【 消費者はどこまで 「値上げに慣れた」のか? 】 マーケットコンシェルジュ代表・上野泰也

くふう生活者総合研究所が発表した「値上げに関する意識調査」2026年5月調査によると、値上げに慣れた感覚についての回答分布は、「とてもある」が17.8%、「ややある」が過半数の56.4%、「あまりない」が18.8%、「全くない」が7.0%になった。 

 7割を超える回答者が、値上げに慣れてしまった感覚があると回答した。「物価上昇が続く中で、値上げを生活の一部として受け入れざるを得ない状況にあることが分かる」と、発表元は解説した。 

 そして、物価上昇が始まった2022年頃と比較した買い物の際の行動・感情の変化(複数回答)では、「『何もかも値上げしているから仕方ない』と諦めるようになった」が49.5%で最も多く、「あらゆる物の価格がどんどん上がる状況に疲れた」(42.0%)、「10円20円程度など少々の値上げに驚かなくなった」(36.2%)、「欲しいものを我慢するのが当たり前となった」(31.5%)などが続いた。 

 物価高が長引く中でのこうした消費者のマインドの変化を、どうとらえるべきか。 

「賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズム」の定着を目指している日銀としては、デフレ期に目立っていた消費者の値上げ忌避感が薄れてきたことは、ポジティブと受け止めるだろう。 

 ただし、生産性向上は後回しにした、官製春闘を繰り返しながらのやや強引な賃上げにもかかわらず、プラスの実質賃金が定着していない現実は重い。 

 また、7割超が回答した「値上げに慣れた感覚」は、原油高や円安などの供給ショックによる値上げが終わらずに毎年続いていることに対する「諦め」「疲れ」が中心であり、明るい話では全くない。「我慢」という形で、消費行動を抑制させる部分もある。 

 中東情勢の混迷が長引く中、石油関連を原動力とする物価高の新たな波が、年後半に押し寄せようとしている。帝国データバンクによると、6月1日までの集計で、今年の飲食料品の値上げ品目数累計は1万1157品目に及んでおり、5年連続の1万品目超えが確実な情勢。年間では1.5~2万品目台への到達も想定されるという。 

 日銀は、企業の賃金・価格設定姿勢に変化が見られており、コスト高を販売価格に転嫁する傾向は以前よりも強まっていると、繰り返し強調している。物価の上振れリスクが存在することは、追加利上げの必要性につながる。 

 しかし筆者は、企業側の値上げ姿勢のみをウォッチしていくのは、妥当ではないと考えている。買うかどうかを判断する消費者の側がそうした値上げをどこまで受容するかが、より重要な着眼点である。値上げが発表されても結局定着しないケースは、今後も十分あり得る。年後半の消費者の動きを、じっくり見ていきたい。