ブリヂストンの世界初、「水平リサイクル」戦略 使用済みのタイヤを新たなタイヤに生まれ変わらせる!

なぜ、タイヤのリサイクルは難しいのか?

「パートナーとの共創で、使い終わったタイヤを精密熱分解し、そこで得られた材料で新しいタイヤに生まれ変わらせることに成功した」と話すのは、ブリヂストン材料開発統括部門長の大月正珠氏。

 ブリヂストンは今、使用済タイヤを新たなタイヤに生まれ変わらせるための技術開発に注力している。その開発の背景にあるのが、世界的な人口の増加。

 国連の世界人口推計によると、2050年に世界の人口は96億人に達すると言われている。それに伴って、世界の自動車保有台数も、現在の1.5倍に増加すると推計されていることに加え、OECD(経済協力開発機構)の輸送部門の予測でも人、モノの移動量は現在の2倍から2.5倍に拡大する見通し。

 その中で自動車の主要部品であるタイヤの持続可能性を追求することの重要性が、今後ますます高まることになる。

 そこでリサイクルの必要が叫ばれているわけだが、タイヤのリサイクル率自体は非常に高いものがある。ただ、その内容を見るとタイヤの主要市場である日本、米国、欧州いずれも燃料での利用か、他の製品へのリサイクルだというのが現状。このリサイクルではCO2の削減効果は限定的。

 使用済みの製品を原料として再利用して、同じ製品を新たにつくる「水平リサイクル」は、まだ実現していない。

 なぜ水平リサイクルが難しいのかというと、タイヤは100種類を超える原材料からつくられる上、単にゴムでできた製品ではなく、鋼材や繊維、カーボンブラックといった補強材料が使われた「非常に複雑な製品」(大月氏)だから。

 その中でブリヂストンはまず、ビジネスモデルの構築を進めてきた。丈夫で長持ちする「革新材料」を使ったタイヤを開発するとともに、メンテナンスやゴムを張り替える「リトレッド」といったソリューションを提供。そしてその先に、リサイクルがあるという考え方。

 そして今回、難しいとされてきたタイヤの水平リサイクル事業に「EVERTIRE INITIATIVE」と名付けて取り組みを強化、ついに技術的な課題を乗り越えた。

 使用済みのタイヤを精密熱分解し、そこから得られた合成ゴム、カーボンブラックを使ってタイヤをつくることに成功。ブリヂストンによれば、タイヤの水平リサイクルは「世界初」の事例だという。

 その技術でつくり上げたコンセプトタイヤは、25年10月31日、東京ビッグサイトで開催されていた「ジャパンモビリティショー」で公開された。「このコンセプトタイヤの再生可能材料比率は85%」(大月氏)

 この成果はブリヂストン1社で得られたものではなく、「パートナー」の役割も大きかった。前述の精密熱分解をブリヂストン、分解された油を精製・軽質化し、化学品に変換したのがENEOS、そして再生カーボンブラックの二次処理を東海カーボンが担った。

 今までは、東京都・小平市にある研究開発拠点「Bridgestone Innovation Park」にある小さなプラントで実証を進めてきたが、25年10月には岐阜県関市で精密熱分解パイロット実証プラントの建設が始まった。26年末には建設を完了し、27年の「適切な時期」(大月氏)に立ち上げる見通しで、それ以降に社会実装を見据えた検証を行う計画。

今後の課題は「製造プロセス」

 今後、この技術でリサイクルタイヤを量産するために乗り越えるべきハードルをどう捉えているのか?

 大月氏は「製造プロセスの技術が大事になる。タイヤには様々なケミカルが入っているので、その不純物をいかに制御していくか。これがプラントでの実証のカギとなる」と話す。

 ブリヂストンとタイヤ世界首位を争うライバルである仏ミシュランも、公表ベースでは同じような枠組みで水平リサイクルの実現を進めているように見えるが、ブリヂストンはどこが先んじているのか。

「少なくとも、今回適用した合成ゴムは、我々しかやっていない。これは間違いなく違い」と大月氏。

 ブリヂストンでは26年1月1日付けで新たなグローバルCEO(最高経営責任者)に森田泰博氏が就任することを発表している。

 森田氏は内定会見で「最近は世界第2位が定位置になりつつある。私は2031年の創立100周年を世界ナンバーワンで迎えたい」と話し、ナンバーワンへのこだわりを示した。

 その意味で、水平リサイクルという技術力が問われる領域でも「世界初」を実現したことは、ブリヂストンのブランドにとっても大きい。

 その一方で材料開発を担う大月氏は「必ずしも先にやるということが大事ではない」と冷静。前述のように、2050年には現在の2.5倍もの原材料が必要になる見通しで、これをどう調達するかも重要な課題。

「調達戦略、資源のセキュリティが大事になる。その危機感を醸成していくことも重要なこと」と大月氏。

 そして、水平リサイクルを社会実装するためには、今回のパートナー企業に加えて、さらなる「仲間づくり」が求められる。得意分野を持った仲間とのつながりを生かして、新技術を生み出すだけでなく、社会実装にまで持っていけるかが、今後重要になる。