
世界で13億人のビジネスマンが使うSNS
─ ビジネスに特化したSNSを世界中で運営されているリンクトインですが、主要な事業を教えてくれませんか。
田中 リンクトインは、プロフェッショナルネットワークサービスで、世界で13億人が利用しています。世界労働人口34億人のうち、3分の1弱の人が利用しているSNSです。
個人だけでなく企業もアカウントを持ち、スキルベースの求人を1500万件出していただいています。世界中で今1番信頼のあるスキルタクソノミーを持っているということが弊社の特徴です。国際労働機関やOECDなど、各国政府もこれを使い人材政策を立てています。
毎年話題になるジェンダー・ギャップ・レポートは、実は背後で全部リンクトインが書いています。
個人のプライベートを発信する一般的なSNSとは違い、ビジネス目的で利用されるため、経歴や社長の発信なども含め、オフィシャルなデータを所有しています。
─ そのデータ活用を多方面でしていくと。
田中 はい。当社は主に4つの事業を展開しています。1つ目は企業が適切な人材を迅速に見つけられるお手伝いをする「採用領域」。2つ目が「人材育成」で、われわれがつくっている2万5000コースのeラーニングを提供しています。
3つ目は「マーケティング、広告領域」。これは世界の13億人に向けて、ターゲットを個人に絞って広告を打つことが可能です。
先日、BrandLinkが日本でも提供開始しました。信頼性の高いメディアやクリエイターと連携し、広告内容と親和性の高い動画コンテンツとともに、高精度なターゲティングに基づくインストリーム広告の配信を実現しています。
─ 見込み客に直接リーチできるということですね。
田中 はい。4つ目が「営業領域」です。これは利用者のうち決定権を持った人のみを絞って、ダイレクトに営業をかけることができるサービスです。われわれが今事業として利益を得ているのはこの4つです。
キャリアオーナーシップのあるZ世代で登録が急増
─ 田中さんは代表に就任して3年ですね。この3年で嬉しかったことはなんですか。
田中 わたしが入ったすぐ後に登録者300万人を発表し、今は500万人に達しました。日本の皆さまがキャリアオーナーシップを持って意欲的に働けること、そして人材育成も通して多くの方のキャリアに貢献できていることは、わたしにとって非常に嬉しいことです。
─ リンクトインを使うことのメリットはどんなことがありますか。
田中 メンバーの履歴書が全て載っていて、転職や人事異動の情報が常にアップデートされ毎日情報として入ってきます。
例えば誰かがGoogleからMicrosoftに転職したというデータも、全部ビッグデータの中に含まれているのです。この大きなスキルデータと、人材の移動データを持っているのも弊社のみです。学歴やスキルだけでなく、その人がどういうスキルを持っているか、バックグラウンドを含め全てわかります。
ですから世界では既にビジネスマンの名刺代わりになっています。
─ 名刺よりたくさんの情報がオープンに得られると。
田中 ええ。逆に世界で仕事をする上でリンクトインにその人のデータがないと、「この人はプロフェッショナル人材ではないのかな」と思われるという認識もできてきています。
日本では10年前からサービスが開始されましたが、この2年で凄まじい伸びを見せています。特に、急激に増えているのは半分以上がZ世代です。
─ その背景にはどんなことがありますか。
田中 企業の終身雇用がなくなり、定年まで同じ会社で勤め上げようと思っていない彼らは、自分のキャリアオーナーシップを明確に持っていて、様々な会社でのキャリアアップを前提に考えている子が多いです。
自分でそのロールモデルやインターンシップもリンクトインで見つけています。つまり非常にプロアクティブなやる気のあるグローバルマインドの学生さんが、リンクトインを活用しているのです。また、企業側もそういう人材が欲しいということで、企業アカウントも増えています。
─ 企業もグローバル化が進んでいますからね。
田中 はい。あとは、大学に導入いただきカリキュラムとしてリンクトインe︱ラーニングをお使いいただいています。リンクトインを使い卒業生の管理も行う大学も増えてきました。大学卒業後、引っ越してしまったり、メールアドレスが変わってしまったり、転職したりで連絡が取れない大学が多くあるそうですが、学生に在学時からリンクトインに登録してもらえれば、コンタクトが可能です。
日本は企業の人材コストを削減することが課題
─ ビジネスモデルはどうなっているのですか。
田中 育成サービスでは、社員数に応じたライセンス料をサブスクで利用いただいています。
例えば、登録されている経歴を見て、「村田さん、こんな素晴らしい経歴をお持ちですね。もしよかったらお話しませんか」とダイレクトにアプローチして働きかけるダイレクトリクルーティングという手法です。
─ その手法の場合、日本では採用コストは非常に高い傾向にありますね。
田中 そうですね。そこを当社はコストが安く済むというのが強みです。今、日本では人材エージェントにお支払いされている手数料は1人あたり3割~5割が一般的です。しかし当社は何人採用しても同じ値段でコストダウンが可能です。
