ニュータニックス・ジャパンは10月10日、都内で年次カンファレンス「.NEXT On Tour Tokyo」を開催した。これに伴い、同社の事業戦略や最新の市場動向などに関して記者説明会が開かれた。また、富士通における社内事例と新サービスが発表された。

VMとコンテナが融合する重要性

まず、Nutanix Inc 製品・ソリューションマーケティング担当シニアバイスプレジデントのLee Caswell(リー・カズウェル)氏が同社における戦略について説明に立った。同氏はGartnerのテクノロジーやイノベーションの成熟度、普及率、ビジネスへの影響などを視覚的に示すハイプサイクルを引き合いに出し、以下のように述べた。

「当社はHCI(Hyper Converged Infrastructure)のパイオニアであり、すでにハイプサイクルを通過し、市場浸透率は約20%に達している。つまり、まだ大規模な導入の余地がある一方で、企業のCIO(最高情報責任者)が準備すべき新技術もある。その1つが“分散型ハイブリッドインフラ”だ。これは、仮想プライベートデータセンターからエッジ、そしてパブリッククラウドまで共通の運用モデルを提供するもの」(カズウェル氏)

  • Nutanix Inc 製品・ソリューションマーケティング担当シニアバイスプレジデントのLee Caswell(リー・カズウェル)氏

    Nutanix Inc 製品・ソリューションマーケティング担当シニアバイスプレジデントのLee Caswell(リー・カズウェル)氏

同氏によると分散型ハイブリッドインフラは、従来のVM(仮想マシン)に加えて、コンテナをサポートすることが重要だと指摘。というのも、コンテナとVMは補完関係であり、VMはインフラに堅牢性を提供し、コンテナは開発者に柔軟性と俊敏性をもたらすとのこと。これら2つを融合することで、既存のVM環境を管理する顧客はコンテナを取り込むことで、最新アプリケーションを導入できるという。

カズウェル氏は「生成AIの多くのアプリケーションはコンテナ化されており、AIのトレーニングはクラウドで行われ、推論はオンプレミスやエッジで実行されることが主流になる」との見立てだ。

どこでもアプリケーションを稼働できる選択肢を提供するNutanix

最新の市場動向では、コストに対する懸念からエンタープライズ規模のVMware顧客の70%が2028年までに仮想ワークロードの50%の移行を検討しているほか、2027年までにAIアプリケーションの75%(2024年は50%未満)がコンテナ化されると予測されている。

  • VMware顧客の70%が2028年までに仮想ワークロードの50%を2028年までの移行を検討

    VMware顧客の70%が2028年までに仮想ワークロードの50%を2028年までの移行を検討

また、エッジ環境でのコンテナ利用も2028年までに80%以上(同20%未満)に拡大することが見込まれている。こうした変化に対応するためVM、コンテナ、クラウド、AIを別々のチームで管理するのではなく、一貫して管理できる運用モデルが不可欠だと強調。

Nutanixの戦略は「インフラのモダナイズ(近代化)」「アプリケーションのモダナイズ」「エージェント型AIの実現」の3本柱となり、「Run Anything Anywhere(どこでも何でも動かせる)」をキーメッセージとして掲げている。

  • Nutanixの戦略

    Nutanixの戦略

AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azure、Google Cloudを含む主要クラウドをサポートし、ライセンスのポータビリティにより、性能やコスト、データ主権などの要件に応じてアプリケーションとデータの配置を柔軟に最適化できるという。さらに、ランサムウェア対策「Data Lens」を提供し、ファイルアクセスを監視して不審な挙動を検知・通知、スナップショットによる迅速な復旧を可能にしている。

一方、過去1年間の協業についても触れた。NVIDIAとの連携による最新GPU対応、Google Cloudでクラウドプラットフォーム上で稼働するNutanixソフトウェアの動作形態「Nutanix Cloud Clusters(NC2)」プラットフォームを年内に提供する予定。また、CitrixやOmnissaとのVDI統合や外部ストレージとの連携(Dell PowerFlex、Pure FlashArray、Cisco FlashStack、Dell PowerStore)など、機能拡張を進めている。

カズウェル氏は「当社はハイブリッドクラウド、セキュリティ、コンテナ、LLM(大規模言語モデル)、エージェント型AI、外部ストレージを統合し、どこでもアプリケーションを稼働できる選択肢を提供する。今こそ、次の5年間を見据えたIT戦略を計画する時であり、Nutanixはその実現を支援する」と述べていた。

  • Nutanixのプラットフォーム

    Nutanixのプラットフォーム

日本市場の課題とNutanixの取り組み

続いて、Nutanix アジア太平洋および日本地域担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのジェイ・トゥセ氏がグローバルのビジネス概況と、日本市場について解説した。

  • Nutanix アジア太平洋および日本地域担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのジェイ・トゥセ氏

    Nutanix アジア太平洋および日本地域担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのジェイ・トゥセ氏

トゥセ氏は「2025年度は前年比18%の売上成長とフリーキャッシュフローの加速を達成し、収益性のある成長を実現し、製品機能やサポートサービスへの投資を継続できる体制を確立している。また、グローバルにおいて約3000社の新規顧客が加わり、3万社以上の顧客を抱えている」と胸を張る。

