JTBと日立製作所は6月24日、観光DX推進に向けた新たなサービスの提供において、旅行者の利便性向上や周遊促進、観光関連事業者の生産性・収益向上を目指した持続可能な観光地域づくりへの貢献を見据え、共創を開始することで合意したことを明らかにした。
“技術×観光”によるDXで新価値創造を目指すJTBと日立
JTBは、エリア開発や観光DXを推進する中で、観光施設や2次交通のデジタル化を推進する必要性を認識したとのこと。そうした課題に対応するため、先進的な技術やノウハウを有するパートナーとの共創が不可欠であると考えていたという。一方の日立は、自治体や観光・交通事業者と連携し、デジタル技術を活用した観光DXの取り組みを推進しており、その中で安心・安全な本人確認を実現する生体認証技術や、移動履歴に伴う料金決済技術など、“デジタルチケット”を支える要素技術やノウハウを培ってきたとする。
そこで今般両社は、それぞれの強みを活かして相互に補完することで、新たな観光サービスの創出を目指した共創に取り組むことで合意。そして併せて、両社による第一弾の取り組みとして、香川県小豆島において8月1日より、生体認証などを活用したデジタルチケットによる新たな周遊企画券サービス「tebu-Ride PASS」の実証実験を開始することを発表した。
同共創においてJTBは、長年培ってきた観光業界での豊富な経験・知見をもとに、中核的な役割を担うとのこと。具体的には、地域の特性や旅行者のニーズを深く理解したうえで、魅力的な周遊企画券や観光プランの企画・開発を行うとともに、地方自治体や地域の観光関連事業者との強固なネットワークを活用して、tebu-Ride PASSの導入や運用をスムーズに進めるとする。また旅行者の動向や嗜好を分析することで、効果的なプロモーション戦略の立案・実行にもつなげるといい、デジタルチケットの利用方法や観光情報の提供などといった旅行者向けのサポートを行い、技術と観光の融合による新たな価値創造を目指すとしている。
一方で日立はこの共創において、デジタルチケットシステムの設計・開発・実装を担当。生体認証技術を活用した手ぶらでの買い物や、ビーコン(無線装置)を活用した利用者の移動履歴のリアルタイム取得・処理、およびその移動経路に応じた料金を自動精算する仕組みの構築に取り組むという。また、セキュリティ対策やシステムの安定運用に加えて、将来的な利用拡大や展開地域の拡大を見据え、柔軟に拡張可能なシステム設計を行うことで、持続的なサービス提供を技術面で支えるとした。
小豆島での実証実験を開始する「tebu-Ride PASS」とは?
8月1日より実証実験が開始されるtebu-Ride PASSは、従来提供されていた周遊企画券で課題とされてきた“ユーザビリティの向上”と“事業者の運用効率化”を目指したもの。デジタルチケットシステムの活用により、スマートフォン1つを介した複数の交通機関・観光施設のシームレスな利用を実現させるとする。
具体的には、ビーコン技術を活用したハンズフリーチケッティングにより、施設ゲートでのウォークスルーや顔認証による利用を可能にし、旅行者の移動をよりスムーズにするという。また事後決済方式を採用することで、旅行中の決済手続きを簡素化するとともに、利用額に応じた割引制度も提供することでツーリズム体験の付加価値を向上させるとした。
JTBと日立は、これらの取り組みにより移動手段の選択肢が拡大し、より柔軟な旅程計画が可能になると同時に、チケット購入や入場手続きの煩雑さを解消することで、旅行者がより満足できる環境を提供するとのこと。また同サービスを通じて旅行者に対する自由で快適な旅行体験を提供し、地域に対する周遊観光の促進や観光施設への来訪者増加による地域観光の活性化、さらには事業者に対するチケット管理効率化やデータ活用による業務改善などを支援するとしている。
旅行者・住民・事業者それぞれへのメリット提供を目指す
両社は小豆島での新サービス実証実験を皮切りに、観光分野におけるエリア特有の課題解決を図り、観光客・地域住民・インバウンドなど多様化するユーザーニーズを適切に捉え、地域の消費拡大や観光産業の収益・生産性向上に貢献することを目指すという。また開発されたシステムを基盤として、自治体や地域の事業者がデータを活用し、観光客の行動パターンや需要動向を詳細に分析することで、よりパーソナライズされたサービスの提供や効果的な観光戦略の立案など、さらなる観光DXの実現を目指すとしている。