Constellationは9月20日(現地時間)、「Constellation to Launch Crane Clean Energy Center, Restoring Jobs and Carbon-Free Power to The Grid」において、スリーマイル島原子力発電所の1号機を再稼働させることを前提として、Microsoftと20年間の電力購入契約を締結したと伝えた。契約では、再稼働後の同発電所による電力はすべてMicrosoftが購入し、同社は80万世帯以上に電力を供給する場合と等しい835メガワットのエネルギーを得ることになるという。

  • Constellation to Launch Crane Clean Energy Center、Restoring Jobs and Carbon-Free Power to The Grid

    Constellation to Launch Crane Clean Energy Center, Restoring Jobs and Carbon-Free Power to The Grid

AI向け電力需要に対応

スリーマイル島原子力発電所では、1979年に米国史上最悪とも言われるメルトダウン事故が発生。事故が起きたのは2号機で、隣接している1号機には直接的な影響はなかった。1号機はその後、2019年9月に運転を停止し、同発電所は閉鎖された。閉鎖の主な理由はシェールガスによるエネルギー価格の低下と運営コスト上昇による採算性の悪化とされている。停止した1号機は約60年かけて廃炉を行う計画だった。

Constellationの発表によると、同社はスリーマイル島に新たにCrane Clean Energy Center(CCEC)を設立し、当局の承認を得た上で2019年に停止された1号機の設備を更新した上で、2028年に再稼働する計画だという。再稼働後に発電される電力はすべてMicrosoftが購入する契約となっている。

Microsoftが大規模な電力購入契約を行った背景には、米国内でAI向けデータセンターの電力需要が高まっていることが挙げられる。この需要に対し、各社は再生可能エネルギーなどの活用を積極的に進めているが、Microsoftでは原子力発電を活用することでアドバンテージを取る戦略に出たようだ。同社のエネルギー担当副社長Bobby Hollis氏はプレスリリースの中で、「この契約は、電力網の脱炭素化を支援するMicrosoftの取り組みにおける大きな節目」と語っている。

Constellationは、新しいCCECによって3400人の雇用が創出され、州税と連邦税で30億ドルが生み出されると発表している。また、発電所の再稼働によって州のGDPは160億ドル増加するという。

電力需要の逼迫や、経済的なメリットといった事情があるとはいえ、一度は完全に閉鎖された原子力発電所に対して、わずか5年後に再稼働を決定するというのは、安全性に関する懸念が出て当然だろう。長期的なリスクよりも、短期的な経済および技術競争力の強化が優先されている印象は否めない。

Constellationによると、1号機の設備更新では4年間で約16億ドルの費用が必要だという。同社は、連邦原子力規制委員会による安全検査など、規制上の厳しいハードルもクリアする必要がある。