Windows Latestは、「After 25+ years at Microsoft, I can tell you why Windows was neglected」において、Microsoftに26年以上在籍したEwan Dalton氏による、Windowsが社内で長年にわたり優先順位を下げてきた背景を分析する記事を掲載した。

Dalton氏はMicrosoftに25年以上在籍した経歴を持つ。Dalton氏は自身の経験を踏まえ、WindowsがMicrosoft社内でどのような位置付けに置かれてきたのかを振り返るとともに、現在の品質改善に向けた動きを過去の「復活劇」と重ね合わせて分析している。

同氏は7月下旬、MicrosoftがWindowsに再び重点を置く姿勢を示しているとの記事を掲載。さらに同僚の記者はWindowsが収益の柱ではない事実に触れ、それでも真剣に取り組んでいる様子を紹介した。

しかしながら、周囲からは懐疑的な反応が寄せられたという。そこでDalton氏経験に基づく内情と過去にも同様の過ちから復活してきた歴史、そして今回も復活劇を踏襲する動きを見せていることを説明した。

  • Microsoftの社員だったEwan Dalton氏はMicrosoftが再びWindowsの復活劇に挑んでいると指摘している

    Microsoftの社員だったEwan Dalton氏はMicrosoftが再びWindowsの復活劇に挑んでいると指摘している

WindowsはなぜMicrosoft社内で優先順位を下げたのか

Dalton氏、WindowsがMicrosoftの成長を支えた基盤である一方、事業の拡大に伴い相対的な重要性が薄れたと回顧する。かつてはWindowsの発売時に販売店へ多くの購入希望者が行列を作る光景も見られたが、現在は新しいPCへあらかじめ搭載される形が主流となり、単体のパッケージを購入する利用者は大幅に減少した。

企業の経営層は、このような時代の流れに敏感だ。関心や投資は成長が期待できる事業や競争が激しい分野へ集まりやすい。企業では市場環境の変化に伴い、成長が期待される分野へ経営資源の重点が移ることは珍しくない。Microsoftでも近年はAI関連への大規模な投資が続いている。

一方、Windowsへ大規模な追加投資を実施しても利用者数が大幅に増える保証はない。さらにクラウドや企業向けソフトウェアなど別の製品やサービス群が収益の柱となったこともあり、社内におけるWindowsの重要性は薄れていった。

Dalton氏は、昨今指摘されるWindowsの品質上の問題は意図的なものではなく、社内での優先順位の変化や部門間の利害の違いなど、複数の要因が重なった結果との見方を示している。しかし品質改善を怠れば、Microsoft全体に悪影響をおよぼす可能性があると指摘する。

組織再編でWindowsは再び「CEO直結」へ

Dalton氏によると、2018年にはWindowsの中核部分がCloud & AI部門へ、ユーザーインタフェースやアプリケーションはExperiences & Devices部門へ移され、Windowsは最高経営責任者(CEO: Chief Executive Officer)直属ではなくなったという。Dalton氏は、この時点で組織の中核から外れ、周辺事業として再編されたと捉えている。

その後も再編は続き、2020年にはPanos Panay氏がWindowsとSurfaceを統括し、翌年にはWindows 11を投入した。Panay氏がAmazonに移籍後は、Pavan Davuluri氏が体制を引き継ぎ、副社長のRajesh Jha氏が指揮を取る体制が維持された。

2026年3月にJha氏が退任を表明した後は、Davuluri氏が最高経営責任者のSatya Nadella氏へ直接報告する体制へと移行。この再編によってWindowsを単独で統括する組織はなくなり、Windowsを構成する機能が複数の部門に分かれる体制となった。

Microsoftは「信頼できるコンピューティング」の再来を目指すのか

Windowsの品質が低下すれば、企業顧客はOSだけでなく、認証、セキュリティ、業務ソフトなどMicrosoft全体の製品群を信頼することも難しくなる。Dalton氏は、Windowsの品質問題がOSだけでなくMicrosoftの製品・サービス全体への信頼に影響しかねないと指摘する。

過去にもMicrosoftは深刻な課題へ対応した経験を持つ。2000年代初頭にはCode RedやNimda、ILOVEYOUなどのウイルスやワームが相次ぎ、WindowsやSQL Server、Officeの信頼性が大きく揺らいだ。

これを受け、同社は開発を一時停止し、技術者に対して安全なコーディング教育を行い、加えて徹底的なセキュリティレビューの実施を強制した。新機能よりセキュリティを優先する「信頼できるコンピューティング(TwC: Trustworthy Computing)」構想を打ち出し、Windows XP Service Pack 2などの成果につなげた。Bill Gates氏も当時、機能追加とセキュリティ向上の選択ではセキュリティを優先すべきだと表明している。

Dalton氏は、Windows 11の品質改善や更新プログラムの品質基準を引き上げる現在のMicrosoftの姿勢は、この信頼できるコンピューティング構想と共通点があると分析する。Windowsは同社の幅広い製品群を支える基盤であり、その品質と信頼性を回復することは、企業顧客との関係維持や競争力確保に直結する重要な取り組みであると結論付けている。