小野木重弥・大商金山牧場代表取締役の 「人生の転機」【父の夢 自社農場で養豚事業スタート】

豚の生産・飼育から量販店向けのパック詰め、飲食店などへの卸売業務まで食肉の一貫体制を敷いている当社は、1979年に山形県で食肉卸の「肉の大商」として父が創業。当時から安定した食肉の供給のための養豚事業は父の夢でした。何カ所もあった候補地は条件が合わず、実現が危ぶまれた後、県内金山町が候補地に浮上すると、父は私をプロジェクトのリーダーに任命したのです。

 実は、私はコスト面などを懸念し、養豚事業に反対でしたが、立場上、本腰を入れざるをえません。住民説明会などで事業のメリットをご理解いただけるよう、2年以上にわたり誠心誠意取り組みました。やがて自分が反対していたことを忘れ、この事業を成功させたいと思うように。最終的に同意をいただき、調印式を迎えたときは感無量でした。

 2008年、敷地面積6万㎡の自社農場「米の娘ファーム」がスタート、自社ブランド豚「米の娘ぶた」を誕生させました。地元農家さんらが生産した飼料用米に乳製品を作る際にできるホエーを食べて育った豚で、肉質がやわらかく、脂身があっさりと甘い、栄養たっぷりなお肉です。当社の販売ネットワークで量販店様からご注文をいただけるようになりました。9年に私が社長になり、10年には食肉産業展銘柄ポーク好感度コンテストで最優秀賞、13年には同コンテスト過去10年の最優秀銘柄豚から選ばれるグランドチャンピオン大会で最高賞も受賞しました。

 農場は飼料コストを抑える設備のリキッドフィーディングや、徹底した防疫対策など最高の設備です。環境に最大限配慮し、豚の糞尿の堆肥化と地元農地への還元▽食品ロス削減のためパン工場から出るパンの耳の飼料化▽地域の特性を生かした風力発電、太陽光発電▽豚糞と食品廃棄物を活用した〝循環型バイオガス発電〟─などを実施。こうした循環型農業、サステナブルの取り組みが25年、食品産業優良企業等表彰の食品産業部門「農林水産大臣賞」を受賞しました。

 農場スタート時に地元から採用したメンバーは、今、場長、副場長など責任者として活躍。豚肉と地元特産のニラを使い、製造・販売している「米の娘餃子」は、米の娘ぶたとともにふるさと納税の返礼品として人気です。地域貢献とともに資本業務提携やDXなど、会社の持続可能性も追求しています。そのためにも金山町との交渉で学んだ、誠心誠意ことに当たれば思いは通じるという姿勢を大事に取り組んでいきたいです。

山形県北東部に位置する自然豊かな金山町で2008年に誕生した「米の娘ファーム」