デル・テクノロジーズはこのほど、米国で開催した年次イベント「Dell Technologies World 2026」のハイライトを紹介した。同イベントでは、多数の製品発表が行われた。しかし、イベント全体を通して語られたテーマはAIインフラにとどまらない。

同社は「AIを機能として利用する時代から、AIを前提に業務を再設計するAIネイティブ企業への転換」を掲げ、その実現に必要となるサーバ、ストレージ、冷却、運用、自動化、AIエコシステムまでを統合したプラットフォームを提示した。

AIネイティブ企業への変革、その実現に必要な基盤とは

常務執行役員 ソリューションズアーキテクト 統括本部長 藤森綾子氏は、Chairman and CEOのマイケル・デル氏が、基調講演で次のように述べたことを紹介した。

「AIはもう“機能”ではなく、企業の“経営の在り方(オペレーティング・モデル)そのもの“に。AIを中心に 業務を再設計する企業が優位性を増す」

このデル氏の言葉は、企業がAIを前提に業務を再設計する時代への転換を示すものだ。

藤森氏は、「企業はAIネイティブな会社になるために、既存のインフラもモダナイゼーションする必要がある。それを推進するためのピースがそろった」と語った。

今回発表した製品群は、AIネイティブ企業への変革と既存インフラのモダナイゼーションを支える「ピース」を埋めるものと位置付けられる。

  • デル・テクノロジーズ 常務執行役員 ソリューションズアーキテクト 統括本部長 藤森綾子氏

    デル・テクノロジーズ 常務執行役員 ソリューションズアーキテクト 統括本部長 藤森綾子氏

AIプラットフォーム戦略の中核となる「Dell AI Factory」

AIはクラウドだけで動くわけではない。藤森氏は、「AIはデータがある場所で処理を行うが、クラウド以外で動くAIが3分の2ともいわれている」と述べた。

そのため、データが存在するオンプレミスやエッジ、クラウドなど複数の環境でAIを実行する「ハイブリッドAI」が前提になる。

さらに、AI分野で注目を集めているのがエージェントAIだ。藤森氏は「エージェントが本格化すると、組織の在り方も変わる」と述べ、デジタルワーカーであるエージェントが共存するようになると、そのコストも考慮する必要があると指摘した。

一方で、エンタープライズAIでは、PoC(概念実証)の段階から本番環境へ移行できないケースも少なくない。藤森氏はその要因として、「エージェントAIとトークン経済」「データ」「電力・インフラ」「スケール」の4つの課題を挙げた。

こうした課題に対応するため、同社はAIプラットフォーム戦略の中核に位置付ける「Dell AI Factory with NVIDIA 2.0」をさらに強化した。

  • AIプラットフォーム戦略「AI Factory with NVIDIA 2.0」の概要。エンタープライズの課題に対応する

    AIプラットフォーム戦略「AI Factory with NVIDIA 2.0」の概要。エンタープライズの課題に対応する

インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部 AIプラットフォーム・ソリューションズ(AIP)AI Elite |CTOAmbassador 増月孝信氏は、次のように説明した。

「従来、インフラは容量を規定する『Tシャツモデル』だったが、AI Factoryではシンプルにするためモジュラーでスケールするアーキテクチャを採用している。スケールの効率性が重要だが、ここでAutomation Platformがカギになる」

  • インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部 AIプラットフォーム・ソリューションズ(AIP)AI Elite CTOAmbassador 増月孝信氏

    インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部 AIプラットフォーム・ソリューションズ(AIP)AI Elite CTOAmbassador 増月孝信氏

AI Factoryは、こうしたモジュラー型アーキテクチャを採用することで、AIインフラやデータ基盤、AIソリューションを統合し、エージェントAIを活用するための環境を提供する。今回、GoogleやOpenAI、Palantir、xAIなどとの連携も拡大し、AIエコシステムの強化を図った。

AIとITを統合する「Automation Platform」

一方、藤森氏は、AI基盤だけでなく既存のエンタープライズシステムもモダナイゼーションが必要だと説明した。既存システムは「サプライ状況の劇的な変化」「プラットフォーム選択の複雑化」「運用自動化のギャップ」「AIやランサムウェアなど新たな変数への対応」といった課題に直面しているという。

同社は、こうした課題に対応するクラウドプラットフォーム戦略として「Modern Data Center」を掲げる。AIワークロードだけでなく既存ITワークロードも統合的に運用し、その実現基盤として「Enterprise Cloud」と「Dell Automation Platform」を位置付ける。

  • クラウドプラットフォーム戦略「Modern Data Center」の概要

    クラウドプラットフォーム戦略「Modern Data Center」の概要

AI時代に向けてストレージや冷却製品を強化

執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部長の森山輝彦氏は、AI時代はテクノロジーや投資サイクルの変化が速くなることから、「将来にわたって進化できるアーキテクチャが重要になる」と説明した。その考え方を体現する製品としてPowerStore Eliteを紹介した。

  • デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部長 森山輝彦氏

    デル・テクノロジーズ 執行役員 インフラストラクチャー・ソリューションズSE統括本部長 森山輝彦氏

PowerStore Elite

AI時代を見据えて刷新したストレージ製品。将来の技術進化に対応できるアーキテクチャを採用し、データ削減保証や高密度化によって容量効率を高めるとともに、AIワークロードと既存ITワークロードを支えるストレージ基盤として展開する。

森山氏は、「エージェントAIを使うようになるとデータが増えるため、データを圧縮する必要がある。そのため、6:1のデータ削減を保証する。また、3Uシャーシに最大40台のドライブと最大5.8PBの実効容量を搭載しており、ハードとソフトの進化に対応できるアーキテクチャになっている」と述べた。

Dell Exascale Storage

AI向けデータ基盤を構成するストレージ。AI Data Platformと組み合わせることでデータオーケストレーションを簡素化し、大規模AIワークロードに対応するストレージ基盤として位置付けられる。

Dell PowerCool CDU C7000

高密度GPUサーバ向けに設計したラック内搭載型の液冷ユニット(CDU)。NVIDIA Rubin世代を見据え、最大220kW超の冷却性能を実現しながら、19インチラックの4Uスペースに搭載できる省スペース設計を採用した。

Dell PowerEdge

AI PlatformとCloud Platformの双方を支えるサーバ製品群。AIインフラやモダンデータセンターの中核を担い、Enterprise Cloudを構成する主要製品の一つとして位置付けられる。