【 経済産業省 】戦闘終結に向けて合意も海峡封鎖の懸念拭えず

米国とイランは6月中旬、戦闘終結に関する合意の覚書を交わしたと発表した。覚書にはホルムズ海峡の60日間開放が盛り込まれており、原油調達の正常化に期待が高まる。しかし、同海峡を交渉の道具に使ったイランが再び封鎖を持ち出す懸念は拭えず、日本政府は今後も調達多角化を進めざるを得ない状況だ。

「世界の船よ、エンジンを動かせ。石油を流せ」。米国のトランプ大統領は、SNSへの投稿でイランとの合意を明らかにした。高市早苗首相もこれを受け、SNSで「事態収束に向けた大きな一歩だ」と歓迎の意向を示した。

 覚書には、ホルムズ海峡を実質封鎖していたイランが、船舶の安全航行に向けた措置を60日間講じることが盛り込まれた。その後、日本の船舶1隻が海峡を無事通過。この船には、残った湾内船舶の中で日本人乗組員が唯一乗船していた。米国とイランは覚書を踏まえて21日から最終合意に向けた協議を始めたが、イランが前日にホルムズ海峡の封鎖を宣言するなど予断を許さない状況。正常化には時間がかかりそうだ。

 正常化しても、原油輸入の9割超を中東に依存していた過去の状況に戻るとの見方は少ない。イランは今回、ホルムズ海峡封鎖の有効性を認識し、産業界からは「パンドラの箱を開けた」との声も。再び封鎖に転じるリスクを考慮すれば、中東依存度は下げざるを得ない。

 日本は足元で、原油の代替調達を進め、7月に米国産の輸入量を前年比10倍以上に増やせる見通しだ。他にもロシアやアゼルバイジャン、南スーダン、エクアドルからも調達している。輸入できなくなったホルムズ海峡経由の原油を完全に穴埋めできる。

 ホルムズ海峡の開放によって、中東産油国との従来の契約に基づく原油が到着すれば余剰が生じることになる。経済産業省は「代替調達の手を緩めれば、再び封鎖された時に戻せなくなる。手綱の絞り具合が難しい」(幹部)と指摘。余剰が生じた場合の対策を検討している。

【 イラン攻撃による原油高騰の余波 】第一ライフ資産運用経済研究所首席エコノミスト・熊野 英生