大を実現していこうというコンセプトがあり、ソリューション開発、展開を推進しています。その路線は間違っていませんでしたし、今につながっていると思っています。
─ 船津さんを先輩経営者としてどう見ていますか。
松岡 時には厳しい人ですし、信念を曲げないことを勉強させていただきました。
─ 今、社員に対してはどのようなメッセージを伝えていますか。
松岡 先ほどお話した「ソリューションプロバイダー」への転換を進めていく、新しいことに挑戦し、最先端の立ち位置になっていこうということを伝え続けています。
そして企業文化として常に言っているのは、「挨拶」と「整理整頓」を大事にしようということです。
私自身、挨拶は仕事において基本であり、重要なポイントだと考えています。挨拶ができない人は信頼関係が構築できず、延いては、企業価値を下げることにもつながると考えています。
若手時代に大手通信キャリア様の研究所へ参画させていただいた際、研究室の中で挨拶、礼儀を重んじる文化が浸透していました。その中ではコミュニケーションが盛んで会話、相談、議論がとてもしやすかった環境であったことを強く覚えています。挨拶の重要性を強く実感した経験でした。
─ 人として基本的なことを大事にするのが大事だと。
松岡 そうです。整理整頓も、物だけではなく、情報や自分のタスクも含めてのことです。それが生産性を向上させることにもつながると思います。
そうした企業文化が根底になければ、事業拡大もしていけないと考えています。「幹」になる部分を押さえることが大事だということで、全員が必ず守ることができるルールとして挨拶と整理整頓を周知しています。
成長期にある会社に入社して
─ ところで松岡さんは、大学を卒業して通信設備や関連するソフトウェア開発などを手掛ける独立系SIerに入社していますね。この動機は?
松岡 私は元々理系で、大学では工学部を卒業しました。当時、大学には新たにメディア系学科が設置され、我々が受ける講義にも情報系のカリキュラムが増えました。
大学4年次に所属した研究室でプログラミングを使ってシミュレーションをするということもしていましたから、そこからソフトウェア関連の会社に入ろうと考えて志望しました。
─ 最初に手掛けた仕事は何でしたか。
松岡 大手メーカーの公共系案件を扱う部署で、トンネルの防災システム開発プロジェクトに配属されました。そこでは、主にシステムテストを担当しました。
山の中にあるトンネルで、夜中に監視室で、例えば煙を検知したらきちんと発報されるかといったテストをしていましたね。
他には、ウェブ系の企業様向けのプロジェクトで、携帯電話(当時はガラケー)で空メールを送ると、そのサービスのURLが返ってくるという仕組みのシステム運用業務に携わりました。
その後に、転職サービス会社から紹介してもらったのがニーズウェルでした。
─ どういう印象を持ちましたか。
松岡 当時のニーズウェルは全社員で100名程度の規模で、いわゆるSES(システムエンジニアリングサービス=ITエンジニアの技術力や労働力を提供するサービス)を中心に事業を展開していました。
同時に、創業社長がシステム開発事業とは別に経営コンサルティングを専門に手掛けられた実績があり、コンサルティング事業部があるとのお話を会社説明会で聞き、素晴らしい仕事をされている方なのだと感じたことを覚えています。
入社してから全社員に向けて話す内容を聞いていても、非常に説得力があり、自分の活力になっていたことを覚えています。
─ 当時からすでに、コンサルティングという概念が身近にあったんですね。
松岡 そうなんです。ただ、私はコンサル事業部ではなくシステム部に配属になりました。私は06年に入社しましたが、当時の会社は株式上場を目指して頑張ろうという雰囲気でした。
しかし、リーマンショックや東日本大震災などもあり、実際にジャスダックに上場したのは17年9月のことです。年を追うごとに会社が大きくなっていく様子を見ることができたのは、今振り返って非常にいい経験になりました。
転機となった2つの経験
─ 仕事をする中で転機になったと感じる出来事はありますか。
松岡 大きく2つありました。1つは先程お話した大手通信キャリア様の研究所への参画です。まだ世に出ていない技術やサービスを研究しており、そこでプログラミングを深掘りして勉強する時間ができたことで、エンジニアとして様々なことを考えるきっかけになりました。
ちょうど、いわゆる「ガラケー」から「スマートフォン」に切り替わる時期でした。私が所属していた研究室はガラケーで高解像度医療画像を素早く表示させることに特化したアプリを開発していました。
この画像処理関連の技術が当時先端技術で、事例もなかったため、非常に大変でした。画像の規格の論文を読み込むところから始めて、周囲の方々と議論をしたり、教えていただきながら作ったのが非常にいい経験になりました。
その数年はかなり勉強しましたし、エンジニアとして成長できた期間だったと感じています。
─ 先端技術に触れる機会だったわけですね。
松岡 そうです。もう1つの転機が別の大手通信キャリア様の基幹システムの更改プロジェクトでリーダー、プロジェクトマネージャーを務めたことです。最初の通信キャリア様での経験が技術だとすると、ここでの経験はマネジメントでした。
最初は基幹システムの横で動く小さなツールの開発案件を一括で請けさせていただいたのですが、そこで見積もりをし、提案書を書くということを初めて経験したんです。それをお客様が真摯に聞いて下さって、案件が成功しました。
そこから基幹システムの開発とテスト、さらに別の機能のプロジェクトと大きく2つのプロジェクトで100人月規模まで拡大しました。
当時の当社のフロアの一部をお客様専用ニアショア拠点として整備し、専用ネットワーク回線の構築やプロジェクト専用ルームの構築などを進めプロジェクトの立ち上げ、リーダーを務めたことは、マネジメントとしては大きな経験だったと感じています。
─ その経験が、ニーズウェルの役員、社長として経営に携わる時に生きたと。
松岡 ええ。実際、そのプロジェクトの後、ニーズウェルではグループマネージャーなど、管理職に就き、組織マネジメントの経験を積む方向になっていきました。
特に部長、事業部長のレイヤーまで来ると、経営的な目線で、自分の部門の売り上げや利益をしっかり見る習慣がついていきました。
その意味では、過去のプロジェクトマネージャー経験から自然な流れで、視点を経営の方に変えることができたことも、私にとっては転機だったと感じています。