
自主回収とはいえ、医療用医薬品を回収したにもかかわらず、信用していただけるとは大変ありがたいことで、「龍角散」ブランドは健康関連としてはかけがえのないブランドイメージを持っていると私は確信しました。
同時に製品としての「龍角散」を大切に思っていただいていることが何よりも有り難く、消費者の期待を裏切らないためには不得意なことは止めるべきだと強く思ったのです。これが後日「大企業になりたい病」を止めようという大きな方針につながりました。
微粉末「龍角散」に関するグループインタビューを進める中で印象的なことがありました。ある女性グループで、いつ龍角散を知ったのかという問いに対し「CMよねー」との声。「そうそう。ゴホンといえば、よねー」。しかしその中のお一人が「私は違うわ」と呟いたのを私は聞き漏らしませんでした。
「○○さん。いかがですか」と聞いてみると、産婦人科医から勧められたというのです。驚きでした。
そこで他の皆さんに聞いてみると「そんなの当たり前よねー。だって他の強い薬と違って血中に入らないから平気だって先生言っていたから」とおっしゃるのです。
また男性の高齢者グループでは、「持病があって常に薬を飲まなければならないので、強い咳止めは飲めないから龍角散を使い始めた」とのご意見もありました。
相談室への問い合わせ事例を調べてみると、産婦人科医や妊婦さんからや、他の薬との飲み合わせに関する問い合わせが高い頻度であることも分かりました。
そしてもう一つの印象的なことは使用頻度の高い人ほど季節に関係なく使っていることです。これは風邪症状が出る前の、軽いノドの不快感やホコリや異物、タバコなどでノドに違和感があったとき、風邪に関係なく使っていることです。これは当時の会社のマーケティング戦略とは大きな相違です。
今までは風邪のシーズンに広告を集中して「咳やタン」を訴求していたのですが、大手メーカーの風邪薬ブランドと競合することになってしまい、厳しい立場に追い込まれていたと推測できました。
同時に微粉末「龍角散」に関しては、致命的な欠点も明らかになってしまったのです。各グループとも、この製品をどうやって使っているか聞いたところ、飲みにくさを自身の工夫で克服したと自慢する傾向がみられたのです。
小さいサジで粉をすくって口に入れるのですが、その場合、ノドに直接落とすと、むせてしまうことがあるので、舌の上に乗せ、ゆっくりノドに送り込むのが正しい飲み方なのですが、ある人は「見てくれ。コイツはホントに飲みにくい。サジですくえばこぼすし、口に入れたと思ったらサジから落ちないで口の外に落ちやがる。だからオレはサジを口の中に入れて下向きにして下の歯にカーンっとやるのさ」と自慢なさっていました。
これには参りました。とてもこの製品を新規ユーザーにお勧めするわけにはいきません。このときは本当に悩みました。