自利利他 【 私の雑記帳 】

稲盛和夫さんの生き方

 

 経済リーダーの使命と役割とは何かを考えた時に思い出すのは、京セラ創業者の稲盛和夫さん(1932―2022)である。 

 1932(昭和7年)1月生まれの稲盛さんは、青少年期に戦争、終戦、敗戦からの日本復興を体験。裕福な家庭に育ったわけではなく、学業でも苦労して鹿児島大学を卒業した後、京都のセラミックメーカーに就職。業績不振で給料の支払いも遅れるような環境で、研究開発に打ち込まれた。 

 1959年(昭和34年)、27歳の若さで独立し、京都セラミック(現京セラ)を起業。この無名の青年に、会社設立資金を私財で提供する経営者がいたということ。 

 これからはコンピューターの時代が到来するという兆しの中で、半導体の素材となるセラミックの可能性を信じた社会意識の高い熟年の経営者たちが、若き稲盛青年のために出資してくれたからこそ、今日の京セラがある。 

 今でいうベンチャーキャピタルである。戦後10余年の時に、こうした支援者がいたということ。時代は違っても、社会に役立つ事に全力を尽くす者を支えようという善意は必ず存在する。こうした善意で人と人はつながっていく。

 

『自利利他』の生き方 

 

『利他の心』─。平たく言えば、世のため、人のためになる生き方である。 

 仏教用語から来た言葉だとされるが、稲盛さんは自らの経営の基本軸に、この『利他の心』を取り入れてこられた。 

『利他の心』で行動していると、回り巡って、結果的に自らが社会と生きていることに気付くし、自分にも善い事があるということ。 

 ただ、『利他の心』だけを強調し過ぎると、自分はどうなってもいいのか─といった声も出てくる。決して、自らを犠牲にして、というものではなく、自分を利かす上で、『利他の心』が大事ということである。 

 そこで、稲盛さんも最後は、『自利利他』と言っておられた。つまり、自らを活かし、他者のためにもなる生き方をするという所に帰着した稲盛さんの生き方ではなかったかと思う。 

 人は、一人で生きていくことはできない。人と人とのつながり、関係性の中で生きていく上で、この『自利利他』が大事なのではないかと思う。