海外の企業はリンクトインで人を採用しているため、採用コストを大きく抑えられています。
対して日本企業は採用コストが非常に高額です。そのために資金が研究開発などの投資に回らないということが、国単位で大きな損失につながっていると思っています。日本はこういう人材市場の構造的な問題があり、世界の中では日本だけがガラパゴス化しているのです。
─ 今日本は人材の流動化が進む中で、企業の人材採用コスト高は課題の1つですね。
田中 ええ。ですからわれわれはここを早く変えたいと考えています。リンクトインが普及すれば、その透明性が高くなります。スキルの可視化が進み、スキルベースの採用が増え、賃金もスキルに合わせて支払われるようになるので上がります。
学べば学ぶほど、お給料が上がる、出世するというキャリアを作れれば、皆さん学ぶようになります。スキルの可視化とリスキリングは、賃金上昇と繋がっていると思います。
世界ではCEOがリンクトインで自ら発信
─ CEOなど経営層も発信することは多いんですか。
田中 はい。増えていますね。投稿内容は、提携会社や事業内容、あとは会った人などです。社長だけでなく役員も投稿しますから、役員のバックグラウンドや能力も見えるので、それを投資家が見ていて情報として拾っています。
こういう会社との事業提携がある、こんな価値観がある、こんなダイバーシティをうたっている、環境問題の取り組みなどで地球に貢献しているということなどがわかると、株価が上がるのです。
─ トップ自らが、発信をしていると。
田中 そうです。PRリリースはもう海外でなくなりつつあります。トップが自分のアカウントから、今日これを発表しますということを投稿するようになっているからです。メディアもそれをキャッチして記事にする動きも出てきています。
AI時代、フェイクニュースが溢れている世の中ですから、誰が何を言っているかは非常に大事になってきています。
今、業務内で使われることが増えているChatGPTはいろいろな情報をビッグデータから引っ張ってきています。
先月出たレポートによれば、生成AIの情報ソースはリンクトインが大きな割合を占めています。信頼されている場所で、誰が言っているかの元が取れるからです。
─ 信頼を高めるための工夫はどうしていますか。
田中 実名のみで、身分確認の証明、パスポート、企業のメールアドレスで身分証明もしています。フェイクニュースやフェイクアカウントも、こちらで消しています。会社の企業アカウントも、会社が認定するとチェックがつく仕組みにしていますので、そこでも信頼性を担保しています。
─ ある意味、責任が重いですね。
田中 そうですね。皆さんも実名で投稿するので、かなり緊張感をもって投稿してくれますから、SNSでよく起こっている炎上もありません。
賃金上昇はスキルの可視化が鍵
─ リンクトインはビジネス面で人と人、企業と企業をつなぐ場になっているということですね。
田中 ええ。例えば、オープンAIとオラクルが先日提携を発表しましたが、実はこの商談のきっかけはリンクトインのメッセージから始まっています。大事なパートナーシップや営業を含めて、公のコンタクト口としても使われています。
─ 社会運営上、重要なインフラになってきていると。
田中 はい。特に日本企業は円安で海外の売上の方が大きい大企業も多いです。ですから13億人のビジネスパーソンが見ているプラットフォーム上でブランディングを上げることは重要になってきています。
日本企業はアンダーバリューされている、株価ももっと上がるべきという声もあります。
よく介護職などエッセンシャルワーカーの賃金をどう上げるかが議論されますが、賃金上昇はスキルベースが基本になります。日本のエッセンシャルワーカーは他国に比べてクオリティが高いですが、誰もスキルベースで可視化していないことが問題の1つだと思います。
可視化することで労働市場的にも、株式市場的にも、日本企業のブランドを高めていくことにも繋がると思います。丸紅さんや三井物産さんは先日決算発表をリンクトインでやってくださり、海外の投資家たちは、非常に注目しています。
─ それと今AI活用が進められていますが、その利用状況についてはどう思いますか。
田中 はい。リンクトインのデータでは、AIは仕事を奪うのではなく仕事の中身を変えてしまうと言っています。
例えば、今、データアナリストのお仕事は97%生成AIがとって代わります。営業マネージャーも、7割近く変わると言われているんですね。
反対にプロジェクトマネージャーというお仕事は、3割弱にとどまります。なぜかというと、かなり人間力に頼るところが多いからです。例えば、交渉力や根回し、ステークホルダーマネジメントは、あまりAIに代替されないということです。
産業界全体で平均的に言うと7割がAIによって取って代わられると言われていますから、どんな仕事に就いている人も待ったなしでリスキリングが必要です。
この2年間で少なくともAI関連で新しい仕事が130万個も生まれています。ぜひ社員全員のAIスキル向上に、当社のeラーニングをお役立てていただけたら嬉しいです。