あらゆるシーンで活用が加速し、もはや生活やビジネスに欠かせないものとなったAI。近年ではクラウド上の学習モデルで処理を実行するクラウドAIだけでなく、端末や組み込み機器などローカル環境のデバイスでリアルタイム性の高い処理が行えるエッジAIに着目する企業も増加し、高度な組み込みシステムに実装されるMPU(Micro Processor Unit)はもちろん、汎用向けのMCU(Micro Controller Unit:マイコン)を利用し、より幅広いシーンでAIを活用したいというニーズも高まっている。
高性能なMCUおよびMPUをはじめ、車載SoCやアナログ製品、パワー半導体など幅広い製品ポートフォリオを展開するルネサスエレクトロニクスでは、こうした要望に応え、エッジAIアプリケーション向けに最適化された32ビットマイコンの最上位モデルである「RA8P1」をリリースした。本稿では、AI活用の幅を広げる最新マイコンの実力を確認し、エッジAIの利用シーンをどのように拡張してくれるのか確認していく。
汎用的で低消費電力の「MCU」でAIアプリケーションを動かしたいというニーズが高まる
「Make Our Lives Easier(私たちの生活をより楽に、豊かにする)」というパーパスのもと、自動車・産業・インフラ・IoTといった4つの分野を中心に、さまざまな半導体製品を市場に投入してきたルネサスエレクトロニクス。単に製品を提供するのではなく、開発環境から使い方の提案まで、実環境を意識した組み込みシステムのトータルソリューションを展開しており、上位モデルからエントリーモデルまで、多様なニーズに応えられる製品ラインナップを揃えている。
同社では、近年のビジネストレンドといえるAI活用を見据え、エッジAIアプリケーション向けに最適化されたMCUの開発に着手した。ルネサスエレクトロニクス株式会社 エンベデッドプロセッシンググループ エンベデッドプロセッシング事業部プロダクトマーケティング部の伊達 雪子 氏は、マイクロコントローラ市場におけるAI需要の高まりについて、こう話す。
「ここ数年、エッジAI、すなわち端末側でAIアプリケーションを動かしたいというニーズが爆発的に増えている印象があります。これまではインターネット上のAIモデルを利用するクラウドAIが主流でしたが、工場や屋外などでの利用を考えると通信の遅延やクラウドに接続する通信コスト、さらにはセキュリティ面での懸念もあり、エッジAIへの注目が高まっていると感じていました」(伊達氏)
AIアプリケーションを稼働させるには高い演算処理能力が必要となるため、これまではMPU(プロセッサ)を実装した組み込み機器を利用するのが一般的だった。とはいえ、MPUは消費電力や設計負担の高さがボトルネックとなり、用途によっては採用しづらいことも多く、より汎用的なMCU(マイコン)でAI処理を実行したいというニーズも高まっていたと伊達氏は語る。
「これまでのMCUは、演算処理、メモリ搭載量、セキュリティといった面でエッジAIアプリケーション向けとして十分な性能を備えていませんでした。そこで当社では、AI向けに最適化した32ビットマイコンである「RA8P1」を開発し、2025年7月から量産を開始しています」(伊達氏)
高度なAI処理能力と低消費電力の両立を実現したMCUの最上位モデル「RA8P1」の実力
ルネサスエレクトロニクスが開発した「RA8P1」はエッジAIアプリケーション向けに最適化されたMCUの最上位モデルとなる。1GHz動作の「Arm Cortex-M85」コアと250MHz動作の「Arm Cortex-M33」コアのデュアルコア構成が可能で、さらにAIアクセラレータとしてAI処理に特化したNPU(ニューラルプロセッシングユニット)「Ethos-U55」を搭載。32ビットマイコンとして最高クラスのAI処理性能を有しており、リアルタイム解析など負荷の高い用途にも対応する。TSMCの22nm ULL(超低リーク)プロセスで製造され、高度なAI処理能力と低消費電力の両立に成功しており、幅広い用途で利用可能。またオンチップメモリにMRAM(磁気抵抗メモリ)を採用し、書き込み速度と耐久性、データ保持性も向上している。
同社でハイエンドMCUの拡販に携わっているセールスグループ ジャパンセールス 営業技術統括部の田中 佑妃乃 氏は、「RA8P1」の特長と強みについて次のように語る。
「1GHzというマイコンとしては高い動作周波数のArm Cortex-M85コアは、機械学習(ML)やDSPアプリケーションの性能を大幅に向上させる「Arm Helium」テクノロジーをサポートし、高い演算処理性能を可能としています。さらにサブコアとしてArm Cortex-M33を搭載したデュアルコア構成が可能となっており、AIの推論処理や機械学習に特化したEthos-U55 NPUと組み合わせて、AIアプリケーションを快適に動作させることができます。またGUI上で簡単にAIアプリケーションの開発が行えるAI Navigatorにも対応しており、開発環境面でも難易度の高い組み込みシステムでのAI活用をサポートしています」(田中氏)
「RA8P1」には、高度なセキュリティ機能も組み込まれている。TrustZoneやセキュアブートといった機能に加えて、多数の暗号アルゴリズム用アクセラレータを実装し、包括的なセキュリティを実現。伊達氏は「NPUを搭載しているマイコンは他社からもリリースされていますが、セキュリティ面を考慮すると、当社の「RA8P1」には大きな優位性があると考えています。対応する暗号アルゴリズムが圧倒的に多く、ニーズに合わせて選択することができます」とセキュリティ面での強みに言及する。
