慶應義塾大学は8月5日、同学経済学部の大久保敏弘教授が、ポストコロナにおけるデジタル技術の社会実装状況やその影響を把握するために実施した「第1回デジタル経済・社会に関する就業者実態調査」の結果を公表した。2024年5月時点の全国の就業者のテレワーク利用率は13%(東京圏21%)であった。
テレワーク利用率は13%
2024年5月時点の速報結果によると、全国のテレワーク利用率の推移は、第1回目の緊急事態宣言が出された2020年4~5月は25%(東京圏在住者38%)まで上昇したが、6月の緊急事態宣言解除後には17%(東京圏在住者 29%)に急速に低下。その後、2022年12月までおおむね横ばいで推移し、2023年3月には13%(東京圏在住者23%)まで低下して以降は、安定的に推移した結果、2024年5月時点でも13%(東京圏在住者21%)になったという。
テレワークに関する働き方や生活の考えについて、時系列の変化をみると、肯定的な意見も否定的な意見も直近では緩やかに増えており、これはポストコロナで恒常的にテレワークを利用する場合のメリットとデメリットの認識が緩やかに形成されつつあるためだと考えられるという。
テレワーク利用者のICT利用率を目的別にみると、コミュニケーションツールの利用率が最も高く、次に共同作業ツール、業務管理ツール、オフィス・現場の自動化ツールの順となった。
オフィス・現場の自動化ツールの利用率は2020年6月の5%から上昇し、2023年10月以降は20%を超えた。近い将来のICTや自動化技術を用いた仕事に関する認識について、「できない」という回答が「できる」を大きく上回るが、2021年9月時点から202年3月にかけて「できない」の割合が一度低下し、その後は再び上昇している。
キャッシュレス決済の利用率は年々上昇
キャッシュレス決済のフィンテックサービス(PayPayなど)の利用率は2019年12月以降一貫して上昇し、オンラインショッピング利用者の割合は73%で平均購入金額は約2万5000円、最もよく購入されているのは「食料、飲料、酒類」であった。
政策の賛否については、いずれの政策も賛成が反対を上回ったが、デジタル化に関する政策への賛成割合は経年的に低下している。最も賛成が多かったのは地球温暖化防止対策で、特に年齢が高いほど賛成の割合が高くなったという。環境に配慮した経済活動を支える業務であるグリーン・ジョブに携わっている人の割合は21%で、2021年9月時点と比べると10ポイント低下した。
テレワーク利用者の自動化技術やフィンテックサービスの利用は増加傾向にある一方で、ICTや自動化技術が業務を補助するかどうかについての前向きな意識はまだ形成されておらず、ポストコロナ社会でのデジタル技術の受容性を高める必要性が指摘されている。