
大きな問題に直面した時には国の介入が必要
─ 近著『人新世の「黙示録」』(集英社)が話題となっています。「計画経済」など新しいキーワードを使いながら、問題意識とソリューションを提示していますが、この本を書きたいと思った動機を聞かせてください。
斎藤 2020年秋に『人新世の「資本論」』(集英社新書)を出させていただいたのですが、その続編になります。前編の方は、マルクスとか脱成長もそうですが、なかなか一般には受け入れられないような内容だったにもかかわらず50万部超えになりました。
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それは、当時は新型コロナ禍もあったし、エッセンシャルワーカーに焦点が当たったり社会格差が問題とされ、そういうことに対する怒りもありました。あとはライフチェンジや、コロナ禍をきっかけとした自然環境の見直しとか働き過ぎへの見直しがあって、そういうものが「脱成長」とマッチしたのでしょう。
当時はコロナ禍も踏まえて、人類はもっと気候変動という大きな問題に一致団結して取り組んでいく、そういう期待を込めて書いたのです。
─ この間、斎藤さんが期待したような世の中の変化はありましたか。
斎藤 残念ながらこの5年間で状況は悪化してしまったと感じています。当時はビジネスの世界でもSDGsという言葉がよく言われたように気候変動に関心が高かったけれども、この間戦争が何度か起き、今はそれどころではないような、もう米国は気候変動対策をやっていないし、日本もやらなくていいんじゃないかという感じになっていると思います。
─ 世界を見渡しても気候変動は進んでいるように見えます。
斎藤 気候変動がかなり悪いところまで進んでしまいました。パリ協定が目指していた今世紀末までに気温上昇を1・5度に抑えるという目標があるのですが、すでに24年に1・5度を超えてしまった。そうなると、今後2度、3度まで上がっていくことは避けられません。
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─ これまでの対策は有効ではなかったということでしょうか。
斎藤 この気温上昇は残念ながら、もう社会をどれだけ変えようが避けられません、自然科学のプロセスなので。
そうなると、前回の本で書いた、脱成長でワークライフバランスを見直して、「コモンズ」という共有財を大事にして生きていこうというやり方だけでは、これからの時代は生き延びられないのではないかと感じています。
そこで改めて今回、このままではある種の文明の終わりを迎えるということを覚悟して、では、そうではない道はないのかということでこの本を書いたのです。
─ そうした地球規模の問題に対して斎藤さんが提唱する解決策はどのようなものでしょうか。
斎藤 誤解を生みやすい言葉ですが社会主義という言葉を使っています。社会主義って何かといったら、端的に言うと計画経済ということになります。ある種の経済の計画というものを緊急事態にはやらざるを得ません。
これはリーマンショックの時もそうでしたし、コロナ禍の時もそうでした。なにより戦時は国が市場に介入する必要が出てきます。
─ 非常時には国の介入が必要だということですね。
斎藤 はい。やはり大きな問題に人類が直面した時には、市場だけに任せていられないというのは、今挙げた3つの事例からも明らかだと思うんですね。
気候変動というのはまさに戦時といってもいいでしょう。つまり気候変動自体が、これまで私たちが直面したことがない災害とか食糧不足、水不足、難民の大量発生といったような問題を引き起こす。それが同時に資源をめぐっての紛争や戦争を引き起こすということで、これからは大きな混乱の時代に長期的になっていくと見ています。
─ 本の中では「テクノ資本主義」という言葉を使って、米国の巨大IT企業が膨大な利益を上げる現状に警鐘を鳴らしています。
斎藤 トランプ米大統領もそうですけれど、そこに関与している……。