デュアルコア+NPUによる分散処理は、リアルタイム処理のパフォーマンス向上や省電力化につながるが、こうしたメリットをさらに増大させるのがMRAM(磁気抵抗メモリ)の採用だ。従来のフラッシュメモリと比較し、リアルタイム解析に求められるメモリからの読み込み・書き込みにかかる時間を大幅に短縮できるほか、消費電力も抑えられるため、屋外の組み込み機器でAI画像解析を行うといった用途でも活用することが可能。カメラ入力に16ビットカメラインタフェース(CEU)を採用していることも、AI画像解析の精度向上につながっている。
さらにギガビット・イーサネットに対応するなど周辺機能も充実。「RA8P1」とその他のルネサス製品を組み合わせることで、AI機能付きビデオ会議カメラやAI駆動ドローイングロボットアームなど、設計検証された多様なシステムを提案する「ウィニング・コンビネーション」と呼ばれるソリューションを展開していることも、幅広い製品ラインナップを展開するルネサスエレクトロニクスならではの特長といえる。ルネサスエレクトロニクスでは、アナログデバイスや電源、組み込み処理やコネクティビティを包括した400種類以上のウィニング・コンビネーション製品を提供。エンジニアによる設計検証を行っているため、製品設計のリスクを低減しながら、企業の製品開発サイクルを加速させることができ、「RA8P1」を中心とした効果的なAI活用の推進が可能となる。
包括的なAI開発用フレームワークを用意し、エッジAIアプリケーションの開発を効率化
ルネサスエレクトロニクスでは、組み込み機器でAIを活用するうえで障害となる開発環境に関してもサポートしており、「RA8P1」のリリースと合わせて、包括的なAI開発用フレームワーク「RUHMI(Renesas Unified Heterogenous Model Integration)」の提供を開始している。AIアプリケーション向け開発ツールの企画・マーケティングに携わっているUXグループ・テクノロジーアンドアプリケーションアーキテクト・コアテク&エコシステムイネーブルメント部の村谷政充 氏は、RUHMIを用いて既存のAIモデルを組み込みシステム向けに変換することで、AIアプリケーション開発を効率化できると説明する。
「プログラムで書いたアルゴリズムで処理を行う一般的な組み込みシステム向けアプリケーションとは異なり、AIアプリケーションではAI/機械学習モデルが処理を行います。世の中には、大規模なモデルからコンパクトなモデルまで、多種多様なAIモデルが公開されていますが、それらをCPU性能やメモリ容量、消費電力に制限があるMCU/MPUのシステムにどう載せるのかが、組み込み向けAIアプリケーション開発における大きなチャレンジとなります。RUHMIは、TensorFlow LiteやONNXフォーマットなど代表的なAIモデルを組み込みシステム向けに変換するためのツールで、モデルを最適化しマイコン環境に最適化された効率的なソースコードを自動生成します。これにより、RA8P1や他のMCU/MPUに最適化したAIアプリケーションを容易に開発できるようになります」(村谷氏)
村谷氏は、「デバイス起点でAI活用を考えるのではなく、AIで実現したいことを起点にモデルを選定し、そのモデルをRUHMIで最適化・変換することで、適切なマイコンやプロセッサを選択できる環境を目指しています。」と語り、RUHMIを“使いたいAIモデルから柔軟にマイコン・プロセッサを選択する”というコンセプトの実現に向けた第一歩と位置付ける。ルネサスエレクトロニクスでは、LCDとカメラ拡張ボードを搭載した評価ボード「EK-RA8P1」を提供しており、「RA8P1」を用いて、画像解析やオブジェクト検出といった“ビジョンAI”のアプリケーション開発をスピーディに検証できる。
「EK-RA8P1」で顔検出ソリューションの実力を検証
評価ボード「EK-RA8P1」を使った、顔検出ソリューションによるオブジェクト検出デモ ンストレーションの様子。推論処理にEthos-U55 NPUを使用することで、最大20人の顔を高速に検出できていることがわかる。低消費電力のMCUで動作させることでバッテリ駆動が可能となっており、MPUでは実現が難しい利用シーンでエッジAIを活用できるようになる。
エッジAIの活用を加速させたいのならば、AIに最適化されたMCUの導入は有効な一手となる
2025年7月にリリースされたばかりの「RA8P1」だが、エレベーターの混雑状況をリアルタイムで解析するビルディングオートメーションをはじめ、交通/歩行者モニタリングや顔認証の精度向上など、すでにさまざまなシーンで活用が進んでいるという。
デュアルコア+NPU搭載で“MCUによるAI活用”を現実化した「RA8P1」は、エッジAIの可能性を広げる新世代のデバイスといえる。開発環境の提供から使い方の提案までを含めたトータルソリューションを提供するルネサスエレクトロニクスのサポートも非常に有用。具体的なAI活用のビジョンを持った企業はもちろん、エッジAIの効果的な活用を模索している企業にとっても、導入を検討する価値は大いにあるはずだ。
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