
『大欲に生きる』――。新日本科学会長兼社長・永田良一さん(1958年=昭和33年8月生まれ)が大事にする人生訓。もっとも、大欲と言っても、欲深いということではなく、「大きな志、大志ということで、無欲につながります」ということ。医師の資格を持つ永田さんは高野山大学大学院でも学び、密教学修士号も持つ人。
非臨床・臨床試験の最大手、新日本科学だけでなく、米国でも創薬事業や研究開発を営み、子会社2社を新興市場のNASDAQに上場させてきている。
父、次雄さん創業の同社を受け継いだのは1991年(平成3年)で32歳の時。以来、グローバルに活動する今日の新日本科学グループを創り上げてきた。ちなみに、2026年3月期の同社の業績は売上高325億円、営業利益は26億円強。
同社の業態はCRO(開発業務受託機関)と呼ばれる。今、このCROの役割、存在感が高まる。「今は、国内の大手製薬会社のすべてから受託しています。また日本だけでなく、約半分は海外からの受注です」と言う通り、事業はグローバルに広がる。昨年は経口偏頭痛治療薬開発で米FDA(米食品医薬品局)の承認を受けた。
2011年には、郷里・鹿児島県指宿(いぶすき)市に九州初の陽子線がん治療施設の『メディポリス国際陽子線治療センター』をオープン。100億円以上もかけた治療センターだが、評判を呼んで、これまでに8000人以上の人たちが治療を受けている。
永田さんは新しい領域を切り拓くことに意欲的な人で、この治療センター開設時には、「約80億円の個人保証をやることで、開設にこぎつけられました」と淡々と語る。
同郷の稲盛和夫さん(京セラ創業者、故人)に兄事、公に尽くす考えを高めていった。「わたしたちは、創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放することを絶対的な使命にしています」を永田さんは経営理念に掲げる。これも先述の『大欲に生きる』ことの実践である。
変わったところでは、絶滅が危惧されるウナギの人工養殖にも乗り出していること。すでに鹿児島県沖永良部島に自社施設を持ち、稚魚のシラスウナギの養殖に成功。ウナギの赤ちゃんと言われる、レプトセファルスからシラスウナギに育てる養殖技術を開発。これが大変な知的財産になる可能性がある。養殖関係者には朗報だ。
「百万匹を育てる養殖にしていきたい」と大欲を語る永田さんだ。