レッドハットは2026年度の事業戦略説明会を開催し、「AIネイティブな日本を共に創る」を新たなスローガンに掲げた。AIと協働することを前提とした「AIネイティブ」時代の到来を見据え、企業の組織改革やIT基盤の変革を支援する方針を示した。

代表取締役社長の三浦美穂氏は、2025年度の事業ハイライトについて、グローバル売上高が前年比12.9%増となり、AIやハイブリッドクラウド関連事業が成長を牽引したと説明した。OpenShift VirtualizationやAnsible、AI関連事業も好調だったという。

  • レッドハット 代表取締役社長 三浦美穂氏

    レッドハット 代表取締役社長 三浦美穂氏

AIネイティブ時代を見据えた2026年度戦略

昨年度は「オープンソースがつなぐ『時代の摩擦』」を戦略に据え、「仮想化クラウド、AIをプラットフォームで連続して届けることを目指していた」という。

しかし、AIネイティブへの移行が予想以上のスピードで進んだことから、今年は「『AIネイティブ』な日本を共に創る」を掲げ、顧客やパートナー企業とともにAIネイティブへの取り組みを進める。

三浦氏は、AIネイティブな時代について次のように説明した。

「今まではクラウドネイティブな時代だった。この時代では、人間がコントロールを握って、クラウドをビジネスモデルの成長に役立てていた。しかし、AIネイティブの時代は違う。人間がコントロールを司ることはできず、AIと一緒に生きることになる」

同氏は、AIの進化によって運用や開発、資産管理など、企業のビジネスモデルそのものが変化しているとの認識を示した。

AIネイティブ時代に求められる3つの変化

三浦氏は、AIネイティブがIT環境に対し、3つの影響を与えると指摘した。

1つ目の影響は「常にシステムの更新が必要なこと」だ。これまで、システムは一度作ったら維持すればよかったが、数カ月単位で切り替えが必要なアーキテクチャに切り替わるという。

2つ目は「エンジニアとAIの協働」だ。システムを継続的に更新する時代には、人材不足への対応も課題となる。そのため、AIを活用しながら効率的にシステムを保守・運用していく必要があるという。

3つ目の影響は「AIによる意思決定の自律化」だ。三浦氏は、「これまでのように人間の意思に基づいてAIを使うのではなく、AIが自律的に動くようになる」と説明した。

3つの柱で企業のAIネイティブ化を支援

三浦氏は「AIに任せる前に、AIに任せられる構造をつくる必要がある」と述べ、AIネイティブ時代に向けた組織改革を支援する3つの柱を打ち出した。

  • 3つの柱で企業のAIネイティブ化を支援

    3つの柱で企業のAIネイティブ化を支援

プラットフォームの手の内化

急な外部要因の変化にも耐えらえるよう、自社のIT基盤をブラックボックスにすることなく、自社でコントロールして自由に変更・拡張できる状態をつくる。

そのために、「アーキテクチャの標準化」「既存アセットの統合管理」「内製スキルの獲得」に取り組む。

この取り組みを支援する製品が「Red Hat Advanced Developer Suite」となる。同製品は、属人化を排除するゴールデンパスを整備し、ガードレールを構築する。

AIと協創する開発体験

AIを活用した開発が普及する中、開発の各フェーズで高速性が求められるようになる。同社としては、「高速プロトタイピング」「事前検証の開発スキーム」「高速フィードバック」に取り組む。

これらをサポートする製品が「The Next Generation Labs」だ。プロトタイプ開発を1時間で実現し、AIを活用してアイデアを高速に検証できるという。

信頼のあるAI実行基盤

AIを利用する上で避けられないのがセキュリティの確保、信頼性の確立だ。

同社は、データの漏洩、AIの信憑性、コスト高騰といったリスクを制御して、安心してAIシステムの稼働を続けられる実行基盤を整備する。

具体的には、既存システムの脆弱性制御、レジリエンスの高い自律型運用体制、AI開発ライフサイクルの透明化に取り組む。これらを支援する製品が「Red Hat Enterprise Linux Long-Life Add-on」「Red Hat AI Factory with NVIDIA」となる。

三浦氏は、「企業にとってAIネイティブは必須の生存戦略となるが、脆弱性を悪用する勢力に対抗する体力も求められる」と述べた。

レッドハットは2030年までのロードマップも示し、2026年の技術的負債の解消から、2030年のAI共創型エコシステムの確立までを見据えた戦略を説明した。三浦氏は、AIとともに生きる時代に向け、顧客やパートナーと伴走していく考えを示した。