
柏崎刈羽原発の再稼働で一つのフェーズが変わった
「柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)6号機の再稼働で一つのフェーズが変わった。わたしの年齢も79歳になり、肉体的にもそろそろかと思った」
こう語るのは、東京電力ホールディングス(HD)会長の小林喜光氏。
東京電力HDは、次期会長に官民ファンド・産業革新投資機構(JIC)社長の横尾敬介氏を起用する。金融業界出身者が就任すれば初めてだ。
産業革新投資機構社長CEO・横尾敬介「民間がやれない分野にリスクマネーを供給していく」
現会長の小林氏は、三菱ケミカルホールディングスの社長・会長や経済同友会代表幹事を歴任し、21年6月から5年間、日本のエネルギー改革に尽力してきた。今後は社外取締役をつとめるラピダスで、日本の半導体再興にかけることになる。
横尾氏は1974年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほ証券の社長・会長をつとめた後、経済同友会副代表幹事・専務理事を歴任。2019年からJIC社長に就いていた。
東電HDは今年4月、”頼みの綱”である柏崎刈羽原発6号機の営業運転を約14年ぶりに再開したばかり。1基の再稼働で年約1000億円の収支改善効果があり、現在は7号機の再稼働を目指している段階だ。
一方、2011年の福島第一原発事故が東電HDの経営に残した傷跡は深く、今後も廃炉・賠償費用が重くのし掛かる。同社はこれまで通り、毎年、賠償費用に2000億円、廃炉費用に3000億円の合計5000億円程度を負担しなければならない。
今後もしばらくは原子力1基体制が続くことが予想され、経営再建に向けて、現在は出資先企業を募っているところ。金融業界の出身で、業界再編やM&A(合併・買収)の知見が豊富な横尾氏を起用するのは、そうした背景があるからだ。小林氏は横尾氏に対し「アライアンスのみならず、廃炉やデブリ(溶融燃料)の取り出しなど、大いに期待している」と述べた。
近年はAI(人工知能)やデータセンターの増加によって電力需要が増加しており、電力の安定供給や中長期的な脱炭素化への移行も急務。課題が山積する中で、今後は社長の小早川智明氏と共に、新会長・横尾氏の手腕が問われそうだ。