東北大学、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、北海道大学(北大)、九州大学(九大)、帝京大学、堀場アドバンステクノ、堀場テクノサービスの7者は12月2日、米国航空宇宙局(NASA)の小惑星探査計画「OSIRIS-REx(オサイリスレックス)」が小惑星(101955)「ベンヌ(ベヌー)」から持ち帰った小惑星の試料を詳細に分析した結果、核酸のうちのRNAを構成する「リボース」や、生命代謝の主要なエネルギー源である「グルコース」(ブドウ糖)など、6種類の糖を検出したことを共同で発表した。
さらに、この検出により、地球外にも生命を構成する糖が存在し、それが地球に降り注いでいたことの決定的な証拠となったことも併せて発表された。
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OSIRIS-RExがサンプルを採取した小惑星ベンヌ。(c)NASA/Goddard/University of Arizona(出所:Flickr NASA Goddard Space Flight Center公式ページ)
同成果は、東北大大学院 理学研究科の古川善博准教授、同 角南沙己大学院生、JAMSTECの高野淑識上席研究員、同 古賀俊貴研究員、同 平川祐太研究員、北大の大場康弘准教授、九大の奈良岡浩教授、帝京大の三枝大輔准教授、米・アリゾナ大学のダンテ・ローレッタ教授、米・ローワン大学のハラルド・コノリー教授、NASAのダニエル・グレイビン博士、同 ジェイソン・ドワーキン博士らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の地球・惑星科学を扱う学術誌「Nature Geoscience」に掲載された。
宇宙に存在する生命材料分子は意外と多い?
2023年9月、OSIRIS-RExは、直径約500mのB型炭素質小惑星ベンヌから121.6gの岩石や砂を持ち帰ることに成功した。2025年1月には、ベンヌの試料に多種類のアミノ酸、全5種の核酸塩基など、生命構成分子を含むさまざまな有機分子が含まれていたことが報告された。そして同様の結果は、「はやぶさ2」がC型炭素質小惑星「リュウグウ」から持ち帰った試料の分析からも得られていた。しかし、生命システムを支える主要な生体高分子である核酸とタンパク質の材料となる分子群のうち、小惑星試料からは糖だけが発見されていなかった。
2024年6月に603.4mgの均質化されたベンヌの粉末試料の配分を受けた研究チームは、そこから可溶性有機物を抽出。その中から糖類を精製して化学処理を施し、詳細な分析が実施された。その結果、リボースとグルコースをはじめ、「リキソース」、「キシロース」、「アラビノース」、「ガラクトース」の計6種類の糖が検出された。
リボースは核酸のうちRNAを構成する糖である。つまり、今回の研究成果により、これまで小惑星の試料からは見つかっていなかった、最後に残っていた糖(核酸構成分子群)が発見されたことになる。これにより、小惑星にRNAを構成するすべての分子が存在することが確実となった。一方、DNAを構成する「デオキシリボース」は検出されなかったことから、生命誕生期にはRNAが重要な働きを担ったとする「RNAワールド仮説」を支持する結果だ。
また、グルコースとガラクトースは、今回の検出により、宇宙に存在することが初めて確認された糖だ。特に、グルコースは生命代謝の主要な原料であることから、宇宙にはこれまで考えられていた以上に、生命活動を支える分子が存在することが明らかにされた。
今回の研究成果により、生命に関連する糖が宇宙に存在することが決定的となった。とはいえ、これまでにそれらの存在が確認されたのは、ベンヌと2つの隕石に限定されている。今後、他の小惑星や彗星などの小天体において存在が確認されることで、宇宙における糖の普遍性と多様性が明らかになり、ひいては原始地球に降り注いだ糖の種類や量の理解にもつながる可能性があるとした。
なお、OSIRIS-RExの有機物分析チームでは、ベンヌの試料に含まれるさまざまな有機分子を分析中だ。今後、リュウグウ試料や隕石試料との比較研究などにより、初期の太陽系で起こった分子の進化や、地球にもたらされた生命関連分子の多様性と起源がより一層明らかになることが期待されるとしている。

