Intelが2030年までにTSMCに次いで世界第2位のファウンドリになることを目指したロジックプロセスの微細化ロードマップ拡張版を発表した。
新たなプロセス技術として、高NA EUVリソグラフィ技術を採用する最先端プロセス「Intel 14A」のほか、複数のマチュア/レガシープロセスノードが追加された。
さらに以前から公表していた「4年間で5つの技術ノードの実現(5N4Y)を目指すプロセス技術ロードマップ」が順調に進捗していることも披露され、業界初となるバックサイド給電ソリューションの提供も予定していることが強調された。
重要な技術ノードとなる「Intel 18A」
Intelは、5N4Yで掲げた最終技術ノードであり、Intel 20Aの改良版となる「Intel 18A」こそ、自社の事業や製品の今後を左右する重要なプロセスノードであると同時に、ファウンドリとして競合他社の2nmプロセスに対抗しうる技術ノードとしてとらえているようである。
Intel経営陣は、この2025年に投入する予定のIntel 18Aによって先端プロセス技術でのリーダーシップを再確立することを目指している。MicrosoftがIntel 18Aで設計したAI半導体をIntelに生産委託することを決めたということも、そうした自信の後押しとなっていると見られる。
高NA EUVリソグラフィはIntel 14Aから採用へ
ASMLは、Intelからの強い要求を受ける形で2023年12月末に、高NA EUV露光装置の商用機第1号をIntelに出荷した。Intelがこの高NA EUV露光装置を活用するのはIntel 18Aではなく、2027年に生産を開始する予定としている「Intel 14A」およびその機能拡張改良版である「Intel 14A-E」だという。Intelは、以前は2025年から高NA EUVを導入するとしていたが、競合でありファウンドリトップのTSMCは、高コストとなる高NA EUVリソグラフィ技術の導入には慎重な姿勢を示していることもあり、Intelとしても技術の成熟などを加味して変更を図ったと見られる。
また、Intel 3ファミリーで、先進3Dパッケージング設計用にシリコン貫通ビアで最適化された「Intel 3-T」は、まもなく製造準備が整うとのことで、さらにその後、Intel 3の機能拡張版である「Intel 3-E」に移行する予定としている。
さらに、2024年1月に発表したUMCとの共同開発によって構築されるプラットフォームを通じて提供される12nmプロセスも2027年より出荷を開始する予定としているほか、買収には失敗したが今後も相互協力関係を維持するTower Semiconductorによる65nmプロセスなどといった成熟プロセスも新たなロードマップには記載されており、製品ポートフォリオの拡大が進められている。これらの技術ポートフォリオの拡大は、顧客企業のニーズに合わせた製品の開発を柔軟にすることを目指したもので、かつてIntelがファウンドリビジネスに挑んだ時には見られなかった姿勢を言える。
Intel Foundryは、今後とも2年ごとに技術新しいノードを投入していくことで、顧客がIntelの先進プロセス技術を基盤として独自の製品やサービスを継続的に進化させる道筋を提供すると強調している。
このほか、Intel Foundryは、以下のような発表も行った。
- Synopsys、Cadence Design Systems、Siemens、Ansys、Lorentz、Keysight Technologiessをはじめとする知的資産(IP)や電子設計自動化(EDA)ツールを提供するパートナー各社は、ファウンドリを利用する顧客企業が、Intel 18Aに基づくバックサイド給電ソリューションに対応した先進チップの設計を短時間で行えるようにするツールの認定とIP利用の整備完了を発表。
- 複数企業が、Intelのエンベデッド・マルチダイ・インターコネクト・ブリッジ(EMIB)2.5Dパッケージング技術でのアセンブリ技術とデザインフローで協業を計画していると発表した。これらのEDAソリューションにより、ファウンドリの顧客に対する先進パッケージング・ソリューションの開発と提供が迅速化される。
- Intel Foundryは、FCBGA 2D、EMIB、Foveros、Foveros Directなどが含まれる包括的なASAT(先進システムアッセンブリおよびテスト)サービスとしてIntel Foundry FCBGA 2D+を発表。
- Intelは、ArmベースのSoCの最先端ファウンドリ・サービスの提供に向けたArmとの協業となる「Emerging Business Initiative」を明らかにした。ArmとIntelは、新興企業のイノベーション創出と成長の促進に不可欠なIPや、製造面、資金面での支援を行うことを決めた。
- Intel Foundryは、製造工場ネットワークからソフトウェアに至る全局面での最適化を図るアプローチを採用している。Intelとそのエコシステムパートナーは、テクノロジーやリファレンス・デザインの継続的な改良を通じ、標準規格を策定し、顧客企業がシステム全体を通じてイノベーションを実現できるようにする。
- Intelは、世界中の自社工場で使用する電力の再生可能エネルギー比率が99%に達したと発表。現在、Intelは、そのコミットメントを強化し、2030年までの達成目標として、世界全体での再生可能エネルギーの利用比率100%、ネットポジティブな(=再生利用などにより排水を極力減らす)水資源の利用、埋め立て廃棄物ゼロを掲げている。さらに、2040年までのスコープ1とスコープ2の温室効果ガス排出量ネットゼロ、2050年までの上流工程でのスコープ3の排出量ネットゼロに向け、取り組みを一層、強化する。