  • Nutanixにおける2025年度のハイライト

    Nutanixにおける2025年度のハイライト

日本でも好調な業績ではあるが、重要な課題が3つあると指摘。第1にAIを戦略的必須事項とする企業の割合がAPJの平均より高いことが調査で判明し、第2にクラウドネイティブアプリケーションへの移行で、日本では80%超の企業がコンテナやマイクロサービスを活用した開発を重視してる点を示す。そして、第3にコスト管理とレジリエントなインフラの確保に関するものだ。

同氏は「競合他社の価格引き上げやサポート縮小が進む中、Nutanixは“安全な避難所”として評価され、こうした評価は新規顧客獲得を後押ししている。日本市場では12年以上の実績を持ち、世界最高水準のサポート体制を構築しており、公共部門、金融、製造など幅広い分野で事業を展開し、今後も日本企業向けのイノベーションを推進していく」と力を込めていた。

国内事例、東急不動産と東芝、倉敷中央病院、戸田市の場合

次に国内における事例について、ニュータニックス・ジャパン 執行役員 Field CTO兼システムエンジニア統括本部長の荒木裕介氏が紹介。

  • ニュータニックス・ジャパン 執行役員 Field CTO兼システムエンジニア統括本部長の荒木裕介氏

    ニュータニックス・ジャパン 執行役員 Field CTO兼システムエンジニア統括本部長の荒木裕介氏

東急不動産ホールディングスはVMware/AWS環境からAWS上のNutanix Cloud Clusters(NC2)に270台のVMを6週間で移行。Nutanixのネットワーク仮想化技術と移行ツール「Nutanix Move」を活用し、IPアドレスを維持したままスムーズな移行を実現したという。

東芝インフォメーションシステムズは、2200台規模のVMで稼働するミッションクリティカルなアプリケーションを、今後最大2年間かけてNutanixプラットフォーム上へ移行する計画だ。

倉敷中央病院は電子カルテシステムをNutanixプラットフォーム上で利用するプロジェクトを実施。システムの切り替え時間は6時間と短時間で完了し、運用管理機能の活用により運用負荷の低減も実現しているとのことだ。埼玉県戸田市は住民情報系システムや行政事務系システムといった重要なシステムをNutanixプラットフォームへ移行。既存環境からの切り替えを4時間で完了させ、業務停止を最小限に抑えている。

富士通がNutanixを選択した決め手は?

そして、10月10日に発表された富士通の社内事例とパートナーシップ強化に関して、同社 SVPプラットフォームビジネスグループ サービスインフラ事業本部長の関根久幸氏が説明した。

  • 富士通 SVPプラットフォームビジネスグループ サービスインフラ事業本部長の関根久幸氏

    富士通 SVPプラットフォームビジネスグループ サービスインフラ事業本部長の関根久幸氏

まずは社内事例について。富士通では、約3000社が利用する企業向けサービス運用基盤を既存の仮想化環境から半年以内に刷新する必要があり、コストの高止まりやサービスの無停止移行、アプリケーションの互換性の維持が課題となっていた。

同氏は「Nutanix Moveで検証したところ、期間内に確実に移行完了ができるという結論を得た。コストに関してもライセンス費に加え、研修の過程でメンテナンス自動化で大幅な工数削減が見込めた。そして、サービス提供者としてエンドユーザーへの説明責任が必要となるが、その点をいかにサポートしてもらえるか、また同一のIPアドレスを変更せずに移行できることが大きな決め手となった」と、Nutanixへの移行に関する経緯について説明した。

  • 富士通における課題

    富士通における課題

移行を決定した富士通では、移行先としてNutanixの仮想化基盤を搭載したHCIサービス「PRIMEFLEX for Nutanix」とした。同氏は「移行はサービスのトラフィックが少ない深夜帯での作業に限定しつつ、開始から2カ月後の8月30日にはプロジェクトが完了した。導入コストを約30%削減し、特定の運用作業において90%の自動化を達成したと。移行後、サービス停止は発生しておらず、高い品質で運用できている」と振り返る。

  • 富士通におけるNutanix仮想化基盤の成果

    富士通におけるNutanix仮想化基盤の成果

Nutanix仮想環境の移行で得たノウハウで新サービス

こうした社内実践で得たノウハウをもとに「MC(ミッションクリティカル)マイグレーション支援サービス for Managed Service」と「Fujitsu Managed Service for New On-Premises」の2つの新サービスを10月10日にリリース。

4月からは最適なITインフラの企画・構成検討を支援する「MCインフラ最適化支援サービス」の提供を開始しており、関根氏は「最適化、実際の移行、移行先の3セットの支援が準備できた」と話す。

MCマイグレーション支援サービス for Managed Serviceは、既存のオンプレミス仮想化環境からNutanix環境への移行を支援。Nutanix Moveを全面的に活用し、富士通のNutanix認定技術者が対応する。Nutanixの認定技術者も10倍となる27人~249人に増加させている。

また、Fujitsu Managed Service for Nutanix on-premiseは移行先として提供されるマネージドサービスで、サブスクリプション形式で利用が可能。富士通のデータセンター内に顧客専用のNutanix HCI環境を構築し、運用を富士通が代行するというものだ。「Nutanix HCIのみ」と「Nutanix HCI + Nutanix Enterprise AI」の2つの提供パターンを用意している。

  • 新サービスの概要

    新サービスの概要

関根氏は「今後はNutanix Enterprise AIと組み合わせ、顧客のクラウド移行や生成AIの活用といった領域で、さらなる協業を検討していく」と述べ、プレゼンテーションを締めくくった。