米Anthropicは6月30日(現地時間)、同社の最上位の大規模言語モデル(LLM)「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」に課されていた米政府の輸出規制が解除されたと発表した。米政府の承認を受けて6月29日にMythos 5の一部の米国組織向けアクセスを再開したのに続いて、7月1日からFable 5の提供を再開する。一方、有料プラン利用者向けに期間限定で設けられたFable 5の利用枠が当初より厳しくなっており、ユーザーコミュニティでは失望の声も出ている。

Fable 5とMythos 5は、6月9日に発表されたMythos級の高性能モデルで、同一の基盤モデルを共有している。Fable 5は一般提供向けに強力な安全対策を施したモデルであり、Mythos 5はサイバーセキュリティ防御用途で、信頼できる一部のパートナー組織に限定して提供されるモデルである。

提供開始から3日後の6月12日、米政府はFable 5とMythos 5を輸出管理の対象に追加した。これにより、所在地が米国内か国外かを問わず、米国籍を持たない利用者への提供が制限されることになった。Anthropicは、リアルタイムで国籍を確実に確認する手段がないとして、全利用者への提供を一時停止する対応をとった。

規制の発端は、Amazonの研究者がFable 5の安全対策を回避し、複数のソフトウェア脆弱性を特定させることに成功したとする報告だった。Anthropicは政府やAmazonと協議した結果、Claude Opus 4.8やGPT-5.5、Kimi K2.7を含む他の主要モデルでも同様の脆弱性特定が可能であったことを確認したと説明している。

安全対策強化で誤検知が増加する可能性も

対策としてAnthropicは、報告された回避手法を検知・遮断する改良版の安全分類器を導入した。これにより、該当する手法は99%以上のケースで遮断されるという。米商務省傘下のCenter for AI Standards and Innovation(CAISI)も、新旧の安全対策を検証し、「極めて強固」と評価したとしている。ただし、分類器の導入により、通常のコーディングやデバッグなど無害な作業で誤検知が増える可能性があることをAnthropicは認めている。ブロックされたリクエストは、ユーザーに通知された上でOpus 4.8に送られる。

Mythos 5については、米政府が6月26日に承認したことを受け、一部の米国組織向けのアクセスが再開されていた。Anthropicは今後、米政府と連携しながら、Project Glasswingに参加する国内外のパートナーへアクセスを拡大する方針である。

有料プラン枠でのFable 5使用は7月7日まで

Fable 5は7月1日から、Claude Platform、Claude.ai、Claude Code、Claude Coworkを通じて世界のユーザーに提供される。Claude Pro、Max、Team、一部のEnterpriseプランでは、7月7日まで週次利用上限の最大50%までFable 5を利用できる。その後は、「追加使用量」(利用クレジット)を通じた提供に移行する。

6月9日の当初公開時点では、Fable 5はPro、Max、Team、seat-based Enterpriseプランで6月23日までの2週間Fable 5を利用することができたが、再開後、利用枠に含まれる期間が1週間に短縮され、新たに明確な利用上限が設けられた。Redditなどのユーザーコミュニティでは、提供再開を歓迎する声がある一方、こうした利用条件の厳格化に対する不満も見られる。

Anthropicはまた、Amazon、Microsoft、GoogleなどProject Glasswing参加企業と共同で、AIモデルのジェイルブレイクの深刻度を評価する業界共通の基準づくりに着手したことも明らかにした。「能力向上の度合い」「適用範囲の広さ」「悪用への転用しやすさ」「発見のしやすさ」の4項目を評価軸とするフレームワークを提案している。さらに、セキュリティ研究者がFable 5の回避手法を報告できるHackerOneの新プログラムも開始する。米政府との連携についても、モデル公開前の評価アクセス拡大や情報共有の迅速化など、強化する方針を示した。