未開拓の若年層の獲得へ 西武HDが「エースホテル」を買収

若者の開拓へ─。西武ホールディングス(HD)は連結子会社の西武・プリンスホテルズワールドワイドが、北米や欧州を中心に展開するライフスタイルホテルブランド「エースホテル」を買収する。買収額は最大約132億円。この結果、西武グループが国内外で運営するホテル数は86から94に増える。

 同社は物件の含み益を重視して長期保有を前提とする事業モデルから資産効率の低い物件を売却して別の不動産開発に再投資する「回転型ビジネス」にシフトしている最中だが、今回の買収は「プリンスホテル」の主要顧客に新たな顧客層を加えたいという狙いが透けて見える。

 というのも、エースホテルは1999年に米シアトルで創業した規模が小さいながらも、独創性が溢れる独特なデザインやサービスを売りにするテーマ性のある「ブティックホテル」でホテル業界でも注目されていた。

 ニューヨークのエースホテルでは周辺の大学に通う学生やデザイナーやアーティスト、起業家、投資家などの引き合いが強いという。エースホテルは北米を中心に国内外8カ所で展開しており、国内では20年に「エースホテル京都」を開業している。

 一方でプリンスホテルは1947年に長野県軽井沢に「プリンス・ホテル」という宿泊施設として開業して以来、「中高年やファミリー層への認知度は高くなった」(関係者)。また、昨今ではアジアを中心としたインバウンドの集客でも好況に沸く。

 ただ、「新たなカテゴリーの顧客層を開拓できなければ、価格競争に巻き込まれるだけ」(同)だ。プリンスホテルの平均客室単価は直近で約2.2万円。一方のエースホテル福岡は4万円台だ。「少しでもグループのホテルカテゴリーを増やしていくことが今後の競争を生き残る上でのカギになる」(同)。

 プリンスも従来のプリンスホテルでは取り込めていなかったミレニアル世代と呼ばれる20代後半から30代前半の顧客にターゲットを絞った「プリンス スマート イン」を展開しているが、店舗数は10カ所弱でそこまで存在感を高められていない。

 西武HD会長の後藤高志氏は「日本をオリジンとしたグローバルホテルチェーンへの道筋が一層、確実なものになる」と語る。同社は運営ホテル数を250カ所に広げる構想を掲げる。今回の買収がその滑り出しの一歩になるかが試される。

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